“東京也无非是這様。”「藤野先生」の書き出しはこうである。「東京も別に変わりはなかった」(増田渉訳)、「東京も格別のことはなかった」(竹内好訳)、「東京も同じようでしかなかった」(駒田信二訳)。三人三様である。まだまだある。すべてを列挙したならば、おそらく十指に余るであろう。何と比べて「変わりはなかった」、「格別のことはなかった」、「同じようでしかなかった」と言っているのであろうか。このことについてはちょっとした論争があったように記憶しているが、さてどういう結末であったかは、にわかには思い出せない。或いは結論は出ずじまいであったかもしれない。