「数字のテクニック」に戸惑う消費者=トレンド総研が実態調査

 消費者の8割が購入の決め手に「数字」を重視しているが、実は数字の根拠には不安・疑問を持っている――。生活者の意識・実態に関する調査をおこなうトレンド総研が、20代-60代の男女500名を対象に実施した「消費者のモノの選び方」に関する意識・実態調査で明らかになった。一方、マーケティングの専門家は、「数字の“うまい見せ方”はテクニックなので、数字に対して“正しい見方”をする冷静な視点を持ちたい」(朝野煕彦氏)と語っている。(写真提供:トレンド総研)  調査は2014年6月20日から24日に、インターネットを通じて20代から60代の男女500名を性別・年代別に均等割り付けで調査した。  調査によると、「○割引」「○%オフ」などの価格表記や、「○%増量」など容量、そして、有効成分量などを示す「有効成分○倍」などの「商品に関する“数字”が購入のきっかけ・決め手になることはありますか?」と質問すると、約8割(78%)が「ある」と回答した。特に注視している“数字”は、「価格(割引されているかどうか)」と「正規価格」がそれぞれ回答率53%で同率トップ。次いで「容量」(回答率:26%)、「有効成分の量」(16%)だった。  “数字”を特に意識する商品カテゴリーは、「飲料・食品」(82%)、「家電・デジタル製品」(45%)、「衛生用品(シャンプー、ティッシュペーパー、洗剤など)」(42%)が上位に並んだ。使用頻度が高い日用品などで「他商品と比較する際に数字が便利だから」という理由で、“数字”が注視されているようだ。  一方、「化粧品」(29%)や「市販薬(飲み薬、貼り薬、塗り薬)」(23%)なども、“数字”が意識される商品カテゴリーの上位に並ぶ。「どのような商品でも、有効成分など具体的なことは数字が一番分かりやすい気がする(40代・女性)」など、“数字”があることで比較が明確になる効果を感じているようだ。  ただ、「数字が出ていると効果がありそうに感じるから」(25%)、「数字が出ていることで商品が魅力的に見えるから」(25%)など、“数字”そのものに魅力を感じている人も少なくない。中には、「数値が出ていると、実験などをしてきちんと調べられていると感じる(30代・女性)」、「なんとなく数字を見ているだけで気になってしまう」(60代・男性)など、何らかの“数字”が表示されているだけで、「なんとなく」商品を選んでいる人もいることがわかった。  それだけに、「数字について、算出されている方法を見極める自信がありますか?」と質問すると73%の人が「自信がない」と答えている。また、商品パッケージやキャッチコピーなどの数字に対して「信憑性や確実性を疑問・不安に思うことはありますか?」という質問に対して63%が「ある」と答えている。  “数字”については、「根拠が明白に書かれているものはあまりない気がするが、なんとなく踊らされているなと思いながらも選んでいる(50代・男性)」、「数字のマジックでよさそうに見せているものもあると思っている(50代・男性)」など、“数字”の算出方法や正しさについて懐疑的な側面があるにもかかわらず、その不安や疑問を解消しないままに“数字”で選んでいる人が一定数いることも分かった。  トレンド総研では、「多くの消費者が商品購入の際に“数字”に影響を受けているものの、その数字について正しく理解していない状態であるにも関わらず、それらを頼りに商品を購入しているために、不安や疑問が生じている実態が明らかになった」と分析している。  このような調査結果に対してマーケティング・サイエンス、および、マーケティング・リサーチが専門の中央大学大学院、多摩大学大学院客員教授の朝野煕彦氏は、「数字の見せ方には多数のバリエーションがあり、普段の生活の中では、意識していないと、その真意や間違いに気付かないものです。“数字”が描かれた背景を冷静に考えることによって、“数字”のテクニックに惑わされたり、不安になったりすることも少なくなるのではないでしょうか」と、一般的に使われる事例をあげてアドバイスしている。  たとえば、栄養ドリンクで栄養の主たる成分の含有量が「1g」であれば、「1000mg」と単位を変えることで、より多く見えるようにする「度量衡(単位・ものさし)を変える数字のテクニック」は、良く利用される例。また、金利の世界では「より小さく見せるテクニック」として「日歩10銭(100円を1日借りると10銭の利息が付くが、100万円を1年借りると36.5万円の利息が付く)」など、“数字”を小さくすることによって、より少なく、安く見せることを強調する事例がある。  さらに、同じ量でも大小いずれかの方向に数字の見せ方を変えるテクニックは、食品や薬のパッケージなどで活用されることが多い。たとえば、スナック菓子1袋のカロリーを記載する場合、「1袋100gで500kcal」であった場合、「250kcal(50gあたり)」と一定の基準量で基づく“数字”で記載した方が、パッと見の印象は少なく見える。また、貼り薬などで有効成分の「濃度が2倍」などと記載されている場合、貼り薬の形態が同じ場合は有効成分以外の材料の質量が半分になっていれば、有効成分の量が同じでも「濃度が2倍」であり、効き目が2倍になっているわけではない。  このような「数字のテクニック」「うまい見せ方」も、少し立ち止まって考えてみると、その“数字のロジック”に気がつくもの。消費者に向けて発信されている“数字”は、「ウソ」や「間違った情報」というわけではなく、そこには客観的で有益な情報も少なくない。難しく見えてしまう“数字”と上手に付き合う方法を身につけていきたい。(編集担当:八木大洋)
消費者の8割が購入の決め手に「数字」を重視しているが、実は数字の根拠には不安・疑問を持っている――。生活者の意識・実態に関する調査をおこなうトレンド総研が、20代-60代の男女500名を対象に実施した「消費者のモノの選び方」に関する意識・実態調査で明らかになった。
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2014-08-07 14:30