日系企業が中国で「完全現地化」を成功させるために

日本経営管理教育協会が見る中国 第320回--宮本邦夫(日本経営管理教育協会会長)   先ごろ、日産自動車が、2014年10月からスタートする大連の新工場を完全に「現地化」すると報じられた。「完全現地化」は、現地スタッフに権限を完全に委譲することを意味する。「完全現地化」は、日本企業にとっては、かなりのリスクを負うことになるが、これに成功するにはどうすればよいかについて、以下で考察してみたい。 1.経営理念に基づく経営の実践   現地スタッフに権限を完全に委譲するといっても、好き勝手にさせるというわけではない。日本企業の社名を冠する限り、自社の経営理念を守って経営をするよう要請することは、当然のことである。そのために、自社の経営理念が盛り込まれている社是・社訓をよく理解させ、それに基づく経営を実践するよう強く希求することである。 2.独自の経営ノウハウの継承   企業は、それぞれ独自の経営ノウハウを持っているはずである。経営ノウハウは、いまや重要な経営資源であり、企業の大切な“売り物”である。「完全現地化」に当たっても、その経営ノウハウを継承してマネジメントを行うよう求めるのは、当たり前のことである。そのためには、まず継承させる経営ノウハウを明確にすることである。 3.徹底した人材育成の実施   自社の経営理念に基づく経営を実践させるために、また自社独自の経営ノウハウによるマネジメントを実行させるためにも、欠かすことができないのは、現地スタッフの育成である。これは一朝一夕にはできないことは明白であるから、長期的視野に立ち、きちんとした育成プログラムを作成し、それに即して地道に教育することである。 4.信頼関係の醸成   「完全現地化」に成功する条件の1つは、日本企業と現地スタッフとの信頼関係である。逆の言い方をすれば、両者間に信頼関係がないと、それを実現することは不可能である。したがって、「完全現地化」に際しては、どうすれば信頼関係を構築できるかをよく考え、日常のマネジメント活動を通じて着実に実行することである。 5.積極的な情報の提供   経営資源の1つに「情報」が挙げられる。ITを中心とした情報化社会にあっては、情報はマネジメントに不可欠なものである。このため、現地スタッフに対して、情報収集に努めるよう要請するとともに、日本企業としても、マネジメントに必要とされる情報については、要請がなくても、こちらから積極的に提供することが肝要である。   写真は上海の世紀広場。(執筆者:宮本邦夫・日本経営管理教育協会会長 編集担当:水野陽子)               
先ごろ、日産自動車が、2014年10月からスタートする大連の新工場を完全に「現地化」すると報じられた。「完全現地化」は、現地スタッフに権限を完全に委譲することを意味する。「完全現地化」は、日本企業にとっては、かなりのリスクを負うことになるが、これに成功するにはどうすればよいかについて、以下で考察してみたい。
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2014-08-20 13:45