中国の経済成長率は年率7.5%近辺で一進一退に=大和総研

 中国経済は「加速」もしないし、「失速」もしない――。大和総研経済調査部シニアエコノミストの齋藤尚登氏は、2014年になって好不調に触れる中国の経済指標について、中国政府の経済対策の出方などを分析した結果、「4月以降の諸政策は、7.5%の政府経済成長率目標を達成するための景気下支えが目的であり、成長加速は期待してはいけないし、失速リスクも限定的」と解説している。習近平総書記が主導する綱紀粛正は苛烈に進められ、その影響は富裕層向けのサービス価格や不動産価格にも影響を与える一方、景気下支えのための政策を断続的に実施するなど、一定水準以下への景気減速には柔軟な対応を示している。齋藤氏が、「7.5%成長達成のための景気下支え策が続く」と副題して2014年8月20日に発表したレポート(全8ページ)の要旨は、以下の通り。 ◆2014年6月に若干上向いた内需関連の主要経済指標は、7月には再び減速した。例えば、7月の小売売上(名目)は前年同月比12.2%増と、6月の同12.4%増から伸びが若干鈍化した。実質も同様に6月の同10.7%増⇒7月は同10.5%増となった。習近平総書記が主導する綱紀粛正の影響で2013年に大きく減速した飲食収入は、1年が経過した2014年に入って伸びが上向いていたが、6月以降は再び鈍化し、7月は同9.4%増にとどまった。綱紀粛正の手綱はさらに締められている。現地取材によれば、中国の最上級のホテル格付けは5つ星であるが、自ら4つ星への格下げを願い出るホテルが相次いでいる。三公経費(海外・国内出張費、公務接待費、公用車経費)の抑制が強化されるなか、5つ星ホテルでの宿泊や飲食は、申請の段階で撥ねられるのだという。 ◆一方、輸出は、2013年4月までの「偽輸出」とみられる水増しによる反動減の影響が一巡し、2014年5月以降は実態に見合うデータが発表されている。7月は前年同月比14.5%増にまで伸びを高めた。「偽輸出」によるかさ上げ時期を除けば、2012年5月以来の高い伸びである。輸出の先行指標である主要先進国の製造業PMIは高水準で推移しており、当面は堅調な推移が続こう。 ◆国務院弁公庁は8月14日に「企業の資金調達難を緩和するための10カ条の意見」を発表した。第1条では、「貸出総量の合理的で適度な増加を保持する」とし、「バラック地区の改造、鉄道、サービス業、省エネ環境などの重点分野と、農業・農村・農民向け、小型・零細企業など資金調達難に直面している分野・企業に有力なサポートを提供する」とした。全面的な金融緩和ではなく、あくまでも分野を限定した景気下支え策に徹する姿勢を再確認したといえる。 ◆ここから読み取れるのは、4月以降の諸政策は、7.5%の政府経済成長率目標を達成するための景気下支えが目的であり、成長加速は期待してはいけないし、失速リスクも限定的ということなのであろう。(情報提供:大和総研、編集担当:徳永浩)
中国経済は「加速」もしないし、「失速」もしない――。大和総研経済調査部シニアエコノミストの齋藤尚登氏は、中国経済について「成長加速は期待してはいけないし、失速リスクも限定的」と解説している。
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2014-08-21 15:15