中国の住宅価格の下落は一段と進み、市場の2極化も鮮明に=大和総研

 中国の住宅価格の下落は進み、住宅市場の2極化は一段と鮮明になろう――。大和総研経済調査部シニアエコノミストの齋藤尚登氏は、中国現地に取材した内容に基づいて、今後の中国不動産市場について「需要が旺盛で在庫がさほど積み上がっていない大都市の価格調整は短期で終了し、そうでないところは調整が長期化するため、住宅市場は二極化に向かおう」という見通しを発表した。中国では既に「多くの商業銀行は1軒目の住宅購入の際の頭金比率を3割から5割に引き上げ、審査も厳格化」など、住宅向け融資を抑制している。一方で、「頭金は親から出してもらえるケースも多い」として、2020年前後まで住宅購入年齢(平均31歳)層が増え続けることから、都市化の進展による住宅販売の黄金期は継続するという向きも少なくないという。齋藤氏が2014年8月20日に発表したレポート「中国不動産市場、短期調整?それとも長期化?」(全6ページ)の要旨は、以下の通り。 ◆2014年7月の新築住宅価格は前年同月比2.5%上昇と、2013年12月の同9.9%上昇をピークに鈍化傾向にある。販売面積や販売金額は、住宅価格に3カ月-9カ月程度先行する傾向があり、今後、住宅価格はさらに調整し、前年比で下落に転ずる可能性は極めて高くなっている。 ◆今後の調整が従来のように短期で終了するのか、長期化するのかについては、現地専門家の見方は二分している。結局のところ需要が旺盛で在庫がさほど積み上がっていない大都市の価格調整は短期で終了し、そうでないところは調整が長期化するため、住宅市場は二極化に向かおう。 ◆住宅市場の調整期間に対する見方は二分しているが、地方政府の財政収入が土地使用権譲渡収入に過度に依存した「土地財政」は持続不可能であり、抜本的な税制改革が必要不可欠であるとの見方は共通している。 ◆大和総研は、「不動産のストックに広く浅く課税する不動産税(固定資産税)を導入し、これを地方政府の安定財源とする。その一方で、土地使用権譲渡収入は中央の財源とし、地方政府が財政収入確保や債務返済の必要から土地使用権を高値で譲渡しなければならない、というインセンティブを一旦は断ち切る。その上で中央の財源となった土地使用権譲渡収入は、地方への財政移転や保障性住宅の建設などに使い、保障性住宅をしっかりと供給することで社会不満を和らげる」ことが肝要と主張してきた。2014年8月15日には、国務院法制弁公室が「不動産登記暫定条例(意見聴取版)」を発表し、9月15日までパブリックコメントを受け付けるとしている。中国政府は、今後3年間で不動産統一登記制度を確立するとしており、不動産税導入のための準備が本格化しつつある。(情報提供:大和総研、編集担当:徳永浩)
中国の住宅価格の下落は進み、住宅市場の2極化は一段と鮮明になろう――。大和総研経済調査部シニアエコノミストの齋藤尚登氏は「大都市の価格調整は短期で終了し、そうでないところは調整が長期化するため、住宅市場は二極化に向かおう」という見通しを発表した。
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2014-08-21 15:45