ワイヤレスゲートは7月高値から反落したが切り返しの動き

  ワイヤレスブロードバンドサービスを展開するワイヤレスゲート <9419> (東マ)の株価は、LTE通信対応SIMカードなどを材料視して7月8日に6560円、7月31日に6580円まで上値を伸ばした。その後8月8日の4010円まで一旦調整したが、8月26日には5390円まで切り返す場面があった。この日から貸借銘柄に選定されたことで取組に厚みが増すことも材料視されたようだ。目先的には乱高下の可能性だが、中期成長力を評価する流れに変化はなく上値を試す展開だろう。   通信事業者からインフラを借り受けてワイヤレスブロードバンドサービス(Wi-Fi、WiMAX、LTE)を提供している。月額有料会員数の積み上げに伴って収益が拡大するストック型ビジネスモデルである。少ない社員数で高収益構造であることも特徴だ。販売チャネルはヨドバシカメラでの販売、および住友商事 <8053> との業務提携による最大手携帯販売会社ティーガイア <3738> での販売を主力としている。   ワイヤレスブロードバンドサービス事業の重点戦略としては、サービス提供エリアの拡大、サービスラインナップの拡充、新規事業の推進などを掲げている。サービスラインナップ拡充では、13年6月にオプションサービス第1号として、月額料金480円の「電話リモートサービス」を開始した。ARPU(顧客1人当たり売上高)向上や顧客基盤拡大につなげるため、追加のオプションサービスも検討している。   新規事業では14年1月、法人向けWi-Fi環境イネーブラー(構築運用支援)事業を開始した。公衆無線LANを自治体が災害時の通信インフラとして活用する、観光地などが外国人旅行客を誘致する、商店街などが集客力向上を目指すなど、各地で公衆無線LAN環境を整備・活用する動きが広がっている。さらに20年東京夏季五輪開催も追い風となって無線LANの需要拡大が予想されるため、クラウド型Wi-Fi環境サービスシステムなどソリューションサービスの提供を開始した。   Wi-Fi環境イネーブラー事業の一環として、銀座通りと晴海通りで実施している「銀座フリーWi-Fi」に続いて、5月にはJR秋葉原駅西口の屋外広告媒体「アキバWi-Fiシリンダー」を開発し、6月には産官民協働「Fujisan Free Wi-Fiプロジェクト」に参画している。   5月にはLTE領域のSIM関連サービスおよびソリューション事業の拡充を開始した。当社のLTEは12年12月からMVNO(仮想移動体通信事業者)としてデータ通信中心にサービスを提供してきたが、LTEサービスのラインナップを顧客ニーズに合わせて一新するとともに、LTEネットワークを活用したソリューション領域をさらに拡充する方針だ。   7月にはLTE通信対応SIMカード「ワイヤレスゲート Wi-Fi+LTE SIMカード」のサービス提供開始を発表した。ヨドバシカメラで先行予約受付を開始し、9月1日から販売開始する。そして8月25日には3G専用端末でも利用できるようにサービス内容を拡充したと発表している。   また7月には、世界最大のコミュニティーWi-Fiを展開するFON社との提携に関する検討を開始した。FON社は06年設立(ドイツテレコム、ブリティッシュテレコム、グーグルなどが出資)で世界1000以上の主要都市でサービス展開している。   8月1日にはLTE領域のソリューション拡充の一環として、M2M/IoTソリューションの第1弾「クラウド型みまもりサービス」の販売開始を発表した。センサーマットを活用して高齢者の容体変化を確認するなど、クラウドサービスを提供するビジネスモデルだ。また8月14日には、全国主要都市圏で訪問看護サービスを展開しているNフィールド <6077> と業務提携に関する基本契約を締結した。当社のM2M/IoTソリューションと、Nフィールドの在宅医療・介護・退院支援サービスを融合させて高付加価値サービスを提供するとしている。   8月5日に発表した今期(14年12月期)第2四半期累計(1月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比25.6%増の42億04百万円、営業利益が同11.4%増の4億07百万円、経常利益が同11.2%増の4億06百万円、純利益が同14.6%増の2億57百万円だった。第2四半期末の会員数は46万人となり、前期末(13年12月期末)比で4万人の増加、前年同期末(13年12月期第2四半期末)比では8万人の増加となった。   会員数の増加に伴って大幅増収だった。会員数の増加に連動した支払手数料の増加、若干の人員増に伴う人件費の増加、先行投資費用の増加などで売上高営業利益率はやや低下した形だが、先行投資費用を除けばほぼ前年同期並みの水準である。   通期の連結業績見通しは前回予想(2月13日公表)を据え置いて売上高が前期比20.6%増の85億09百万円、営業利益が同14.6%増の9億円、経常利益が同14.6%増の8億98百万円、純利益が同12.5%増の5億43百万円としている。配当予想は14年1月1日付の株式2分割を考慮すると実質的に前期と同額の年間25円(期末一括)としている。販売チャネル数の拡大やサービスラインナップの拡充などの効果で会員数が順調に増加し、若干の人員増に伴う人件費の増加、フロア増床に伴う地代家賃の増加などを吸収する。   通期見通しに対する第2四半期累計の進捗率は売上高が49.4%、営業利益が45.3%、経常利益が45.2%、純利益が47.5%である。ストック型の収益構造であることを考慮すれば順調な水準だろう。またWi-Fi環境イネーブラー事業など新規事業を通期会社見通しに織り込んでいないため、通期上振れの可能性があるだろう。中期的にも収益拡大基調が期待される。   なお5月には東京証券取引所本則市場への変更申請準備の開始を発表している。12年7月の東証マザーズ上場から2年経過し、既存事業の規模拡大や新規事業の展開加速に向けて社会的な認知度や信用力を一段と向上させるため、東証1部市場または東証2部市場への変更申請に向けた準備を開始した。   株価の動き(8月26日から貸借銘柄)を見ると、2000円近辺で下値固めが完了して動意付き、LTE通信対応SIMカードなどを材料視して7月8日に6560円、7月31日に6580円まで上値を伸ばした。その後8月8日の4010円まで調整するなど高値圏で乱高下の形となったが、8月26日には5390円まで切り返す場面があった。この日から貸借銘柄に選定されたことで取組に厚みが増すことも材料視されたようだ。   8月26日の終値5240円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS54円28銭で算出)は97倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間25円で算出)は0.5%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS206円18銭で算出)は25倍近辺である。日足チャートで見ると一旦割り込んだ25日移動平均線を回復し、週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって下値を切り上げた。目先的には乱高下の可能性だが、中期成長力を評価する流れに変化はなく上値を試す展開だろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
ワイヤレスブロードバンドサービスを展開するワイヤレスゲート<9419>(東マ)の株価は、LTE通信対応SIMカードなどを材料視して7月8日に6560円、7月31日に6580円まで上値を伸ばした。
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2014-08-27 09:15