停滞相場から抜け出したドル円相場=外為オンライン・佐藤氏

 8月25日早朝、いきなり1ドル=104円台を付けて大きく動いたドル円相場。長い間、続いてきた停滞相場は、ここに来て動き始めた感がある。ドル円相場は9月になってさらに大きく動くのか。それとも再びボラティリティの少ない停滞相場に戻るのか。世界的にドル高が続く為替相場でいま、何が起きているのか。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和氏に、この9月相場の行方を伺ってみた。(写真はサーチナ撮影) ――101円~103円のボックス圏が崩れたドル円相場ですが、その背景にはなにがあるのでしょうか?  8月25日、月曜日の早朝5時にいきなり、1ドル=104円台を付けたわけですが、その原因のひとつがFOMC(米連邦公開市場委員会)の7月の議事録の発表内容がかなりタカ派的な発言が多かったことにあります。要するに、金利引上げといった金融引き締めに対して積極的な発言が目立っていたわけです。 週末に行われたイエレンFRB議長のジャクソンホールでの演説でも、議事録のタカ派的な発言を否定しなかった。金融引き締めのスケジュールが早まるのではないか・・・、そんな思惑から一気にドル高円安が進んだのではないかと言われています。  もっとも、市場はすぐに103円台に戻りましたが、私は今回の円安でいままでのボックス相場の潮目が変化したと読んでいます。いわゆる「手放れた」状態であり、9月相場移行、ドル円の水準はやや変化を示すのではないかと思っています。 ――米ドルがさらに高くなっていく、ということでしょうか?  現在の米国経済というのは、ほとんどの経済統計が上昇傾向を示しており、たとえば最近発表された「消費者信頼感指数」は92.4となり、リーマン・ショック前年の2007年以来の高い数字になりました。  9月5日に発表される雇用統計も、おそらく非農業部門の雇用者数は20万人超となり、好調なものになると思います。16日、17日の2日間に渡ってFOMCがあり、イエレン議長の記者会見もありますから、そこでどんな発言をするかが注目されます。残り3回となった量的緩和縮小が終わって、金利が引上げられるまでの間、いかにソフトランディングできるかがポイントになってくると思われます。  いずれにしても米国景気の強さを背景に、現在の米ドルは円に対してのみならず、全通貨に対して強い状態。米国の長期金利が上がっても、株式市場が大きな影響を受けないように、FRBは慎重に推移を見守っているのだと思います。 ――日本も4-6月期は大きく景気後退しましたが、9月のドル円の予想レンジは? 4-6月期の国内GDPが、消費税率引上げによる影響から年率換算でマイナス6.8%と大きく落ち込み、海外メディアからもアベノミクスの経済効果に対して疑問の声が上がっています。最近は、黒田日銀総裁のコメントもややトーンダウンしており、今後の動向が注目されます。 日本側のイベントとしては、日銀の金融政策決定会合が9月4日、5日にあり、そこでどんなコメントが出てくるのか。また、9月20日には「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」の運用方針変更が発表され、株式の保有を20%まで認める方向だと言われています。こうした動きが、為替市場にどの程度影響を与えるのかは不透明ですが、9月相場は今までとは違う展開になると考えています。 レンジとしては、1ドル=102円-106円となり、今までのドル円相場よりもボラティリティの高い相場になるものと考えています。 ――「ユーロ」はどうでしょうか?  欧州中央銀行(ECB)の理事会が9月4日に行われます。追加の量的緩和政策が発表される可能性はあるかもしれません。金利を実質マイナス金利にしたものの、デフレ懸念を払拭することができていない状態です。 追加の量的緩和と言っても、どこかの国債をECBが買い上げる、ということぐらいしかできないかもしれません。ドイツの長期国債はすでに0.8%まで下落しており、徐々に日本化している状況と言えます。 実際、ショイブレ独財務相が「ECBがデフレに対して用い得る手段はなく、金融政策の措置は尽きた」と発言したことが話題になりましたが、ウクライナや中東情勢など、地政学リスクの影響などもあり、かじ取りが難しい局面にきていると言っていいでしょう。  9月のレンジとしては、ユーロ円で1ユーロ=134円-140円、ユーロドルでは1ユーロ=1.30ドル-1.34ドルというところでしょうか。マーケットでは、ユーロのショートポジションが積み上がっており、いずれはユーロに買戻しが入ってユーロ高に振れる可能性もあります。一直線にはいかないのが相場と言えます。 ――豪ドル、ニュージーランドドルはどうでしょうか?  9月相場のひとつのポイントになるのが、豪ドルの堅調さだと私は考えています。最近のオーストラリアの経済指標はすべてが順調で、豪ドルの強さを支えています。その背景には、中国経済が意外と順調なこと、そして資源価格が高止まりしていることなどが考えられます。 さらに豪ドルは、他の通貨と違って金利が高いために、キャリートレードの対象になりにくく、そのためショートもされにくい、という特性があります。従って、豪ドルが強いときには一直線で上昇してしまう可能性があります。 9月のレンジとしては、1豪ドル=95円-99円というところでしょうか。スティーブン・オーストラリア準備銀行(RBA)総裁も、実質的に金利引き下げはないと示唆しており、9月は豪ドルが大きな相場になる可能性があります。 ――9月のトレードの注意点、ポイントは何でしょうか?  これまでのようなボラティリティの低い停滞相場ではない、と考えたほうがいいでしょう。変動幅が大きく、予想を超える値幅になるかもしれません。特に、ドル円では102円台でショートポジションが大きく積み上がっており、102円台まで円が上昇してくる局面は考えにくい。  つまり、102円台のショートポジションを持っている人は、いつでもロスカットできる姿勢で、この9月相場に取り組む必要があるかもしれません(取材・文責:サーチナ・メディア編集部)
8月25日早朝、いきなり1ドル=104円台を付けて大きく動いたドル円相場。長い間、続いてきた停滞相場は、ここに来て動き始めた感がある。
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2014-09-01 13:30