【株式・為替相場展望】重要イベント通過して材料難
【株式・為替相場展望】(8~12日)
■安倍改造内閣の政策期待が下値支えるが一方では上値の重さも意識、16日~17日の米FOMCに向けて米金利動向が焦点
9月8日~12日の株式・為替相場は、前週の重要イベントを通過してやや材料難となる。安倍改造内閣の政策への期待感が下値を支え、ウクライナの停戦合意で地政学リスクが後退することも支援材料だが、一方では上値の重さも意識されている。週末12日には株価指数先物・オプション9月限のメジャーSQ(特別清算指数)算出、そして13日~15日の3連休も控えている。
当面は次週16日~17日の米FOMC(連邦公開市場委員会)と、会合後17日のイエレン米FRB(連邦準備制度理事会)議長の記者会見に向けて、米金利動向が焦点となりそうだ。米FRBのゼロ金利解除が意識されて米金利が上昇すれば、日米金利差が拡大して為替は中期シナリオどおりドル高・円安が一段と進行しやすくなるが、一方で米国株は上値が重くなる可能性がある。この場合、日本株はドル高・円安を好感するのか、米国株の調整を警戒するのかが焦点だ。FRBの早期利上げ観測が後退すれば、その逆だ。
前週9月1日~5日の日本株は、週前半は為替がドル高・円安方向に振れたことや安倍改造内閣への期待感を強めたことで大幅上昇し、9月3日の取引時間中には1万5800円台を回復する場面があった。しかし週後半は5日の米8月雇用統計を控えて上値の重い展開となった。
為替は週前半からドル買いの動きを強めた。さらに4日のECB(欧州中央銀行)理事会が追加利下げを決定したこともドル買いの動きに拍車をかけ、ドル・円相場は5日の東京市場で1ドル=105円70銭近辺までドル高・円安が進行する場面があった。一方ユーロ・円相場は1ユーロ=135円台までユーロ安・円高方向に振れた。なお3日~4日の日銀金融政策決定会合は金融政策の現状維持を決定したため材料視されなかった。
5日の米8月雇用統計で失業率は6.1%となり前月比0.1ポイント改善したが、非農業部門雇用者増加数は前月比14.2万人増加となり、7月改定値21.2万人増加から大幅に減少し、市場予想の22.0万人~22.5万人増加も大幅に下回った。この結果を受けて序盤の米国株は下落し、為替は早期利上げ観測が後退して1ドル=104円70銭近辺までドル安・円高方向に傾く場面があった。
しかし5日の米国株は結局、主要株価指数が揃って上昇した。S&P500株価指数は終値ベースでの史上最高値を更新した。雇用状況は引き続き改善しているとの見方が優勢になったことに加えて、ウクライナの停戦合意も支援材料だった。為替は1ドル=105円10銭近辺、1ユーロ=136円10銭近辺で終了した。CME日経225先物9月限(円建て)は1万5685円だった。
週初8日の日本株は、5日の米国株が上昇したことを受けて堅調なスタートとなりそうだ。ただし前週の重要イベントを通過してやや材料難となるため、買い一巡後は上値の重さが意識される可能性があるだろう。
国内要因では安倍改造内閣の政策への期待感が下値を支える形となるが、週初8日の日本4~6月期GDP2次速報と、週末12日の株価指数先物・オプション9月限のメジャーSQが波乱要因となりそうだ。4~6月期GDP2次速報は下方修正が想定されているが、これをネガティブ材料とするか、日銀の追加緩和期待を高めるポジティブ材料とするかが注目され、メジャーSQ算出に向けた仕掛け的な動きも注目点となる。
物色面では、安倍改造内閣の政策関連に加えて、9日の米アップル新製品発表でiPhone関連銘柄、為替が一段とドル高・円安方向に振れた場合は自動車など輸出関連の動きが注目される。新興市場では主力銘柄の値動きが鈍くなり、売買高も減少傾向で盛り上がりに欠ける状況だが、東証1部市場の上値が重くなれば、個人投資家の資金がゲーム・ネット関連、ロボット関連、自動運転関連、格安スマホ関連、新燃料関連、バイオ関連といったテーマ株に向かう可能性があるだろう。
為替は前週からドル買いの動きを強め、ドル・円相場はモミ合い放れの形となった。米FRBのQE3(量的緩和第3弾)終了と、15年春~秋のゼロ金利解除が意識され始めたようだ。ただし世界的に金利低下傾向で米10年債利回りも2.4%近辺での推移が続いている。当面は次週16日~17日の米FOMCと会合後17日のイエレン米FRB議長の記者会見に向けて、米金利動向が焦点となる。
米金利が上昇傾向となれば、中期シナリオどおり日米金利差拡大でドル高・円安方向の動きを強めるが、米8月雇用統計の非農業部門雇用者増加数が8ヶ月ぶりの低水準だったため、米FRBが利上げ時期を先送りする要因だとして早期利上げ観測が後退している面もあり、米金利も為替もモミ合う可能性があるだろう。ユーロに関してはECBの追加利下げを受けて当面はユーロ売り優勢だが、ウクライナ情勢が落ち着けばユーロ買い戻しの可能性もあるだろう。ドル・円相場は1ドル=104円台~105円台、ユーロ・円相場は1ユーロ=135円台~137台の想定だ。
その他の注目スケジュールとしては、8日の日本7月国際収支、日本8月景気ウォッチャー調査、中国8月貿易統計、米7月消費者信用残高、9日の日本7月第3次産業活動指数、日本8月マネーストック、日本8月消費動向調査、10日の日本7月機械受注、日本8月企業物価指数、11日の日本7~9月期法人企業景気予測調査、中国8月PPI・CPI、インドネシア中銀金融政策決定会合、米8月財政収支、12日のユーロ圏7月鉱工業生産、米8月小売売上高、米9月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値などがあるだろう。
その後は13日の中国8月鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資、15日のユーロ圏7月貿易収支、16日の第69回国連総会開幕、16日~17日の米FOMCと17日のイエレンFRB議長の記者会見、18日のECB新型長期オペ「TLTRO」第1回実施、20日~21日のG20財務相・中央銀行総裁会議、26日の米4~6月期GDP確報値、10月2日のECB理事会、3日の米9月雇用統計などが予定されている。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
9月8日~12日の株式・為替相場は、前週の重要イベントを通過してやや材料難となる。安倍改造内閣の政策への期待感が下値を支え、ウクライナの停戦合意で地政学リスクが後退することも支援材料だが、一方では上値の重さも意識されている。
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2014-09-07 13:00