ジャパンディスプレイ安値圏から急反発、短期調整が一巡して出直り本格化

  中小型液晶ディスプレイ製造販売のジャパンディスプレイ <6740> の株価は、第1四半期(4月~6月)の営業赤字で8月8日に501円まで調整する場面があったが、足元では急反発して600円近辺まで戻している。5月安値に接近して短期調整が一巡したようだ。今期(15年3月期)大幅営業増益見通しであり、新製品発表予定の米アップル関連としても注目される。出直りの動きが本格化しそうだ。   ソニーモバイルディスプレイ、東芝モバイルディスプレイ、日立ディスプレイズの3社が統合して12年4月に事業を開始し、14年3月東証1部市場に新規上場した。   モバイル分野(スマートフォン・タブレット)向けを主力として、車載・C&I・その他分野(車載分野、デジタルカメラ分野、医療分野)向けに、高精細・高画質・低消費電力・薄型・軽量の中小型液晶ディスプレイを製造・販売している。前期(14年3月期)の得意先別売上構成比は米アップル向けが約3割を占めた。製造は国内5拠点と海外は中国、フィリピン、台湾に展開し、車載事業強化に向けて米デトロイトに新規オフィスを開設している。   中期戦略では成長市場での高シェア獲得を目指し、市場競争力の高い技術力と高い生産能力を強みとしている。12年6月には石川サイト能美工場、13年6月には茂原工場で最先端の低温ポリシリコン(LTPS)ラインが稼働した。14年6月には台湾の子会社TDIを通じて、台湾の液晶ディスプレイモジュール製造の中日新科技股?有限公司(STC)を子会社化した。STCが有する中国・珠海市のモジュール製造工場を活用して中国でのビジネス基盤を強化し、中国市場でのシェア拡大を目指す。   14年6月には高解像度タブレット向けPixel Eyesの量産準備開始を発表した。タッチセンサー機能をディスプレイに内蔵する当社独自技術を搭載した製品で、ディスプレイモジュールの薄型・軽量化・透過率向上が実現できる。14年秋の量産開始予定としている。14年7月にはモバイル製品向けIPS-NEOの量産を開始した。当社独自の光照射配向プロセスを採用して低消費電力で高コントラストを実現した。   なお7月31日には、産業革新機構(INCJ)、当社、ソニーおよびパナソニックが、ソニーおよびパナソニックが有する有機ELディスプレイパネルの研究開発機能を統合して、JOLED(ジェイオーレッド)を設立(15年1月予定)することで最終合意した。当社は新会社JOLEDに15%出資し、JOLEDとのシナジーで今後の研究開発を加速させる方針としている。   8月7日に発表した今期(15年3月期)第1四半期(4月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比13.9%減の1251億63百万円、営業利益が126億96百万円の赤字(前年同期は63億13百万円の利益)、経常利益が169億16百万円の赤字(同47億39百万円の利益)、純利益が168億34百万円の赤字(同243億61百万円の利益)だった。出荷ユニット数は同3%減少、平均販売価格は同11%下落、平均為替レートは1ドル=102円20銭で同3円40銭円安だった。   シェア拡大を目指す中国向けは大幅増収だったが、欧米向けで大口ユーザーの立ち上げが第2四半期(7月~9月)となったことに加えて、前年同期は大口ユーザー以外の新機種立ち上げがあったことの反動も影響して2ケタ減収だった。利益面では在庫の標準原価洗い替えや低収益品の販売など一時的な損失も影響して営業赤字となった。経常利益は営業外費用での為替差損33億円の計上も影響した。   アプリケーション別の売上高は、モバイル分野が同20.5%減の903億22百万円、車載・C&I・その他分野が同9.8%増の348億41百万円だった。モバイル分野では中国のスマートフォン向けが同2.4倍増収だったが、欧米・その他地域向けが大幅減収だった。車載・C&I・その他分野は車載用が順調に増加し、デジタルカメラやゲーム機向けも堅調だった。   通期の連結業績見通しは前回予想(5月15日公表)を据え置いて、売上高が前期比22.0%増の7500億円、営業利益が同44.8%増の400億円、経常利益が同65.2%増の315億円、そして純利益が同21.0%減の268億円で、配当予想は未定としている。純利益は繰越欠損金等に係る繰延税金資産による法人税等調整額計上の一巡が影響する。   第1四半期は減収で営業赤字だったが、ほぼ計画水準として通期見通しを据え置いた。スマートフォンの高精細ディスプレイ比率は着実に上昇することが予想され、プレミアム価格帯のWQHDの出荷開始で中国市場を中心とした高精細化も想定通りに進捗する。量産準備を開始した高解像度タブレット向けPixel Eyesの出荷も期後半に向けて計画通り増加する見通しだ。戦略市場と位置付ける中国向けの売上高は1800億円の見通しとしている。なお大口ユーザーの年間需要見通しは想定通りだが、第2四半期出荷に時期ずれ懸念があるとしている。   中期的には、中国のスマートフォンメーカーがグローバルブランドを指向していることもあり、国内外でのスマートフォンの高精細ディスプレイ比率の上昇が予想され、WQHDの市場シェア50%を目指している。モバイル分野に比べて需要変動の小さい車載用でも、カーナビやインパネ関連で高精細ディスプレイの需要増加が予想され、デザインインの拡大で16年3月期から売上が大幅に増加する見通しだ。当面はスマートフォンの新機種立ち上げや需要変動の影響で四半期収益がデコボコする可能性があるが、中期的には車載用の拡大も寄与して四半期ごとの収益が平準化し、収益は拡大基調だろう。   株価の動き(公開価格900円、3月19日初値769円、高値4月21日836円)(8月7日付で貸借銘柄に選定)を見ると、5月安値499円から6月戻り高値667円まで切り返したが、戻り高値圏600円~650円近辺での短期モミ合いを経て、8月上旬の全般地合い悪化も影響して再び水準を切り下げた。さらに第1四半期の営業赤字で8月8日に501円まで調整する場面があった。ただし足元では急反発して600円近辺まで戻している。5月安値に接近して短期調整が一巡し、今期の大幅営業増益見通しを再評価する動きだろう。   9月5日の終値591円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS44円61銭で算出)は13~14倍近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS673円28銭で算出)は0.9倍近辺である。日足チャートで見ると一旦割り込んだ25日移動平均線を一気に突破した。また週足チャートで見ると、500円近辺に下値支持線を形成して急反発し、13週移動平均線突破の動きを強めている。短期調整が一巡して出直りの動きが本格化しそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
中小型液晶ディスプレイ製造販売のジャパンディスプレイ<6740>(東1)の株価は、第1四半期(4月~6月)の営業赤字で8月8日に501円まで調整する場面があったが、足元では急反発して600円近辺まで戻している。
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2014-09-08 09:15