日本、米国、欧州、アジア それぞれのファンダメンタルズが映す為替と株価=広木隆
「通貨は詩と似ている」。幼いころから詩をこよなく愛した、前欧州中央銀行(ECB)総裁、ジャンクロード・トリシェ氏の言葉である。「五百年前の俳句のように金貨は鋳造時の姿を保つ。これは非常に重要な点だ。時を経ても価値を保つ不変の大切さを我々に教えてくれるからだ」。(日本経済新聞「私の履歴書」)
セントラルバンカーにはインフレファイターのDNAが流れている。「通貨の番人」との自負が遺伝子として引き継がれている。特に欧州はその気概が強い。「ユーロを守るためならなんでもする」というスタンスが一番の根っこにある。リーマン危機から3年も経たず、欧州債務危機が拡大する最中の2011年に当時ECB総裁だったトリシェ氏は2度の利上げを断行している。それだけをもって金融政策を誤ったのかは評価が定まらないところだが、日米英欧のなかでは欧州の経済状況が最も厳しいことは事実である。日米英はリーマン危機の後遺症から立ち直りつつある。
特に日本は15年に及んだデフレを脱した。ところがその反対にユーロ圏は「ジャパナイゼーション(日本化)」とも言われるデフレ懸念が深刻だ。ユーロ圏の8月の消費者物価指数は前年同月比+0.3%とデフレに陥る瀬戸際にある。一向に改善しないディスインフレ状況を受けて欧州中央銀行は追加の金融緩和策を打ち出した。すべての政策金利を0.10%引き下げ、指標となる金利は過去最低の0.05%とした。預金ファシリティのマイナス金利幅は-0.10%から-0.20%へと拡大した。これを受けてドイツの短期金利は大幅なマイナス圏に入っている。3年物短期国債の利回りまでがマイナスという異常とも言える事態となっている。このドイツの短期金利のマイナスは、金融機関がいかに「カネの置き場」に困っているかを反映したものだ。
前回の緩和策で打ち出されたTLTRO(Targeted-LTROs)は、その第一弾が今月実施される。TLTROとは銀行による実体経済への融資を促進するため…
(執筆者:広木隆 マネックス証券チーフ・ストラテジスト 編集担当:サーチナ・メディア事業部)
「通貨は詩と似ている」。幼いころから詩をこよなく愛した、前欧州中央銀行(ECB)総裁、ジャンクロード・トリシェ氏の言葉である。「五百年前の俳句のように金貨は鋳造時の姿を保つ。これは非常に重要な点だ。時を経ても価値を保つ不変の大切さを我々に教えてくれるからだ」。(日本経済新聞「私の履歴書」)
economic,fxExchange
2014-09-09 17:45