中国政府は外資に対する「投資前の内国民待遇」を模索、上海自由貿易区は実験場=李克強首相

 中国の李克強首相は天津市内で10-12日に開催されるダボス夏季会議に出席する。9日には同会議に出席する企業家の代表と会合を持ち、中国として外資に対する「投資前の内国民待遇」の推進を模索していると述べた。上海自由貿易区は、そのための実験を進める場という。中国新聞社が報じた。  内国民待遇とは、外資や外国人企業家に自国民と同様の権利を保障することを指す。「投資前の内国民待遇(Pre-establishment National Treatment)とは、「外資にも自国民と同様の扱いで投資ができる」ことを意味する。いわゆる「投資の自由化」を認めることに相当する概念だ。  李首相は「中国政府は、(外資に対する)投資前の内国民待遇およびネガティブリストによる管理の推進を模索している」と述べた。習近平主席と米国のオバマ大統領および米中両国の関係閣僚がが2013年6月に行った米中首脳会談でも、中国側は「投資前の内国民待遇」を含む「高水準の投資協定交渉」を始めることを認めた。李首相は改めて「投資の自由化」を全国規模に拡大する意向を表明したことになる。  外資が中国に投資する場合には従来、中国当局が認める事業内容に合致した企業活動しか認められなかった。2013年に発足した中国(上海)自由貿易試験区では、中国側が「企業活動を禁止、または制限」するネガティブリストを発表し、同リストに抵触しない外資の企業活動は自由化された。  同試験区管理委員会が試験区発足の2013年に発表されたネガティブリストでは190項目(分野)の企業活動が禁止/制限された。14年版のリストでは26.8%減の139項目だった。ネガティブリストは毎年発表し、禁止/制限項目は順次、減らしていく方針とされる。  李首相は、中国全体に、上海自由貿易試験区と同様な外資の扱いを広めていく考えを示したことになる。  なお、14年版のリストの発表直後、日本で言う風俗産業に相当する「色情業」や「賭博」が禁止や制限項目からはずされたことも注目を集めた。同試験区関係者は、「色情業」や「賭博」は国内法ですでに禁止されているので、外資向けのネガティブ・リストに盛り込む必要はないと説明した。  外資に対する法とルールづくりで「国内法は外資であれ内資であれ一律に適用」、「外資に対しては、必要最小限の範囲で規制を追加」という、よりすっきりした体系づくりを目指す、当局の考えが反映されたと理解することができる。  李首相は「投資前の内国民待遇」と「ネガティブリストによる管理」について、上海自由貿易区で実験を進めていると説明した。改革を重点的に進める分野としては税財政改革と金融体制改革の深化と説明。さらに国有企業や開放的な経済発展の問題についても、いずれも改革により進めねばならないと述べた。 **********  中国の外資に対する姿勢は、これまで「ご都合主義」と酷評されてもしかたない面があった。当局が、あるいは官僚個人が「わが方に有利」と判断すれば、「ルールの通常の適用では考えられない厚遇」をしてもらえる場合もあった。  逆に中国側の状況で、「それまでは考えられないほど、厳しく扱われた」というケースもある。どの国でも似たようなことはあるが、中国の場合、“振れ幅”が大きいとされた。中国でビジネスをする場合、担当する官僚の個人的立場や気持ち、官僚の置かれた状況や人間関係を綿密に観察する必要があるとの声もある。  また、担当官僚個人には関係なく、政治的な事情により、特定国の企業が“いじめ”にあう場合も目立った。  外資についての李克強首相の考えは「できるだけ自由化、できるだけ簡素化、できるだけ公明正大化」に要約できるはずだ。だとすれば、その場その場の状況で対応を変える/変えすぎる体質をも改革しないと、せっかくの制度改革も実効性の乏しいものになる危険がある。(編集担当:如月隼人)
 中国の李克強首相は天津市内で10-12日に開催されるダボス夏季会議に出席する。9日には同会議に出席する企業家の代表と会合を持ち、中国として外資に対する「投資前の内国民待遇」の推進を模索していると述べた。上海自由貿易区は、そのための実験を進める場という。中国新聞社が報じた。
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2014-09-10 11:15