秋相場のサブテーマの「為替感応度」を先取りして海外売上高比率上位銘柄にアプローチ余地=浅妻昭治

<マーケットセンサー>   円安が、第2弾発進した。9月入り早々に1ドル=105円台央と急動意したあと、9月11日には107円台前半とリーマン・ショック直後の2008年9月22日以来およそ6年ぶりの円安水準となり、なお円売りが続きそうなムードである。9月早々の円安の引き金は、スコットランドの英国からの独立を問う国民投票を材料に、英国ポンドが売られてドル高となり、つれて円安に振れたとマーケットコメントされたが、前週の1ドル=107円台前半への円安は、明らかに市場力学が異なるようで、まるで第2弾ロケットの発射のようにもみえる。   安倍晋三首相と黒田東彦日銀総裁が、5カ月ぶりに会談し、直後に黒田総裁が、追加金融緩和策に言及した談話に端を発しており、まさしく「アベノミクス」と「クロダミクス」の合成政策「アベクロミクス」に他ならない。消費税増税後の景気下ぶれリスクが、なかなか払拭できないなか、「アベノミクス」から「クロダミクス」への追加緩和策へのプレッシャーが強まったのか、それとも元大蔵官僚のDNAが働いて「クロダミクス」が、「アベノミクス」へ来年10月の消費税再増税の確約を迫ったための談話か、なかなか興味深い政策会談であった。さらに9月16日~17日に開催される米連邦準備制度理事会(FRB)の公開市場員会(FOMC)を前に、米金利引き上げの前倒し観測なども強まっており、第2弾ロケット、第3弾ロケットと円安・ドル高の多段階ロケット発射の可能性も示唆している。   9月の為替急変動は、どこかで見た覚えのある光景である。何といっても強烈に思い出すのが、今を29年も遡る1985年9月のプラザ合意である。あのときも、9月末ギリギリの22日に開催されたG5(先進5カ国蔵相・中央銀行総裁会議)で為替レートの安定化を目指すとの大義名分のもと、実質的には円高・ドル安誘導が合意されて、為替は急変動、円高が加速した。   もちろんこの急変動で国内は大揺れに揺れた。「円高不況」の深刻化が強く懸念された。なかでも産業界で大ブーイングとなったのが、9月末の時期での円高・ドル安合意であった。9月中間期の決算期末をあと1週間後に控えて、為替差損の発生で企業業績が大打撃を受けることが必至だったからだ。これが10月に入っての円高加速なら、翌年3月の3月期決算期末まで半年の時間的余裕があって、決算対応ができたというのである。当時のいまはなき竹下登元蔵相の企業マインドの欠如、相場観のなさへの恨み節が、ことのほか高まった。   これに対して今回は、円高でなく急激な円安である。ところが、産業界がこれですべてハッピィーになるかといえばそうでもないらしい。円安メリットを享受する業界もあれば、円安デメリットを蒙る業界の少なくないからである。東京電力 <9501> の福島原子力発電所の事故以来の全原発の運転停止で、円安による発電燃料の価格高騰で電気料金は上昇するわ、日本の貿易収支が大幅赤字転換するわとご難続きで、その他輸入原材料もコストアップして企業業績を圧迫する「負の側面」が意識されているからだ。それに輸出産業でも、海外現地生産への転換が進み、円安で必ずしもかつてほど目立って輸出が伸びるような産業構造とはなっていないことも上げられる。   この円安のプラスとマイナスの影響が、ちょうどニュートラルになるのが、1ドル=105円台とする試算もあって、早速、産業界からは為替の急激な変動は望ましくなく安定化を優先させるべきだとの声が上がった。それはそうだろう。プラザ合意時と同様に9月末は目前である。9月中間期決算(第2四半期累計業績)の集計を前に業績修正を迫られることは明らかだ。この業績修正が、上方修正ならまだしも、下方修正ならマーケットで情け容赦のない売り物を浴びる恐れもあり、プラザ合意時の故竹下元蔵相ではないが、「アベノミクス」と「クロダミクス」の企業マインド、相場観に期待したくもなる。   秋相場のメーンテーマは、「業績」とするのは衆目の一致するところである。とすると、このメーンテーマを補足するサブテーマは、為替急変動に業績動向が連動する「為替感応度」になるはずだ。なかでも感応度がプラスに働く銘柄は、業績の上方修正が期待され買い材料を提供してくれることになる。プラスの為替感応度が、もっとも高いのは言わずと知れたトヨタ自動車 <7203> で、6000円台で膠着していた同社株が、年初来高値6400円を上抜き、昨年5月高値6760円にキャッチアップするようなら、待望久しい業績相場は全開となるのは間違いない。   当然、トヨタに続く為替感応度の高い銘柄への追随買いが強まると予想されるが、当コラムでは敢えてこのトレンドを外れて、海外売上高比率が高いものの、今3月期第1四半期(1Q)決算で目立った業績修正がなかった銘柄、低利益進捗率にとどまった銘柄、あるいは下方修正をした銘柄をマークしてみたい。円安進行で業績の変化率が逆に大きくなると見込まれるからである。海外売上高比率が、70%を超える銘柄を中心に銘柄を絞り込むと13銘柄が浮上した。(本紙編集長・浅妻昭治)(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)
円安が、第2弾発進した。9月入り早々に1ドル=105円台央と急動意したあと、9月11日には107円台前半とリーマン・ショック直後の2008年9月22日以来およそ6年ぶりの円安水準となり、なお円売りが続きそうなムードである。
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2014-09-16 10:00