米FOMCまでドル/円相場は上昇も=外為どっとコム総研

1ドル=103円台に乗せたドル/円の行方を中心に、当面の外為市場の見通しを外為どっとコム総合研究所の調査部研究員、石川久美子氏に聞いた。石川氏は、「米国FOMCが市場のムードの転換点になり得る」という見通しを示した。(写真はサーチナ撮影)
――ドル/円は1ドル=103円を突破しても下げる気配のない動きになっていますが、現在のドル高局面は、どこまで続くとお考えですか?
現在のドル/円相場の軸は、米国のテーパリング(量的金融緩和の縮小)となっています。このところ発表される米国の経済指標は、米国経済が底堅いことをうかがわせる内容になっており、ドル/円を押し上げてきました。たとえば12月6日(金)に発表予定の米11月雇用統計がよほど弱い結果で、テーパリング開始時期の大幅後退観測に繋がらない限り、この基調は継続すると考えられます。もし米雇用統計がかなり強い内容であれば、実際にテーパリングを開始するかどうかは別としても、12月17-18日のFOMCでのテーパリング開始の可能性が「一部で意識」され、ドル/円は上値を試す流れになることもありそうです。
ドル/円の年初来高値は103.733円で、この水準では売りもかなり厚いと見られますが、この水準を抜ければ、104円、105円という高値を意識した動きになると考えられます。
FOMCの声明発表時は、実際にテーパリングを行うかどうか、行わなかった場合は「開始がいつになりそうか、という時期の示唆」があるかどうかがポイントです。ただ、これについては初動のリアクションが一服すれば、その後は欧米勢がクリスマス休暇に入ることもあって、年末に向けて大きな動きは期待しづらくなるでしょう。
――ドル/円の下値は? また、年末の水準は?
現状では、日本の金融政策が緩和方向、米国の金融政策が緩和縮小方向に向いている以上、ドル/円がこれまでのドル高基調を壊してしまう程の下げは考えにくく、下値は1ドル=100円を下回る程度の99円台とみています。
年末のドル/円の水準は、ドル/円が103.733円を突破できるかどうかということによって、変わってきます。12月中に103.733円を突破し、さらに上値を追う展開となれば、多少利食い売りが入っても103円台で年末を迎えることも考えられますが、突破できずに調整した場合は、100円台での越年ということもあり得ます。
――ユーロ/円も1ユーロ=140円近くにまで上昇しています。ユーロ高の要因は?
ユーロ/円は、11月前半にECBが中銀預金金利をマイナス化する可能性が意識され、ユーロ安が進みましたが、その後、ユーロ圏の要人によるマイナス金利について後ろ向きな発言が頻発したことによって、ユーロ買い優勢に転換。さらに、株高による円安という流れが重なって、円に対してユーロは堅調に推移しました。
ここ最近のユーロ圏の経済指標は比較的好調です。従って、株価の堅調ぶりが維持されている状態で、12月5日(木)に予定されているECB理事会後にドラギECB総裁からマイナス金利導入についてよほど前向きな発言が飛び出さない限り、現状のユーロ高・円安基調は継続すると思います。ユーロ/円は、1ユーロ=140円を突破すれば、145円程度の高値が見込まれます。
ただし、ユーロ/円はこれまで、株高・円安に支えられてきたため、株式市場に変調があれば大きくユーロ売りに傾く可能性があります。クリスマス休暇前の利食い売りなどによって株価が失速するようなことになれば、1ユーロ=135円程度までの安値も考えられます。
――その他の通貨ペアで注目しているのは?
ポンド/ドルにショートのタイミングを見極めるところだと思っています。現在、英中銀はILO(国際労働機関)基準での失業率が7.0%に低下するまでは低金利を維持する方針を打ち出していますが、11月の英中銀四半期インフレ報告によって、この「失業率7.0%を達成する時期」が、それまで英中銀が想定していた2016年から2015年7-9月辺りまで早まる可能性が浮上しました。英中銀の金融政策委員会の一部のメンバーからはインフレを懸念する声もあり、このところのポンドの押し上げ要因となりました。
ところが、最近、英中銀のカーニー総裁が「失業率が7%に下がっても、利上げを急がない」という発言をしています。現在のところ、このカーニー総裁の発言は相場に大きな影響を与えてはいませんが、現在の株高・円安(ポンド高)の流れが変化するタイミングでは、改めて強く意識されるようになることもあり得ます。
英国の利上げ時期後退観測が拡がった場合、ポンドはテーパリングが視野に入って上昇傾向にあるドルとの対比が際立ち、ポンド売り・ドル買いが進みやすいと思います。ポンド/ドルの上値メドは、2011年8月高値の1ポンド=1.66160ドル。下落に転じると24カ月移動平均線の1ポンド=1.57853ドル程度までの下値があるとみています。(編集担当:徳永浩)
1ドル=103円台に乗せたドル/円の行方を中心に、当面の外為市場の見通しを外為どっとコム総合研究所の調査部研究員、石川久美子氏に聞いた。石川氏は、「米国FOMCが市場のムードの転換点になり得る」という見通しを示した。
economic,fxExchange