中国が注力するアジアインフラ投資銀行の落とし穴=大和総研

 中国が設立に注力しているアジアインフラ投資銀行(AIIB)について、大和総研経済調査部シニアエコノミストの齋藤尚登氏と、金融調査部兼経済調査部研究員の神尾篤史氏は2014年9月17日に連名でレポートを発表し、AIIBは「中国の中国による中国のための国際金融機関になりかねないリスク」があると指摘している。AIIBの成功のカギは、「中国の一人勝ちではなく、いかにしてWIN-WINの関係を構築できるか」と、中国の意識変革を求めている。レポートの要旨は、以下の通り。 ◆中国は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立に注力している。2014年11月に北京で開催されるAPEC首脳会議に向けて、中国は関係諸国と「アジアインフラ投資銀行創設準備に関する政府間枠組覚書」(MOU)を締結する意向である。 ◆AIIB構想はインフラ整備資金の調達の観点からみれば、アジア地域全体にメリットがある。インフラを整備したい国にとって、その整備資金を低利で借りることができれば、既存の国際機関からの融資や市場での調達など以外に資金調達経路を確保できるためである。 ◆中国は自らが影響力を存分に行使できるAIIBを新たに設置し、ADBと競う形で途上国融資を開始しようとしている。中国にとって、アジア諸国への投資は国益につながるし、地域での影響力を拡大することができる。インフラ建設の受注を中国企業が獲得することも狙いの一つである。さらに、AIIBでは、各国自国通貨建ての貿易、投融資や資金調達が推進される。人民元は、その中核となりうる。 ◆AIIBの設立は、中国にとってのメリットが大きい。しかし、そこに落とし穴がある。中国の中国による中国のための国際金融機関になりかねないリスクである。AIIB成功のカギは、中国の一人勝ちではなく、いかにしてWIN-WINの関係を構築できるか、さらには公正・公平な制度を担保し、透明性のある情報開示を行うことができるか、である。求められるのは、今までの延長ではなく、責任ある大国としての意識変革ではないか。少なくとも早い段階で既存の国際金融機関との役割分担や、これらとの協調性や補完性が確保されていることをきちんと説明しなければならないだろう。(情報提供:大和総研、編集担当:徳永浩)
中国が設立に注力しているアジアインフラ投資銀行(AIIB)について、大和総研経済調査部シニアエコノミストの齋藤尚登氏と、金融調査部兼経済調査部研究員の神尾篤史氏は2014年9月17日に連名でレポートを発表し、AIIBは「中国の中国による中国のための国際金融機関になりかねないリスク」があると指摘している。
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2014-09-18 08:30