ドル/円が膠着の中、ユーロ/ドルに活躍余地=外為どっとコム総研

米国で政府機関が一時閉鎖されるなど、思わぬ展開となったことから、米ドルが弱い相場付きになっている。いよいよ年末相場を前にして、今後のドル/円の行方を、どのように考えればよいのか? 外為どっとコム総合研究所の取締役調査部長兼上席研究員の神田卓也氏に、米ドルの動きを中心にして、当面の為替相場の見通しについて聞いた。(写真はサーチナ撮影)
――ドル/円で、ドルが弱い展開が続いていますが、年末に向けての注目ポイントは?
ドル/円の方向感に関わる大きなイベントは、米国が量的金融緩和の縮小(テーパリング)をいつ始めるかということです。米政府機関の閉鎖等の影響で、米国経済が回復に向かって足踏みをしたといわれ、この頃では、テーパリングのタイミングが2014年3月以降に先送りされるという見方が強くなっています。これが、最近のドル軟調の材料です。
ただ、今8月頃までは、9月にもテーパリング開始と目されていたのです。それが、財政協議の議論が紛糾したとはいえ、一気に6カ月以上も先送りされるというのは、行き過ぎた反応のようにも思えます。
したがって、年末に向けて発表される10月-11月の経済指標を確認しながら、改めてテーパリングのタイミングを見極める展開になるでしょう。この経済指標については、11月に発表される数値は、政府機関閉鎖の影響を受けて指標としての信頼性に欠けるという見方もあり、市場の材料としては力不足といわれています。10月後半に発表された米経済指標への市場の反応の鈍さと同様の動きが続きそうです。このため、11月のドル/円相場は、“トレンドレス”の状態になるとみています。
――年末に向けてドル/円のレンジは?
ドルが弱い中でも、1ドル=97円台で踏みとどまって、下値の固さが確認できました。これは、日本側に貿易収支の赤字幅拡大、対外直接投資の拡大など、円が売られやすい材料があるためでしょう。ドルも円も動きづらいというなかで、ユーロに資金がシフトしているというのが、最近の傾向です。
したがって、当面は1ドル=96円50銭程度を下値にして、上値は99円50銭程度のもみ合いが続くとみています。
ただし、12月に発表される米経済指標が、景気回復を裏付けるものであれば。テーパリングの1月開始などといった期待が膨らみ、ドルが一段高に進む可能性はあると思います。その場合には、年内に1ドル=102円程度が期待されます。
――ユーロ/ドルの上昇が目立ちますが、当面のポイントは?
この秋にユーロが、対ドルで強いのは、米ドルに政府機関の閉鎖などといった悪材料がでたためで、いわば、米国の敵失(エラー)による上昇です。
一方、米国のテーパリングの延期は、株式市場にはプラスに働いています。ここのところ、株高が円安要因に働く傾向が強いため、テーパリングがドル/円ではニュートラルに働くところ、ユーロ/ドルではストレートにユーロ高につながっています。
シカゴの為替ポジションでも、最近はユーロの買いポジションが膨らんできていることも確認できますので、短期筋を中心に、当面はユーロ高・ドル安が進みそうな展開です。年内に、1ユーロ=1.4ドル近辺まで上がる可能性があるとみます。11月の予想レンジは、1ユーロ=1.35ドルを下値に、上値を1.40ドルです。
しかし、年内には決算のために、現在のポジションを解消する動きになるでしょうから、その時には、ユーロ/ドルは逆転の動きに転じるでしょう。年末までには、1ユーロ=1.33ドル程度までユーロが下落する可能性があるでしょう。これから、年末に向かって、一番面白い動きをするのは、ユーロ/ドルの動きだと思います。
――新年に向けて、中期的な考え方は?
基本的には、米FRBのテーパリングの実施、そして、次のステップとしての利上げを見通す動きにあると考えています。日銀もECBも低金利政策の是正までには時間がかかるので、一足早く、金融緩和からの出口戦略を模索しているドルが強いということに変わりはありません。
これまで、ドル/円は、米国の金融緩和の縮小を材料に1ドル=105円-110円をめざすという見通しがありましたが、9月のテーパリング開始の見送り、そして、政府機関の閉鎖などの混乱によって、1ドル=105円への挑戦は、来年に先送りされたということです。
また、ユーロ/ドルの関係でも、中期的にはドル高の方向が変わったわけではありません。少し、中期的に考えるのであれば、ドル/円での円、ユーロ/ドルでのユーロは、この年末に売り場探しの展開になるといえます。(編集担当:徳永浩)
米国で政府機関が一時閉鎖されるなど、思わぬ展開となったことから、米ドルが弱い相場付きになっている。いよいよ年末相場を前にして、今後のドル/円の行方を、どのように考えればよいのか?
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