Jトラストは一連のM&A案件発表を好感して急反発
Jトラスト <8508> (東2)の株価は、6月の年初来高値1615円から反落して調整局面だったが、9月11日の直近安値1051円から9月17日の1310円まで急反発した。9月12日発表のインドネシア・ムティアラ銀行の株式売買契約など一連のM&A案件を好感する動きだ。1000円近辺の下値支持線を確認して強基調に転換した形であり、積極的な業容拡大戦略を評価して6月の年初来高値を目指す展開だろう。
M&Aや債権承継などを積極活用して業容拡大戦略を推進し、金融サービス事業(事業者向け貸付、消費者向け貸付、クレジット・信販、信用保証、債権買取)、不動産事業、アミューズメント事業、海外金融事業(消費者金融業、貯蓄銀行業)、その他事業(システム開発など)を展開している。
国内金融分野では、日本保証(12年3月ロプロが武富士の消費者金融事業を承継、12年9月ロプロと日本保証が合併)、パルティール債権回収、KCカード(11年8月楽天KCを子会社化)、クレディア(12年7月子会社化)、国内不動産分野・アミューズメント分野ではアドアーズ <4712> (12年6月子会社化)などを傘下に置き、14年3月には個品割賦事業を展開するNUCS(宮崎県宮崎市)を子会社化した。
なお子会社KCカードは、15年1月5日を効力発生日として子会社を設立して「KCブランド」事業を承継させ、同日付で承継会社の全株式をヤフー <4689> とソフトバンク・ペイメント・サービスに譲渡する。また子会社NUCSの「NUCSブランド」事業をKCカードに承継させ、グループのクレジットカード事業を「NUCSブランド」として継続する。本件取引によって発生する約404億円(株式譲渡対価約350億円、KCカードに対する貸付金の返済金54億円)の資金を、クレジットカード事業への再投資、グループ事業の強化、新規事業開設のための資金に充当する。
海外金融分野では韓国での事業基盤確立を推進している。11年4月に消費者金融の韓国・ネオラインクレジット貸付を子会社化した。12年10月に貯蓄銀行認可を受けた韓国・親愛貯蓄銀行は未来貯蓄銀行の一部資産・負債を承継し、13年1月韓国・ソロモン貯蓄銀行から、13年6月韓国・エイチケー貯蓄銀行から消費者信用貸付債権の一部を譲り受けた。
14年3月に韓国・ハイキャピタル貸付、韓国・ケージェイアイ貸付を子会社化し、14年8月には韓国・ハイキャピタル貸付、韓国・ケージェイアイ貸付および韓国・ネオラインクレジット貸付の貸付事業を韓国・親愛貯蓄銀行に譲渡した。今後は韓国・親愛貯蓄銀行の相対的に低金利の預金を原資として事業を運営し、グループ全体として収益構造の改善を進める。
14年6月には、韓国スタンダードチャータードキャピタルおよび韓国スタンダードチャータード貯蓄銀行の買収(株式譲渡9月下旬予定)を発表した。今回の買収により、韓国・親愛貯蓄銀行と併せて貯蓄銀行部門の営業エリアが韓国全土の約7割に広がる。
アジアへの展開は13年12月子会社Jトラスト・アジア(シンガポール)がインドネシアのマヤパダ銀行と資本業務提携した。そして9月12日、インドネシア預金保険機構(LPS)が所有するインドネシアのムティアラ銀行の株式取得に関する公開入札で落札候補者に選定され、LPSと条件付株式売買契約を締結した。インドネシア金融庁による審査を通過した後に必要な手続きを進める。ムティアラ銀行はインドネシア全土に62支店の営業網を持つ総資産13兆インドネシアルピア(約1200億円、14年3月現在)の商業銀行である。インドネシアの商業銀行に対する外国人持株比率は最大40%という規制があるが、本件は特例として100%取得することが可能となっている。
9月16日には子会社アドアーズが、韓国でカジノ事業を展開するJBアミューズメント(JBA、韓国KOSDAQ市場上場)が実施する第三者割当増資を引き受けると発表した。出資比率9.49%で第2位株主となる。韓国・済州新羅ホテルでカジノ事業を行うマジェスターを含むJBAグループと協力関係を構築し、アミューズメント事業におけるシナジー創出や事業拡大を目指す方針だ。
また9月19日には子会社Jトラストアジアを通じて、シンガポールの不動産開発会社でホテル事業を主力とするLCD(シンガポール証券取引所上場)の株式29.5%を総額約78億05百万円で取得して筆頭株主となった。LCDはタイ、イギリス、ベトナムなどに著名なホテルやサービスアパートメントを保有している。LCDに取締役を派遣して戦略的協業関係を構築するとともに、シンガポールを拠点として東南アジアに総合的な不動産業を展開する方針だ。なおLCDの商号をJトラスト・インターナショナルに変更予定としている。
今期(15年3月期)の連結業績見通し(8月13日公表)は営業収益(売上高)が前期比11.9%増の692億91百万円、営業利益が同80.7%減の26億56百万円、経常利益が同79.5%減の27億38百万円、純利益が同0.8%増の112億39百万円、配当予想(5月14日公表)が前期と同額の年間10円(第2四半期末5円、期末5円)としている。
中期成長向けてM&Aや事業再編を活用したグループの事業基盤構築・強化に取り組んでいるため、今期は一時的に営業費用などが増加して営業減益、経常減益の見通しとしている。ただし韓国スタンダードチャータードキャピタルおよび韓国スタンダードチャータード貯蓄銀行の買収で負ののれん発生益が見込まれるため、純利益は前期並みを確保する見通しだ。当面はM&Aや事業再編に伴って収益が大幅に変動する可能性があるが、積極的な業容拡大戦略で中期的には収益拡大基調だろう。
株価の動きを見ると、6月の年初来高値1615円から反落して調整局面だったが、9月11日の直近安値1051円から急反発の展開となり、9月17日には1310円まで上伸する場面があった。9月12日発表のインドネシア・ムティアラ銀行の株式売買契約など一連のM&A案件を好感する動きだろう。
9月22日の終値1260円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS95円24銭で算出)は13~14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は0.8%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS1502円54銭で算出)は0.8倍近辺である。日足チャートで見ると25日移動平均線、また週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線を一気に突破した。1000円近辺の下値支持線を確認して強基調に転換した形であり、積極的な業容拡大戦略を評価して6月の年初来高値1615円を目指す展開だろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
Jトラスト<8508>(東2)の株価は、6月の年初来高値1615円から反落して調整局面だったが、9月11日の直近安値1051円から9月17日の1310円まで急反発した。
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2014-09-24 07:30