三井物産、グローバルブランドの確立へ向けたプロジェクトを強力に推進

三井物産は2014年9月24日、東京都港区の網町三井倶楽部で「三井物産ブランド・プロジェクト記者発表会」を開催した。今年5月から本格的に取り組んでいる「三井物産ブランド・プロジェクト」の第一次フェーズの成果物として、グローバルで統一したコーポレートロゴ等を発表した。発表会に臨んだ三井物産代表取締役社長の飯島彰己氏は、「グローバル化がかつてないスピードで進展している今こそ、等身大の三井物産を表し、かつ、総合商社の中で差別化した価値を明らかにするためのブランディングが必要」と、プロジェクトの意義を強調した。(写真は、グローバルロゴを挟んで佐藤可士和氏<左>と、三井物産社長の飯島彰己氏。撮影:サーチナニュース)
三井物産は、アートディレクター/クリエイティブディレクターとして活躍する佐藤可士和氏をトータル・プロデューサーに迎え「三井物産ブランド」を明確に定義し、その情報を広く発信していく「三井物産ブランド・プロジェクト」を推進している。佐藤可士和氏は、すでに準備期間も含めると約9カ月にわたって、精力的なヒアリング活動を行い、多角的に「三井物産」を分析。グローバルベースで統一するのは戦後初めてになるというコーポレートロゴの制定と、スローガン「360°business innovation.」、そして、「三井物産の核=『人』。」をベースにしたステートメントのとりまとめを行った。
そもそも「究極のB2B企業」(佐藤可士和氏)と目される三井物産は、これまで「ブランディング」について突き詰めて考えることがなかった。それをこのタイミングで、全社的な運動として取り組むのは、「今こそ、広く社会に等身大の三井物産を知っていただきたい。また、総合商社の中で差別化された強みを明確にするブランディングの必要性が増している」(飯島社長)との判断からだ。飯島社長は、ロンドンからやってきた経済専門紙の記者に「総合商社とは?」と問われ、「よくわからないと答えざるを得なかった」というエピソードを披露した。「CEOとして業務内容はよく理解しているが、いざ、外部の方に分かりやすく説明するために、どのように話せばよいのかわからなかった」という。
飯島社長は、「佐藤可士和氏という外部の優れた人材に依頼し、徹底的に三井物産を分析し理解していただき、価値や強みを明確に打ち出していだたきたいと考えた。それを取引先や株主、従業員など、すべてのステークホルダーに向けて発信してもらうことは重要であると判断した」という。「社長に就任した5年半前から温めてきた」ほどに、念願だったと語った。
佐藤可士和氏は、今回のプロジェクトの進行にあたって多くの三井物産の役職員と対話を交わす中で、「たとえば、役員の1人ひとりに強烈な個性があって自由闊達。言葉を選ばずに言えば、一人ひとりが個人商店主のような感じを受けた。誰もが“三井物産が好きだ”という一点では一致しているものの、それぞれにビジョンや夢を持って仕事をしているという印象が強烈だった。そこから改めて、“人の三井”という伝統を感じた」と振り返っている。
発表されたステートメントでは、「人の三井」が大きく謳われ、企業価値の“核”として定義されている。しかし、佐藤氏が社内でヒアリングを進める当初には、「三井物産の価値は、挑戦と創造にあるという声が強く、“人の三井”という言葉は、あまりにも当たり前な感覚として、むしろ、埋もれた言葉になっていた。それを、改めて真正面から取り上げ、浮かび上げられたことが、ブランディングのプロジェクトとしては、大きな成果のひとつ」という。
そして、新たに制定したグローバルロゴは、「丸に井桁三」と呼ばれる「三井」の店章そのものを使った。300年以上の歴史をもち「天」「地」「人」を表すとされ、世界中で使われてきた従来の三井物産のロゴだが、あえて、「スミ(黒色)」を使って伝統を表現した。グローバルベースでは線の太さや色が異なる場合があったが、今後は全世界に統一したイメージを発信していく。また、“井桁三”マークに合わせて英語社名「MITSUI&CO.,LTD.」を、ロゴマークでは「MITSUI&CO.」とした。「&」を象徴的に配することで、あらゆる人・情報・発想・技術・国などを「つなぐ」という三井物産のフィロソフィーを表現したという。
「360°business innovation.」というスローガンについては、「全方向的提案ができる総合力、つなぐ力を表し、三井物産の価値の根幹を表現した言葉」(飯島社長)として位置づけている。現在、「7つの攻め筋」として推進している「ハイドロカーボンチェーン」「資源(地下・地上)・素材」「食糧と農業」「インフラ」「モビリティ」「メディカル・ヘルスケア」「衣食住と高付加価値サービス」を、部門を超えて、情報や発想、事業やノウハウをつなぐことを提案するところに企業価値があるとした。
佐藤可士和氏は、「『360°』は記号としてわかりやすいのだが、実際に『360°』を実践しているところ少ない。すなわち、そこがスゴイということを改めて感じた」とスローガンに込めた思いを語っている。「今回のブランド・プロジェクトを通じて、三井物産は、日本の素晴らしさを世界に向けてアピールしていく存在足りえると感じた」という。そして、「今回のプロジェクトで大事なことは、三井物産自身が積極的に世界に向けてブランドを発信し、一つのブランドでコミュニケートしていこうとしていること。これまでブランディングを意識していなかったところが、ブランディングに取り組み始めたというところに、大きな変化がある」と語っている。
最後に飯島社長は、記者発表会を総括して「今日はスタートに過ぎない。三井物産のブランドがグローバルに浸透していくには時間がかかる。これから数年間をかけて、様々な形でブランドの浸透に向けた取り組みを進めていく計画だ。今後、設定するマイルストーンに到達するたびに、改めて発表の機会を設けていきたい」と、すべてのステークホルダーに浸透するまで、「三井物産ブランド・ブロジェクト」を推し進めていくと語った。(取材・編集担当:徳永浩)
三井物産は2014年9月24日、東京都港区の網町三井倶楽部で「三井物産ブランド・プロジェクト記者発表会」を開催した。(写真は、グローバルロゴを挟んで佐藤可士和氏<左>と、三井物産社長の飯島彰己氏。撮影:サーチナニュース)
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2014-09-25 11:00