中国で反腐敗・反汚職で辣腕をふるう王岐山氏の活躍に期待=大和総研
大和総研経済調査部シニアエコノミストの齋藤尚登氏は2014年9月26日、中国経済に関するコラムを発表し、中国の政権中枢にあって腐敗・汚職を取り締まる中央規律検査委員会書記として辣腕をふるう王岐山氏の活躍に期待を込めた。習近平総書記が推し進める反腐敗・反汚職の政策のカギを握る王氏が、「残された任期は3年余りで、状況をどこまで改善できるかに注目したい」と結んでいる。コラムの内容は、以下の通り。
2012年11月の第18回答大会直後に開催された一中全会で新指導部が選出され、習近平総書記を筆頭に中央政治局常務委員会常務委員(トップ7)がひな壇に並んだ。他の6名が祝賀を表す赤いネクタイをするなか、序列6位の王岐山氏ひとりが青いネクタイを締めていたのが目を引いた。王氏は、経済・金融のエキスパートであり、トップ7入り後も同分野で辣腕をふるうとみられていたが、腐敗や汚職を取り締まる中央規律検査委員会書記に就任した。当時はこうした人事に不満を持ち、敢えて青いネクタイを締めていたとの憶測があり、私もそう思っていた。
しかし、それは間違いであった。共産党政権が終焉を迎えるとすれば、幹部の腐敗・汚職により人心が離れる時だとの強烈な危機感を習近平総書記と共有し、王氏が上記書記就任に当たり、不退転の決意を表明したのではないか、と今では思う。
習近平総書記は、2012年12月に開催された中央政治局会議で共産党幹部の活動に関する8項目の規定を発表し、「三公経費」(海外・国内出張費、公務接待費、公用車経費)の抑制が指示された。2013年6月の現地調査では、三公経費抑制はそろそろ終わるとの見方と、長期化するとの見方が半々であったが、これは現在まで維持されているだけではなく、むしろ強化されている。
さらに、中央政治局常務委員会常務委員の経験者は、腐敗や汚職では摘発されないとの見方がかつては有力であった。最上層部まで腐敗していることが明らかになれば、中国共産党そのものの存在意義が問われるとの思惑による。これも7月の周永康氏の摘発により覆された。一連の動きは派閥闘争の面も否定できないが、「変われない」中国を変えようとする動きなのかもしれない。
王岐山氏は、1998年にGITIC(広東省国際信託投資公司)問題で揺れる広東省に副省長として乗り込み、同社の債務処理問題の陣頭指揮を執り、2003年には新型肺炎(SARS)で混乱に陥った北京市に市長代理として赴任し、事態の鎮静化に尽力した。あだ名は「消火隊長」「火消し役」である。であれば習近平総書記が王氏を中央規律検査委員会のトップに任命したのは、共産党員の腐敗・汚職が深刻な状況であったことの結果に他ならない。2017年の次期党大会時に引退年齢である68歳を超える王氏にとって、残された任期は3年余りである。状況をどこまで改善できるかに注目したい。(情報提供:大和総研、編集担当:徳永浩)
大和総研経済調査部シニアエコノミストの齋藤尚登氏は、中国の政権中枢にあって腐敗・汚職を取り締まる中央規律検査委員会書記として辣腕をふるう王岐山氏の活躍に期待を込めた。
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2014-09-26 18:00