ついに中国が「本格的な」住宅市場テコ入れ策を発表=大和総研の見解

 10月1日の国慶節に合わせて“国民へのプレゼント”のように9月30日に発表された中国人民銀行と中国銀行行監督管理委員会による「通知」は、2009年12月以降の住宅価格抑制策が基本的に解除されたことに等しい内容になっている。大和総研経済調査部シニアエコノミストの齋藤尚登氏は、2014年10月1日付で、この住宅市場テコ入れ策についてレポートを発表し、「中国政府による住宅市場テコ入れ策が本格化した」と注目している。ただし、この政策が奏功するかどうかは、銀行しだい。「銀行が合理的な行動をとり続ければ、今回のテコ入れ策の目玉は絵に描いた餅に終わる。反対に、強力な窓口指導が実施されれば、中国の金融の“市場化”や“自由化”には相当な困難が想定されることが改めて認識されるであろう」という見解を述べている。レポートの要旨は以下の通り。 ◆中国人民銀行と中国銀行業監督管理委員会は2014年9月29日付けで、低迷する住宅市場のテコ入れを目的とした通知を発表した(発表は9月30日)。(1)居住目的の1軒目の一般住宅を購入する家計が利用する住宅ローンについては、頭金比率を最低30%以上、ローン金利の下限は基準金利の0.7倍とし、具体的な貸出条件は銀行がリスク状況を鑑みて自主的に決定する、(2)1軒目の住宅を保有し住宅ローンを完済している家計が居住条件の改善を目的に2軒目の一般住宅を購入する際は、1軒目と同様に優遇する、ことなどが柱であり、住宅購入制限なども解除された。 ◆恐らく、住宅市場の調整が長期化し、地方政府の主要な収入源と債務返済原資である土地使用権譲渡益収入が減少し、景気が大きく下振れするリスクが高まるのを回避すべきと中央政府が判断したのであろう。 ◆今後、住宅需要が金融によってサポートされるか否かの鍵を握るのは、銀行の貸出姿勢である。中国人民銀行は、2014年5月12日に商業銀行に対して、家計の1軒目の一般住宅購入の際の住宅ローン審査を迅速に行い、状況に応じて優遇金利を付与する旨の窓口指導を行った。しかし、これは全く効果を発揮していない。銀行の調達コストが上昇するなか、住宅ローンに優遇金利を付与すれば、預貸スプレッドは一段と縮小するため、銀行は住宅ローンの提供を抑制し、住宅ローン金利を引き上げたのである。 ◆銀行が合理的な行動をとり続ければ、今回の住宅市場テコ入れ策の目玉である、基準金利の0.7倍という住宅ローンの最優遇金利は絵に描いた餅に終わる。それでもなお強力な窓口指導(行政命令)により優遇金利での貸出を強いれば、銀行のマージンは一段と低下する。後者の場合は、中国の金融は政府の関与がきわめて大きく、「市場化」や「自由化」には相当な困難が想定されることが改めて認識されるであろう。(情報提供:大和総研、編集担当:徳永浩)
10月1日の国慶節に合わせて“国民へのプレゼント”のように9月30日に発表された中国人民銀行と中国銀行行監督管理委員会による「通知」は、2009年12月以降の住宅価格抑制策が基本的に解除されたことに等しい内容になっている。
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2014-10-01 17:15