変動幅大きいが細かな利益確定を=外為オンライン佐藤正和氏

 10月に入った途端に6年ぶりとなる1ドル=110円を突破したドル円相場。9月以降大きく潮目が変わったが、果たしてこのまま円安トレンドは続くのか。11月には米国量的緩和の終了が予想され、日本でも消費税率引き上げの是非を左右する7-9月期のGDP速報値が発表されるものの、10月は大きなイベントは少ない。10月も9月同様に大きな波乱相場になるのか。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和氏に、10月相場の行方を伺った。 ――9月は一気に7円も円安が進みましたが、その背景は?  円安というよりも、ドルの独り勝ちといったほうがいいと思います。FOMCメンバーが「2015年末の政策金利の見込みを1.375%と予想している」と発言。今後のFOMCのスケジュールを考えると、記者会見があるのは今年の分を入れても、あと5回しかありません。その発言が正しいとすれば、かなり急激な金利上昇になることを意味します。そんな情報もあって、米国の長期金利が上昇。米ドルが独り勝ちしている状況を作っています。 その背景には、米国経済の統計が相変わらず順調に推移していること。とりわけ、個人消費は堅調と言っていいでしょう。小売り大手のメーシーズが、すでにクリスマス商戦用のバイトを6万人確保している、という報道があったことでもわかります。 雇用統計も、前回はややサプライズがあって非農業部門雇用者数が減少しましたが、市場にはほとんど影響がありませんでした。10月3日の雇用統計も、市場予想は21万5000人~22万人。今回も多少のブレはあっても、市場には大きな影響はないと思います。 ――日本では逆に行き過ぎた円安に警戒感も出ているようですが?  10月の日本国内でのイベントとしては、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株式保有比率拡大の正式発表などが行われる予定ですが、依然として消費が拡大せずに、消費者物価指数も日銀が目標とする2%には届いていない状況です。また、8月の家計調査では2人以上世帯の消費支出は、物価変動の影響を取り除いた前年同月比4.7%の減少となり、5か月連続のマイナスとなりました。  そうした状況から、日銀の追加緩和への期待が高まるわけですが、その一方で急激な円高に対しては経済界などからも警戒感が出てくるなど、複雑な状況になってきています。個人消費が伸びていかないのも、消費税率引き上げの影響に加えて、急激な円安が関係しているとも言われています。  とはいえ、ドル買いのロング・ポジションも溜まっており、一気にこのまま円安が進むとも考えにくいところがあります。そういう意味で言うと、ドル円の予想レンジは1ドル=108円-111円というところでしょうか。 ――「ユーロ」相場はどうでしょうか?  ユーロ圏9月の消費者物価指数が、前年同月比+0.3で、前月の+0.4%を下回りました。ユーロ圏ではインフレ率の低下が進んでいることが改めて確認されたわけです。デフレ回避が当面の課題となったために、ECBが追加緩和に踏み切るのではないかという予想が膨らみ、ユーロ売りが加速しています。 ユーロドルは一時的に1ユーロ=1.2571ドルまで下落し、2年ぶりの安値を示しています。対円でも、138円を割り込み、このユーロ安が円安にも波及しているのではないかと思われます。 ECBのドラギ総裁も「デフレ回避のための様々な用意がある」と発言していますから、早ければ今回のECB理事会で何らかの対策を打ち出す可能性があるかもしれません。仮に、今回見送られたとしても、何らかの追加緩和を含む景気刺激策を取らざるを得ないのではないでしょうか。 そうした点を考慮に入れた10月のユーロ円相場の予想レンジは、ユーロ円で1ユーロ=136円-141円、ユーロドルで1ユーロ=1.25ドル-1.29ドルというところです。 ――9月は、豪ドルが突然下がりましたが、その原因は?  一時期、豪ドルは他の通貨に比べて米ドルに対しても強かったのですが、さすがにユーロ安や円安、ニュージーランドドル安に影響されて「連れ安」したという感じです。ロング・ポジションもかなり溜まっていたことも事実ですが、資源安なども影響したかもしれません。  さらに、豪ドル安が進んだ背景には、政策金利の上昇はないだろうという予想が高まったことも影響しています。10月の豪ドル円の予想レンジは、1豪ドル=94円-98円というところでしょうか。  9月は、スコットランドの独立問題で英国ポンドが大きく売り込まれましたが、選挙結果が出たところで、元に戻ってしまいました。とはいえ、FXの投資家としては魅力ある相場だったと思います。 ――10月のトレードの注意点、ポイントは何でしょうか?  ここ一連のドル高円安は、押し目がなく一気に円安が進んだ相場になりました。イスラム国や香港の民主化デモなど、気になる地政学リスクもありますが、10月も米ドルの独り勝ちというトレンドに変わりはないと思います。  こまめに利益確定を繰り返して市場の動きを注視することが大切で、どんどんポジションを積み上げていくような積極的な投資法はリスクが高いかもしれません。為替相場はどちらの方向へも動くときは大きく動くことを忘れないことです。(取材・文責:サーチナ・メディア編集部)
10月に入った途端に6年ぶりとなる1ドル=110円を突破したドル円相場。9月以降大きく潮目が変わったが、果たしてこのまま円安トレンドは続くのか。
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2014-10-02 12:45