ドル・円は上昇基調を継続し1ドル=112円をめざす=外為どっとコム総研

ドル/円は9月に急激な上昇局面を迎え、1ドル=110円の大台を突破した。その後、108円台に下落するなど波乱の展開になっている。外為どっとコム総合研究所の取締役調査部長兼上席研究員、神田卓也氏は、当面の外為市場の見通しとして「基本的な流れはドル高・円安で変わっていない。日米の金融政策の違いを踏まえて冷静な対応を心がけたいところ」と語っている。(写真はサーチナ撮影)
――ドル/円は、8月に動意付いたところから一気に上昇が始まり、10月1日には一時的に110円台の大台を突破しました。これが一転して2日には108円台の前半に下落するなど、値動きが激しい展開になっています。今後の見方は?
10月1日、2日の値動きは、投機的な資金が出入りした影響を強く受けていると考えられるため、中期的な相場への影響という点ではあまり気にする必要はないでしょう。むしろ、値動きが激しくなっているだけに、日米の金融政策の違いを踏まえて冷静な対応を心がけたいところです。
米国は、量的金融緩和策の終了へ向けた取り組みが粛々と進み、来年の年央にも利上げが検討される段階を迎えています。一方、日本は今年12月に迎える消費税の再増税の実施か否かの決定を前に、一段の金融緩和が実施されるのではないかという観測があります。少なくとも、日銀は目標とするインフレ率を実現するために2016年半ばまでは金融緩和姿勢を崩さないと考えられます。このような日米の金融政策の方向性の違いから、基本的にドル高・円安の流れは今後も続くと見ており、これがベースになる考え方です。
そして、ドル/円の値動きは、米国の経済状況に敏感に反応しています。米FRBのイエレン議長も金融政策は経済状況しだいと繰り返し述べているように、来年の利上げのタイミングは米国の雇用統計やインフレ率の動向で推し量れる経済状況しだいです。経済の好調を示す経済指標が発表されれば、米国の利上げがより現実化してきたという見方が強まりドルが一段と値上がりするでしょうし、反対に、景気が弱いことを示す指標が発表されると、ドルが売られて下落します。そして、経済指標を確認しながら一進一退を繰り返しながら、徐々に下値を切り上げてドルが値上がりしていくことになると考えます。
さすがに、9月のように1カ月間で7円以上も動くような激しい動きは収まってくると思います。年末に向けて1ドル=112円を目指すというのが基本に想定しているシナリオですが、思いのほか強い経済指標が続いた場合は、112円を抜けて115円を目指す可能性はあります。
一方、ここから注意したいこともあります。ひとつは、11月の米中間選挙です。現在、米国の下院は野党である共和党が過半数を占めていますが、中間選挙の結果、上下両院で共和党が多数派となれば、米国の政策運営が滞る懸念が高まり、ドル安要因に働くと思います。
また、日銀の追加緩和に対する期待が剥げ落ちた場合は、円の買い戻し要因となってドル安に動く可能性があります。日銀の黒田総裁は、いまのところ追加緩和に対しては否定的な態度をとっていますが、消費増税決定の援護射撃として12月前に追加緩和に動くとの観測が根強く残っています。10月や11月の黒田総裁の発言などで、追加緩和について強く否定する言葉がでてくると、市場は動揺する可能性があります。
このようなドル安・円高要因が重ねて出てくるようなことになると、1ドル=105.50円程度への下押しもあると思います。この水準は、今年の上昇分(1ドル=100.75円から110円まで)の2分の1押しの水準になります。
――ユーロ/ドルは、なかなか下げ止まらず一時的に1ユーロ=1.26ドルを割れる水準にまで下落しましたが、今後の動向は?
ユーロとドルの関係は、円とドルの関係に似ています。基本的には、金融緩和を続けるECBと利上げをめざす米FRBという構図なので、ユーロ安・ドル高のトレンドです。ただし、9月の動きをみていると、ユーロ/円は値上がりしています。一方的なユーロ安局面にかげりが出てきたといえると思います。
たとえば、ECBが欧州各国の国債を購入することはハードルが高く、これ以上の利下げもできないということで、ECBの金融政策に手詰まり感があります。また、ユーロ圏はドイツの圧倒的な経常黒字によって域内にデフレ圧力が高まっていて、これらがユーロ高要因に働き、ユーロの下落を下支えすることにつながります。
一方、現在のユーロを、かつての円に似ているという見方があります。デフレの中で円高が進み続けたようなイメージに重ねた見方です。ただ、日本でもデフレから円高が進むまでにはタイムラグがあったので、ユーロが日本化するとみても、ユーロ高ドライブがかかるのは、もう少し時間を経てのことだと思います。
したがって、当面のユーロ/ドルは、1ユーロ=1.23ドル-1.20ドルを目指す下落局面にあるとみます。米国経済が意外と弱いということになれば、1ユーロ=1.30ドル程度へのユーロの買戻しも考えられますが、1.30近辺は相当上値が重いとみます。当面は、1ユーロ=1.23ドルから1.29ドル程度の間の値動きを予想します。
――その他、注目されている通過ペアは?
現状はドルの一人勝ちの状況ですが、このドルに並び立つ存在として期待できるのは、ポンドです。英国の景気回復は進んできていて、米国に先駆けて利上げに転じる期待があります。来年の第1四半期にも英国は利上げする可能性があり、そうなると、年央にも利上げといわれているドルよりもポンドの方が強くなる可能性があります。
ポンド/ドルでは、お互いに強い通貨どうしになるのですが、円やユーロという弱い通貨と組み合わせて考えると、見通しやすくなります。外為取引においては、最強の通貨を買って、最弱の通貨を売るという組み合わせに妙があります。
今後、利上げ期待が高まれば年内に1ポンド=182円程度の高値の期待が持てます。その利上げを見通す上で注意すべきは、英国のインフレ率の動向です。8月の消費者物価指数は前年比1.5%でしたが、BOEが目標とする2%に近付けば利上げ期待が高まるといえます。反対に、インフレ率が低下すれば利上げ期待が遠のき、1ポンド=172円程度の安値に下落する可能性があります。(編集担当:徳永浩)
ドル/円は9月に急激な上昇局面を迎え、1ドル=110円の大台を突破した。その後、108円台に下落するなど波乱の展開になっている。
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2014-10-03 12:30