【MSカンファレンス】円安・インフレの環境に対応する投資戦略

モーニングスターは2014年1月11日、東京・港区のホテルオークラ東京で「モーニングスターカンファレンス2014」を開催し、500席の会場が満席になる盛況だった。カンファレンスのテーマは、「2014年 世界経済の展望と投資戦略」。モーニングスター代表取締役社長の朝倉智也氏が「新しい時代に向けた資産運用法」という基調講演を行い、世界的な低金利の中で円安基調となった投資環境の中で、資産運用を考えるポイントを解説。フィデリティ投信、三菱UFJ投信、シュローダー・インベストメント・マネジメントの3社が、運用会社の立場から世界経済と投資戦略について講演した。
■「円安・インフレ」で「投資をしなければならない時代」
モーニングスターの朝倉氏は基調講演で、「低金利で資産運用には厳しい時代を迎えた」と語り、昨今の運用環境の変化を、「円高・デフレから円安・インフレの時代への転換」と解説。「投資をしなければならない時代が訪れた」と指摘した。そして、運用を考える場合、2008年のリーマンショックに代表されるような市場の大きな変化が、2年-3年おきに突発しているという「激動するマーケット」という現実を見据え、「分散投資をし続ける勇気と忍耐力を持って投資に臨んでほしい」と語っている。
また、具体的な投資のヒントとして120兆円あまりの公的年金資金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用方針の見直しを検討していることを引き合いに、「GPIFは従来の運用ポートフォリオで60%を占めていた日本国債を中心とした国内債券での運用比率を落とし、代わりに、株式等の運用比率を高めようと検討している。運用の大きな流れとして『リスクオフ』から『リスクオン』という転換が図られつつある」と語り、分散投資を考える際の参考になるとした。
さらに、具体的な投資先を選ぶにあたっては、新興国の株式は経常収支が赤字になっている国には厳しい目が向けられているので、短期的には新興国の投資比率を抑える、または、新興国への投資では選別投資することが重要。新興国債券への投資でも、現地通貨建ての債券を選ぶのではなく、ドル建ての債券に投資した方が安全など、具体的な注意喚起を行った。「ただ、中長期的には新興国には強気の考え方で良いと思うので、投資する目的・期間によって、具体的な投資対象を絞り込みたい」とした。
■2014年-15年は先進国の株式にチャンス
フィデリティ投信の商品マーケティング部長、太田創氏は、「グローバル経済動向と今後の見通し」をテーマに講演し、「2014年-15年は、相場を支える資金の流動性は潤沢で、日米欧の金融政策の方向性も見通しやすく、投資環境としてはわかりやすい時期を迎えている」と解説した。
太田氏は、「IMF(世界通貨基金)のラガルド専務理事が、2014年と15年の世界のGDP成長率の予測を近く上方修正すると語っている。IMFの上方修正によって、世界経済の見方が一段とポジティブなものになるだろう」と語った。また、米国の株価見通しは、「個人消費(小売売上)、企業収益が順調に拡大する中、雇用、住宅にも改善傾向が出てきていることから、基本的に上昇局面に入っている」とし、「今後は、米国企業の1株当たり利益(EPS)の伸びを反映した上昇相場になることが期待される」と見通す。
また、欧州株は、「本質的な経済危機は去っていないものの、相場の材料としては危機は去ったと考えられ、出遅れ・割安感が強い」と指摘。日本株についても「2013年に大幅な値上がりになったものの、依然として割高感はない」と語り、「2014年-15年は先進国の株式にチャンスがある。債券は、利回りを重視した運用では社債やハイイールド債に魅力が高まる。為替は債券発行が活発な国の通貨が売られる傾向が強まり、円安基調は続くだろう」と見通した。
■日本株はバブル以降で最高の収益力で日経平均2万円へ
三菱UFJ投信常務取締役の加田信也氏は、「2014年の日本株、Jリート市況」をテーマに講演した。「20年間にわたって裏切り続けた日本株だが、2014年は強気で見て良い」とし、その背景に「日本企業の収益力が大きく改善している。一般にアベノミクスで株価が上がっているといわれるが、本当のところは、アベノミクスは日本企業の変革を評価するきっかけに過ぎなかったのではないか」と語った。
その企業収益については、「2013年度に50%増益を達成した後にも、14年度、15年度と2ケタ増益を続け、日経225のEPSは2013年度979円が、15年度には1246円に高まるだろう。2014年後半に15年度の企業収益を織り込みに行く際、PER16倍で評価すれば、日経平均株価の2万円は十分にある。2013年に大幅に値上がりした日本株価だが、相場はまだ若く、一段高に進むことが考えられる」と見通す。
さらに、「J-REITが本格的な上昇局面に入った」と語った。2020年の東京オリンピックに向かって都市開発が進むと考えられることに加え、都心オフィスビルの空室率が低下していること。賃料の底打ち感が強まっていることなどが強気になれる背景とした。
■不確実性が高まる市場環境で「資産配分おまかせ型商品」
シュローダー・インベストメント・マネジメントのプロダクト推進部株式・マルチアセット担当部長の福澤基哉氏は「2014年 新しい資産運用のご提案」というテーマで講演。「世界の株式市場には、上下に大きく変動する局面があり、近年、その頻度が高まっている。その結果、市場で大きく値上がりする資産はめまぐるしく変化し、『資産配分おまかせ型商品』への関心が高まっている」と語った。
そして、同社が運用する「シュローダー・インカムアセット・アロケーション(愛称:グランツール)」を紹介。世界中の債券や高配当株式などインカムが期待される資産に投資し、市場環境に応じて柔軟に資産配分を変更することで安定的に運用成果をめざす仕組みについて解説した。(編集担当:徳永浩)
モーニングスターは2014年1月11日、東京・港区のホテルオークラ東京で「モーニングスターカンファレンス2014」を開催し、500席の会場が満席になる盛況だった。カンファレンスのテーマは、「2014年 世界経済の展望と投資戦略」。(写真は、カンファレンスの様子。サーチナ撮影)
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2014-01-11 20:15