【中証視点】適度な人民元安が通貨政策調整の圧力を軽減

  欧州債務危機の解決策が見つからない中、ドル強勢や中国経済の減速なども相まって、一時的な人民元安に突入するとの見方が市場に受け入れられつつある。人民元の切り下げ予想は一部の国際短期資本の流出を招くものの、輸出の促進、インフレ期待の安定、受動的な資金放出の減少などの面からすれば、適度な人民元安と切り下げ予想は通貨政策の調整の圧力を緩和するのにプラスとなる。現在、板ばさみの状態にある通貨政策にとっては明るい材料になり得る。6日付中国証券報が伝えた。   この度の人民元切り下げ予想の高まりは内外要因の影響によるものである。米ドルの強勢は年内一杯続くと見られ、人民元には引き続き下落圧力がかかるものの、人民元相場が既にバランスの取れた水準に極めて近づいていることから、実際の通貨下落と切り下げ予想は暫定的で穏やかなものであるという特徴がある。事実、他の新興市場の通貨に比べ、人民元相場は比較的安定している。ノンデリバラブル・フォワード(NDF)の価格から見ても、2008年の世界金融危機以降の人民元対米ドル相場に比べ、現在の切り下げ予想ははるかにおとなしい。   周知のように、切り下げ予想は国際短期資本の流出を招き、資本市場にとっては打撃となる。しかし、現在の中国の全体的な経済情勢を合わせて考えた場合、通貨下落と切り下げ予想が比較的穏やかな状況の中でもたらされるメリット、特に通貨政策の調整にとっては、プラスとなることのほうが多いと見られる。   現在の中国人民銀行(中央銀行)の通貨政策の調整は板ばさみの状況にあると言える。一方では、「経済の安定的成長の維持」には、通貨政策の調整のよるさらに多くの支援が欠かせない。第2四半期、中国の国内総生産(GDP)成長率は3年ぶりの低水準だった。7月の製造業購買担当者指数(PMI)の個別項目・新規輸出受注指数の下げ幅は例年よりも際立って大きく、欧州債務危機による外部需要の落ち込みが中国の輸出に与える影響が小さくないことがわかる。欧州債務危機の根本的な解決手段は依然見つからず、加えて中国の人口ボーナス期がターニングポイントに差し掛かっているなどのマイナス要因により、中国の経済成長は今後も多くの課題に直面すると見られ、経済の安定的成長の維持に向けた通貨政策によるバックアップが引き続き必要である。   また一方では、膨大なマネーストックが「ダモクレスの剣」にように頭上にぶら下がっていることによって、政府は流動性を放出するにも細心の注意を払わなければならない。2011年末現在、中国のGDPに対するM2(広義のマネーサプライ)の割合は1.808の高水準に達しており、既に現金化が完了している先進国、日本の1.723よりも高いだけでなく、同じように現金化を進めている最中の発展途上国、ブラジルの0.39をも上回る。そのため、巨額のマネーストックは依然活用の余地があると同時に、通貨政策の緩和の度合いをしっかり見極めることが重要である。   このような状況下、適度な人民元安と切り下げ予想はベストタイミングであると言える。第一に、適度な人民元安は企業の輸出競争力を引き上げ、輸出の促進につながり、通貨政策の圧力を緩和することができる。更に、中央銀行がインフレ期待を管理することにもプラスになる。消費者物価指数(CPI)の前年同期比上昇率が1―3%に保たれている時、物価環境全体が投資と消費を促進するのにより有利になるとの見方がある。ここ数カ月、経済成長が鈍化するにつれ、中国がデフレに突入するとの見方が日に日に強まっている。適度な人民元安は輸入価格を引き上げ、デフレ予測のまん延を抑えうることに効果的である。   そして、もう一点注目したいのは、穏やかな切り下げ予測によって、国際資本が流出するものの、規模は依然コントロール可能な範囲内であると言うことだ。これは外貨購入に伴う自国通貨の放出額からも証明できる。中国の外貨購入に伴う自国通貨の放出額は5月が234億元、6月が491億元で、例年の同じ時期に比べ大幅に縮小している。人民元相場の双方向の変動、通貨の切り上げ予測・切り下げ予測が市場で主導権に握りつつあることで、今後の外貨購入に伴う自国通貨の放出はさらに安定する。そうなれば、中央銀行の通貨政策の調整の自発性、有効性も各段に高まることが予想される。(編集担当:陳建民)
欧州債務危機の解決策が見つからない中、ドル強勢や中国経済の減速なども相まって、一時的な人民元安に突入するとの見方が市場に受け入れられつつある。
china,industry
2013-12-12 13:45