雇用統計悪化もドル高傾向は変わらず? =外為オンライン・佐藤氏

 予想に反して1月10日に発表された米国雇用統計が大きく悪化したものの、市場の動きは限定的だった。シェールガス革命で貿易収支を急速に改善するなど、このところ米国経済の好調さが目立つ。その一方で、年が明けてからの株式市場は、ニューヨーク市場の調整が目立ち、日本株も年末の勢いを取り戻せない状況だ。1ドル=105円の壁が立ちはだかるドル円相場だが、1月相場はどんな展開になるのか。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和氏に1月相場の動向を伺った。(写真はサーチナ撮影) ――米国の雇用統計が思いのほか悪かったようですが?  12月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比7万4000人増と市場予想の19万6000人を大きく割り込んでしまいました。11年1月以来、3年ぶりの小幅な上昇にとどまってしまいましたが、寒波の影響による一時的なものと考えて良いと思います。この結果からテーパリング(緩和縮小)が遅れるということはないとみています。  テーパリングが進行すれば、トレンドしては株安、円高要因となるわけですが、雇用統計の悪化によってテーパリングの進行に支障があるようなことにはならないと思います。とはいえ、ドル円相場が年末のような勢いで1ドル=105円を突破して、一気に110円とか120円にまで進行するかというと、その可能性は低いんじゃないでしょうか。  さすがに1ドル=120円といったレベルまで円安が進んでしまうと、自国の輸出を増やそうとしている米国が黙っていないでしょう。また、テクニカル的にも実はドル円相場はやや「達成感」が出てきています。目先、天井をつけた、ということです。 ――ドル円市場の1月の予想レンジは? バーナンキ議長の任期が切れますが、影響は?  もともと一目均衡表などテクニカル的に見て、105円台中央というのは大きな意味を持っていたんです。たとえば、テクニカル指標の中に「フィボナッチ・レシオ」というのがありますが、その「戻し」の61.8%にあたる水準が105円49銭でした。  年末年始のドル円相場はその高値を付けており、この達成感を超えてさらにドル高円安が進むためには、何らかのエネルギーが必要かもしれませんね。ただ、1月はFRBのFOMCが1月28日、29日とあり、そこでバーナンキFRB議長が任期を終えて、2月からはイエレンさんが新規のFRB議長になります。  イエレン議長誕生直後の2月7日には米国政府の債務上限問題が控えるなど、下手をすると一波乱はあるかもしれません。それらの要素を加味して、ドル円の1月のレンジは1ドル=102円-106円とみています。 ――一方のユーロですが、ずっとユーロ高が続いています。  ユーロについては、ECB(欧州中央銀行)の総会でも金利が据え置かれたように、低インフレ率、高い失業率など懸念材料はいくつかまだ残っているものの、ここ数ヶ月のトレンドは「ユーロ高」といって良いと思います。  とりわけ、円に対しては年末にかけて大きく上昇。瞬間的に1ユーロ=145円台をつけるなど、ユーロ高が目立っています。この背景には、ECBのドラギ総裁が「ユーロ安定のためには何でもやる」という発言を繰り返していることもあり、ユーロ圏に資金が流入しているためと考えられます。金利も4%台と高いこともあり、この傾向はもうしばらく続くと思います。  1月のレンジとしては、ユーロ円が1ユーロ=139円-144円、ユーロドルでは1ユーロ=1.34ドル-1.38ドルと予想します。ギリシャやスペインもまだ完全に安心というわけにはいきませんが、かなり落ち着いてきたことは間違いないでしょう。 ――豪ドルの動きがこのところさえませんが?  オーストラリアの中央銀行に当たる「RBA(オーストラリア準備銀行)」関係者が、盛んに豪ドルが高すぎると発言してきましたが、対ドルでは徐々に1豪ドル=0.88ドルのレベルに戻りつつあります。  ただ、中国経済への懸念や資源価格の下落などで、豪ドルは以前のような強さは難しいと思います。ドル高円安のトレンドも加わって、1月の豪ドルのレンジは1豪ドル=92円-95円と狭いレンジでの動きになりそうです。一時期、注目された豪ドルのブームも「いまは昔」という感じです。 ――日本は年明け以来、株式市場があまりさえません。FX投資で注意したいことは?  いよいよあと3ヶ月で消費税率が8%に引き上げられ、アベノミクスも正念場を迎えようとしています。市場が日銀に対して追加緩和を要求してくる可能性もあります。ただ、昨年のような急激な円安は、今後はあまり望めないと思います。  結局、鍵を握るのは株式市場、それも日本市場というよりもニューヨーク市場次第のところがあります。1月から2月にかけては、各企業の業績の行方に注目する必要があると思います。日本企業も、今後は業績で良い数字が発表され、株価が上昇して為替も円安に振れてくる場面があるかもしれません。  いずれにしても、今年のFX投資では先行き不安定な部分もあるので、細かく利益確定していくほうが良いでしょう。通貨は、やはり「ドル円」が中心になると思います。そのときにボラティリティの高い主要通貨に注目するのが基本です。(取材・文責:サーチナ・メディア編集部)
予想に反して1月10日に発表された米国雇用統計が大きく悪化したものの、市場の動きは限定的だった。シェールガス革命で貿易収支を急速に改善するなど、このところ米国経済の好調さが目立つ。その一方で、年が明けてからの株式市場は、ニューヨーク市場の調整が目立ち、日本株も年末の勢いを取り戻せない状況だ。1ドル=105円の壁が立ちはだかるドル円相場だが、1月相場はどんな展開になるのか。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和氏に1月相場の動向を伺った。(写真はサーチナ撮影)
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2014-01-14 11:15