直近市場変更株は「勝ち組」人気の継続に「敗者復活戦」の上乗せも期待して要注目=浅妻昭治
<マーケットセンサー>
19勝7敗である。前週23日に今期業績を上方修正して週末の24日に株価が前日比プラス(勝ち)で引けた銘柄が、19社、マイナスで引けた(負け)銘柄が、7社であった。これに前日比変わらずの3社、商いが出来ずの2社を加えると、勝率は、約61%となった。
この勝率を上出来ととらえるか物足りないとするかは、評価の分かれるともろだろう。強気のブル派は、日経平均株価が、300円も下げて300円も戻すなどという荒い値動きを半月近く繰り返しているなかで、ようやく相場の芯として企業業績をポジティブに買い進む動きが表面化したと歓迎するはずだ。一方、弱気のベア派は、本来、サプライズになるはずの業績上方修正が、逆サプライズとなっていることに目くじらを立てるに違いない。これは、3月期決算会社の第2四半期業績発表の序盤で、ローム <6963> 、東京製鐵 <5423> 、安川電機 <6506> などが、上方修正しながらも上値が伸びきれず安値で大陰線を示現するケースが相次いだことで余計にナーバスとなっている。
ポジティブ思考、ネガティブ評価のどちらに軍配が上がるか難しいところだが、その実態は、両者の中間にあるとする見方もできる。業績の上方修正を取りあえずは買ってはみるが、後続の買い物が入らないなら長居は無用とばかりに「用心深く」、「おっかなびっくり」対応しているのが市場マインドともみえる。今週の東京市場は、なおこの「用心深く」、「おっかなびっくり」のムードが続くとみざるを得ない。東京市場と同様に激しくアップダウンを繰り返した米国市場で、NYダウ工業株が、幸いなことに前週末24日に127ドル高と続伸して引けたものの、28日~29日開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)以降の米国金融情勢の見極め、欧州・中国景気の先行き不透明化、さらにはエボラ出血熱の2次感染拡大リスク、「イスラム国」関連のテロ続発不安などを前に海外市場の「写真相場」としてなお波乱展開の目が残っているからだ。
今回、当コラムで取り上げる直近に市場変更をした銘柄も、この「用心深く」、「おっかなびっくり」が反映されたセクターであった。市場変更株は、新興市場から東証第2部市場、2部市場から東証第1部市場にそれぞれ昇格し、これに伴って知名度も株式流動性も高まることから買い材料として歓迎されてきた。とくに東証1部銘柄に市場変更された銘柄は、東証株価指数(TOPIX)に算入されることで指数連動型のファンドなどの買い需要が発生することが、需給思惑を刺激した。市場変更承認とともに実施する新株式発行・株式売出しにさえそれなりに注意すれば、「市場変更=買い」の投資セオリーが成立してきた。
ところが、今年9月1日以来、東証1部に市場変更された19銘柄のうち、市場変更日の終値を現在も上回っている「勝ち銘柄」は、7銘柄にとどまり、実に12銘柄が変更日の終値を下回る「負け」となっている。これは、同時期に新興市場からと東証2部市場に市場変更された5銘柄も含めても変わらない。「負け銘柄」はさらに17銘柄に悪化し、勝率は29%に低下する。
また上場会社サイドでも、市場変更は一大イベントとなるはずだが、このイベント事情も様変わりしているようだ。当コラムで何回も繰り返した「IPOは3回おいしい」というのが、上場会社がIPOした当初の目論見のはずであった。新興市場へのIPOで1回目、新興市場から東証2部への市場変更時に2回目、東証2部から1部への指定替え時に3回目のそれぞれ新株式などを発行して資金を調達し財務戦略を強化、合わせて株式売出しも実施して創業者利潤もガッチリ確保するなどの数多くのメリットがあったはずなのである。ところが今年9月1日以来、東証2部への市場変更株を含めた全24銘柄では、何らかのファイサンスを伴ったのは6銘柄と少数派にとどまり、ここでも市場の常識は有名無実化している。
従来の投資セオリーが、やや変質を迫られていることは注意を要するが、市場変更株は、まったく投資魅力に欠けているかといえばそうでもない。昇格を実現しただけに、株価変貌を示唆してくれる素地は備えている。「勝ち組」グループが上値を追うのはもちろん、「負け組」銘柄でも、その素地を精査すれば逆張りの「敗者復活戦」を展開する余地が生まれてくるはずで、ぜひアプローチしたいところである。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
19勝7敗である。前週23日に今期業績を上方修正して週末の24日に株価が前日比プラス(勝ち)で引けた銘柄が、19社、マイナスで引けた(負け)銘柄が、7社であった。
economic
2014-10-27 13:45