米経済指標に反応する米ドル主導相場が年末まで続く=外為どっとコム総研

日銀の予想外の金融政策変更によって1ドル=114円台へと大きく進んだドル高・円安相場の今後の行方について、外為どっとコム総合研究所調査部研究員、石川久美子氏(写真)は「年末に向けて、米国の経済指標の内容に一喜一憂するような神経質な相場が続く」と見通している。「基本的な流れとして、ドル高の方向性に変化はないのですが、次のFOMC開催が12月まで間が空き、相場の方向性を見極める決定的な指針が出てこないため、その時々の手がかりに小刻みに反応する動きになりやすい」と語っている。(写真は外為どっとコム総研研究員の石川久美子氏、写真撮影サーチナ)
――日銀の量的金融緩和の拡大決定を受けて、ドル/円は1ドル=114円台にまで駆け上がりました。1ドル=110円の心理的な壁を一気に払ったような動きになりましたが、今後の動向をどのように考えますか?
日本は追加緩和を行ってしまいましたが、米国に来年半ば頃の利上げ開始期待があることを考慮すれば、中長期的にドル高・円安の方向に進むという基本的な見方として変わりません。ただし、ここまで急激に円安・ドル高が進んでしまったことを考えると、一服後は一度深めの押し目を付ける可能性があり、注意が必要と見ています。
とはいえ、押し目を付けた後は、年末に向かって米国の経済指標を確認しながら、米国の利上げの時期を窺うような相場になってくると思います。現在のところ、米国利上げ開始の時期としては引き続き2015年半ばという見方が大勢を占めていますが、これが早まると思えるほどに強い経済指標が重なれば、ドルが一段高に進むことになります。ただし、逆に経済の回復速度が鈍っていることを示す指標が続けば、利上げ時期を後ろに倒すだろうという見方が広がり、ドルが一旦売られることもあり得ます。
10月のFOMCでは大方の見通し通り量的緩和の終了を決定しました。次のFOMCは12月半ばまで待つ必要があります。この間、雇用統計が2度発表され、サンクスギビングデイの連休もあります。それを考慮すると、11月のドル相場は比較的ゆっくりとした展開になると考えられます。
ドル/円に関しては、月初の円安の流れが一服した後、さらに上昇が続くかどうかはドル買いが強まるかどうかに掛かっていると見ています。
――ドル安・円高に振れる可能性は?
ドル/円のここまでの上昇はあまりにも急激なものでしたから、調整安局面が訪れる可能性は十分にあります。12月に決断するといわれている日本の消費税の増税について、政府サイドから予定通り行うという方針が示されれば、株安・円高という動きが起こるかもしれません。円安のピッチが速すぎるとして、輸入企業に対する政治的な配慮から、円安をけん制するような発言が日本の政府関係者から出てくる可能性はあります。
ドルが大きく下落するような局面は、想定しにくいのですが、FOMCメンバーの中でもハト派の方のコメントが目立ったり、米国の経済指標に冴えないものが続けば、売り優勢となる可能性があります。
当面の想定レンジは1ドル=109円-117円で考えています。
――ユーロ/ドルでは、ユーロ安が続いていますが、1ユーロ=1.26ドルを割り込んできたユーロの先行きは、どのように考えていますか?
ユーロが一段と弱くなる流れが続いていると思います。ユーロ圏の経済は依然として弱く、追加の金融緩和策が必要だと考えられています。また、昨今の動きを丁寧に見ていくと、たとえば、ドイツの経済指標が良い内容であったとしてもユーロ買いの反応が薄く、その直後に、ドイツの地方景気が思わしくないという悪い材料が出ると、それを受けてユーロが売られるというような展開です。市場は「ユーロを売る材料を探している」というような状況になってしまっています。
ただ、米国発の材料は、先ほどドル/円の見通しで述べたとおり、経済指標の発表待ちなので、中立の状況といえます。ユーロ/ドルは、今年5月に1ユーロ=1.39ドルの水準から、10月には1ユーロ=1.25ドルまで急激な値下がりになりました。これは、ユーロの金融緩和期待と、米国の量的金融緩和終了の期待という2重のユーロ安要因が重なったことによるユーロ安のスピードです。今後は、米ドル側からユーロを押し下げるような材料が出てきにくいため、スピード感は鈍くなると思います。
当面の予想レンジは、1ユーロ=1.215ドル-1.28ドル程度と考えています。ユーロの先行きは弱く、ユーロ安の反動があったとしても1.28ドル程度まで。ただし、下げのペースもこれまでほど速くはなく、ジワジワと下値を切り下げる形になりそうです。
――その他、注目する通貨ペアはありますか?
現在の相場は円売り主導ですが、日銀の追加緩和の衝撃が収まれば、米ドルを中心に動く相場に戻ると見ています。従って、対ドルでの取引をするのが一番素直だと思っています。ただし、資源国通貨や新興国通貨よりも、ドル/円、ユーロ/ドルの方が金融政策の次の一手が見えやすいという点でとても素直に取引できそうな状態のため、他の通貨をあえて取引しなくても・・・というのが正直な感想です。
ただ、その中で、あえて妙味のある通貨ペアを取り上げるとするとするならば、「NZドル/米ドルの売り」があるかと見ています。
NZドルについては、NZドル高をけん制する要人発言が相次いでおり、かつ現在の経済情勢から、ニュージーランドに利上げの選択肢が後退してしまっています。引き続きNZ政府はNZドルを一段と押し下げたいという思惑があるようで、ジョン・キー首相やNZ中銀のウィーラー総裁は機会があればNZドル高をけん制する発言を行っています。これまででしたら、利上げの期待もありましたから、要人発言がNZドルの水準を押し下げる効果は小さかったのですが、ここへきてインフレ率も低下して利上げ期待も後退したことから、要人発言がNZドル安につながりやすい構造になってきました。
ユーロ/ドルがECBの金融緩和と、米FRBの量的金融緩和の終了というダブルエンジンで下げを演じてきたように、NZドル/米ドルにもNZドル高けん制発言と米金融政策というダブルエンジンで、NZドル安が進む素地があります。
2013年後半の下値を支えた0.7680ドルを割り込めば、2012年の下値を支えた0.7450ドル台まで下げ余地が拡大するものと見ています。上値は今年7月の1NZドル=0.88ドルから下落したことに対する戻り相場になりますが、10月高値の0.8034ドルを超える反発は難しいと考えています。(編集担当:徳永浩)
日銀の予想外の金融政策変更によって1ドル=114円台へと大きく進んだドル高・円安相場の今後の行方について、外為どっとコム総合研究所調査部研究員、石川久美子氏(写真)は「年末に向けて、米国の経済指標の内容に一喜一憂するような神経質な相場が続く」と見通している。
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2014-11-06 09:30