11月も続く?米ドルひとり勝ち相場 外為オンライン佐藤正和氏

米連邦準備理事会(FRB)は、29日開催したFOMC(連邦公開市場委員会)で量的緩和第3弾(QE3)の終了決定を発表。いよいよ金利引上げ=金融正常化に向けて第一歩を踏み出したと言っていいだろう。さらに、その直後の10月31日に行われた日本銀行による追加緩和は、市場に大きなサプライズを与えた。マネタリーベースの拡大やETF買取りの拡大が盛り込まれ、一気に円安が進んだ。為替相場の関心は、今後米国利上げの時期になるわけだが、11月は米国の中間選挙、日本では消費税再増税に大きく関わる7-9月のGDP速報値発表など、大きなイベントも控えている。そんな11月の為替相場はどう動くのか。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和氏に相場の行方を伺った。
――QE3終了後大きくドルが買われましたが、今後の展開は?
QE3終了そのものは、すでに予想されていたことであり驚きはありませんでしたが、FOMCが出した声明の中の労働市場に関する表現方法がこれまで「労働資源の著しい活用不足」といった強い表現だったのが、「活用不足が徐々に解消されつつある」という柔らかい表現に変わりました。これが、早期の利上げが示唆されたのではないかとしてドルが買われたわけです。
米国経済は、景気の先行きに対して不安を抱かせる指標が続けて発表されたために、10月15日に株価が大きく下落して、ドルも売られたわけですが、その後に発表された景気指標はどれも良い数字でした。QE3終了の発表によって、債券の金利が上昇し、ドルも買われたわけです。
米国を震源地とする経済危機が起こりリーマン・ショックとなったわけですが、やはり非伝統的な金融緩和が功を奏して、米国経済が真っ先に回復したということだと思います。今後、半年程度の時間をおいて、株価の動向や新興国の為替などの動きを見ながら、利上げに踏み切るのだと思います。
11月は中間選挙があり、予想では共和党勝利が優勢になっています。これまでねじれていた上院と下院でねじれが解消されて、オバマ大統領との間はますます悪化しますが、米ドル買いは続くのではないかと考えています。
――日本銀行の追加緩和、そして消費税再増税の影響は?
10月31日に行われた日本銀行の再増税は、為替相場に大きなインパクトを与えました。大半の市場関係者が予想していなかったために、マーケットにはサプライズをもたらしたようです。長期国債買い入れを年間80兆円まで拡大させる量的金融緩和の実施は、まさに「黒田サプライズ」と言っていいかもしれません。ETFやREITの買い入れを現在の3倍にまで拡大。さらにJPX400の買い入れも追加しました。こうした金融緩和策は、当然円安の加速を促すことになります。
その一方で、消費税増税の決め手となるGDPの7-9月期の速報値が11月17日に発表されます。悪い数字が予想されており、消費税率を8%から10%に上げて再増税に踏み切るかどうかです。「再増税しない場合のリスクが大きく、対応のしようがない」と黒田日本銀行総裁の発言もあり、再増税ありきのシナリオは崩しようがないと思います。
ただ、17日前後の為替市場は、思惑買いや思惑売りが交錯して変動幅の大きなマーケットになる可能性があります。最近は、安倍政権のブレーンのメンバーの中にも消費増税延期を主張する人が多く多くなっており、安倍政権は難しい判断を迫られそうです。特に、GDP速報値が予想を上回る悪化の方向に動いたときは、増税見送りと予想されて株高、円安、債券安に振れる可能性があります。
米国経済の好調なども考慮に入れると、11月の米ドル円の予想レンジは、1ドル=111円-116円というところでしょうか。116円を突破して行くようなことになれば、もう少し円安が進むかもしれません。
――「ユーロ」相場が揺らいでいますが、今後の展開は?
量的緩和が終了した米国に比べて、欧州の景気は相変わらず厳しい状況です。G20でもECBに追加緩和を求めていましたが、ドイツが相変わらず財政の規律を求める中で、追加緩和に同意しない状況が続いており、欧州経済の悪化をどう食い止めるかが注目されるところです。
日銀が追加緩和に踏み切ったことで、ECBにも緩和圧力がかかると見ています。国債の買い入れを含む「量的緩和を」実施する可能性が高まったと思われます。
加えて、ロシアとの関係悪化なども影響して、金利が下落。金融市場では、ユーロを売ってドルを買い、そのドルで米国債が買われている、という状況が続いています。ECB理事会が11月6日に行われますが、追加緩和策は打ち出せないんじゃないでしょうか。
ユーロ関連の予想レンジとしては、ユーロ円が1ユーロ=140円-145円、ユーロドルは1ユーロ=1.24ドル-1.28ドルというところでしょうか。
――資源価格の下落が大きくなっていますが、豪ドルへの影響は?
豪ドルは、資源価格の下落などで対米ドルでは大きく売られています。資源価格の中でも、原油価格の大幅下落が大きく、クルマ社会の米国にとっては減税したのと同じような効果を出していると言われています。
11月21日の「ブラックフライデー」の結果を見ないとわかりませんが、米国の消費は力強く、そういう意味でも米ドルのひとり勝ちの状態は今後も続くことになるはずです。豪ドルが対米ドルで売られ続けてしまうのは仕方がないのかな、と考えています。
一方で日銀の追加緩和によって、対円では豪ドルも買われています。11月の豪ドル円のレンジとしては、1豪ドル=94円-98円というところでしょうか。
――11月相場のトレードの注意点、ポイントは何でしょうか?
日本銀行による追加緩和があり、この影響がどの程度あるのか。株価が買われて、円が売られるというシナリオが継続できるのか。注意深く見守っていくことが重要です。11月というのは、12月から新年に向けて大きく相場が動く時期。いわば「仕込み」のチャンスでもあり、11月相場の動向を見ながら、こまめに買い足していくことのもひとつの方法です。(取材・文責:サーチナ・メディア編集部)
米連邦準備理事会(FRB)は、29日開催したFOMC(連邦公開市場委員会)で量的緩和第3弾(QE3)の終了決定を発表。
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2014-11-06 09:45