冬に危険なヒートショック、意識していない人が約6割・・・「暖差リスク」解消を呼びかけ

大きな温度変化にさらされることで身体がダメージをうける「ヒートショック」では、血圧が急変することで、脳卒中や心筋梗塞などにつながる恐れもある。特に寒い時期には注意が必要という。しかし全国の20-70代の男女2500人に尋ねたところ、ヒートショックを意識していない人が6割程度にものぼることが分かった。専門家は「暖差リスク」の解消を呼びかけている。
冬になると起こりやすい「ヒートショック」の要因となる住環境リスクを「暖差リスク」と命名し、その認知促進と予防対策を啓発していく機関である暖差リスク予防委員会は、10月17-19日、全国47都道府県の20-70代の男女2500人を対象に冬の住宅の暖かさについての意識や「ヒートショック」に対する意識をアンケート調査した。
「自宅の冬の暖かさについて満足していますか」との問いに対しては、「満足」、「だいたい満足」の合計が53.8%、「やや不満」か「不満」は46.2%だった。
「満足」の方が上回ってはいるが、「不満」も半数近い。「不満」と回答した人に、「不満である点」を聞いたところ、「廊下や脱衣室、浴室が寒い」が62.4%で、2位の「暖房をつけても部屋が寒い」(41.2%)、3位の「暖房をつけた後、部屋が暖まるのに時間がかかる」(40.2%)などの、20ポイント以上の差をつけていることが分かった。
「ヒートショック」という言葉を知っている人は全体の50.9%と半数を超えたが、「普段からヒートショックについて意識することがある」と回答した人は41.2%だった。
さらに、ヒートショックについては「高齢者にとっては危険だと思う」が最も多く71.4%で、「自分のこととして考えたことが無い」も16.8%だったことから、「ヒートショックについて知ってはいるが、自分のこととしてきちんと考えていない」人が多いと推察できる。
さらに、回答者全体の8割近くが、住宅内の暖かい部屋から寒い部屋や空間に移動した際になんらかの身体の反応や変化、影響を感じた事があると回答した。具体的には、「身体が寒くてぶるっと震えた」(58.5%)、「肩をすくめたり、身体を縮めたりした」(55.0%)などが多かった。
多くの人が「ヒートショック」という言葉を知り、それに準じる経験もしながら、それを「自分の体に大きなトラブルを引き起こすリスク」とは実感していないことが分かった。
人間-生活環境系学会会長の福岡女子大学国際文理学部・環境科学科の大中忠勝教授によると、ヒートショックでも、深刻なのは特に、温かい場所から寒い場所へ移動した場合。現象としては、寒い場所に移動した際の「血管収縮に伴う血圧の上昇」であり、「血管が硬くなった(動脈硬化)高齢者や成人病予備軍などには大きな負担となります。この時生じる大きな血圧上昇が、心筋梗塞や脳卒中を誘発する一因になるわけです」という。
部屋と部屋の温度差がもたらす危険性は「暖差リスク」と呼ばれている。日本の家庭では、浴室、洗面トイレ、廊下などがきちんと暖房されていないため、暖房されている部屋との温度差が10度前後に達する場合もある。ヒートショックを防ぐには暖差3-5度以内が基準とされるので、「暖差リスクが高い住環境が多い」ということになる。
ヒートショック防止は、浴室、脱衣室、トイレに暖房を設置し、家の中の温度差を減らすことで実現できる。つまり、「その気になって取り組めば、そう難しいことはない」わけだ。さらに、これから住宅を選ぶのであれば、保温性が高く外気温の影響を受けにくい家選びも有効だ。
もうひとつ考えておかねばならないことがある。若くて健康な人が「自分はまだ大丈夫」と考えるのは、決して好ましくないということだ。若い間に家の中の「暖差」に慣れてしまった場合、年齢が高くなって、本当に真剣に対策を考えねばならなくなった際に、それまでの延長で「まあ、こんなもんだろう」と考えてしまいがちだ。
浴室に入った際に、「寒さに体を震わせる」という経験は、若い人にとっても決して快適なものではない。逆に言えば、「体に負担があるからこそ、不快さを感じる」ということだ。ヒートショックの問題についても、「若い時からできるだけ、住まいから不快な環境を除去しておく」ことが、高齢になってからも「体に危険な状況」を敏感に察知する“体に染みついた習慣”を身に着け、リスクを低減する大きな助けになると考えてよいだろう。(編集担当:中山基夫)
大きな温度変化にさらされることで身体がダメージをうける「ヒートショック」では、血圧が急変することで、脳卒中や心筋梗塞などにつながる恐れもある。特に寒い時期には注意が必要という。しかし全国の20-70代の男女2500人に尋ねたところ、ヒートショックを意識していない人が6割程度にものぼることが分かった。
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2014-11-07 20:45