ドル高・円安基調に変化なし、ドル下落は好機=外為どっとコム総研

年初のドル/円相場は、昨年末のドル高基調が一変し、ドル安・円高の動きになっている。外為どっとコム総合研究所の取締役調査部長兼上席研究員の神田卓也氏に、米ドルの動きを中心にして、当面の為替相場の見通しについて聞いた。(写真はサーチナ撮影)
――年初のドル/円相場は、昨年末のドル高基調が一変し、1ドル=103円前後のドル安・円高局面になっています。当面のドル/円相場の見通しは?
1月14日に発表された米12月の雇用統計で、非農業者部門雇用者数が事前の市場予測を大幅に下回ったことが、昨年末から続いていたドルの買い上がりに冷水を浴びせかけたかっこうになっています。12月の雇用統計には大雪など、悪天候による一時的な雇用の減少という見方もできますが、米国の寒波は厳しく、このままでは1月の数値も期待できないという見方が強まっており、ドル買いに慎重な見方が優勢になっているようです。
ただ、今回のドル安・円高局面でつけた102円台は、2013年12月18日の米FOMCでテーパリング(量的金融緩和縮小)開始を決定して以来の水準です。米国がテーパリングを実施することを材料に、ドル高が進み始めた時点の水準に戻ってきたことになります。昨年末のドル高観測によってドルの買いポジションが相当に膨らみましたが、102円台まで価格調整をしたことによって、下値は良いところに届いたと感じています。
一方、1月28日-29日に開催されるFOMCで、1カ月当たり100億円としている資産買入れ額を縮小しテーパリングの速度を緩める、あるいは、失業率6.5%をメドに利上げに転じるとしている目標水準を引き下げるなど、米国の金融正常化に向けた動きが先送りされるようなメッセージが出てくると、ドル/円は、一段のドル安に振れる可能性が残されています。その際には、1ドル=101円程度までのドル安に進むことも考えなければなりません。
――当面のドル/円の想定レートは?
当面は、1ドル=102.50円-105.50円の狭いレンジの中でもみ合い相場になるとみます。米FOMCの政策スタンスを見極めたいというムードが強いことから、ドルの上値は限定的になるでしょう。また、可能性としては大きくありませんが、米国のテーパリングについての姿勢が、より緩やかな内容に見直される場合は、1ドル=101円程度のドル安もありえると思います。
――ユーロ/円も、昨年末に1ユーロ=145円台に買い進められた後、140円前後に下落しました。当面のユーロ/円の見方は?
昨年末のユーロ高は、今年1月-2月に実施されるユーロ圏の銀行に対するストレステストへの備えで、12月決算を控えてユーロ圏の銀行が海外投資資産の回収に動いたため、一時的にユーロ買い(海外通貨売り)の動きが集中したために起こったものとみられます。年初の動きは、このような一時的な要因がはげ落ちたことによる反動安と考えればよいでしょう。
一方、ECB(欧州中銀)は、過剰流動性を圧縮する動きをみせています。これは基本的にはユーロ高につながる動きなので、ユーロの下値は固いとみます。
現在のユーロは、ディスインフレ状況にあり、数年前の円に状況が似ています。デフレになった円の方が状況は、より深刻でしたが、ゼロ金利で名目金利に低下余地が限られる中で、物価上昇率が抑えられた結果、実質金利に上昇圧力がかかりやすい状況です。
ユーロ圏は貿易収支や経常収支が黒字であり、輸出によって稼ぐという経済構造もかつての日本を彷彿とさせます。デフレ経済下にあって、日本円は、積極的な買い材料がなくても、一方的な上昇に見舞われるという経験をしました。今、ユーロにも、当時の円にあったような上昇プレッシャーがかかりはじめている可能性があると思います。
したがって、ユーロ/円は、1ユーロ=139円を下値に、145円に向かって緩やかに戻していく動きを想定しています。また、ユーロ/ドルの関係で、米国のテーパリングがより緩やかなものになった場合、ドル安/ユーロ高、かつ、株高でクロス円が上昇することになり、1ユーロ=147円程度にまで一段高となる可能性もあります。
――ドル/円、ユーロ/円以外で、注目している通貨ペアは?
現在の局面では、ドル/円が一番わかりやすいと思います。年初からドル安/円高の局面となりましたが、年内に1ドル=110円をめざすという動きに変わりはないと思います。当面は、1ドル=102円買い、105円売りという狭いレンジでの取引とみますが、中期的には110円をめざす想定で、ドルの押し目はチャンスになります。
実需のフローを考えると、日本は貿易収支が赤字で、経常収支も2カ月連続で赤字になりました。今後も燃料輸入等で貿易収支の赤字は膨らむ見通しで、円安圧力は高まります。反対に、米国の貿易赤字は大幅に縮小中です。このような実需の動きは、ストレートにドル高・円安の動きにつながります。
加えて、日米の金融政策の方向性の違いも明確です。米国は、すでにテーパリングを開始し、今年後半にはテーパリングを終了し、来年の半ばから後半にかけて利上げを検討する段階に至ると考えられますが、来年の半ばの日本は、消費増税の第2弾を控えて一段の金融量的緩和を実施しているかもしれません。
年初から、ドル安・円高の逆風に見舞われましたが、ドル/円の中期的な方向性はドル高・円安を示すものに変わりありません。その点を踏まえて、ドル/円の投資チャンスを見極めたいところです。(編集担当:徳永浩)
年初のドル/円相場は、昨年末のドル高基調が一変し、ドル安・円高の動きになっている。外為どっとコム総合研究所の取締役調査部長兼上席研究員の神田卓也氏に、米ドルの動きを中心にして、当面の為替相場の見通しについて聞いた。(写真はサーチナ撮影)
gaitamedotinterview,economic,fxExchange
2014-01-15 12:30