日中関係改善の演出は、中国の日本進出への序章?

APECを機に実現した日中首脳会談。安倍総理の余裕の表情は、アメリカのお墨付きもあったのかも知れませんが、同盟国アメリカとの関係を重視しつつも、東南アジアはじめ、中国を取り巻く周辺諸国を歴訪し、久々に日本が世界の舞台で外交らしい外交をしているように見えます。この1年で海外出張が13回の私ですが、総理大臣の激務と比べたら月とスッポン! 国内では政局も見据える必要も……。総理は大変ですね。
思い起こせば2年前に「尖閣の国有化」なる、本来「領土問題は存在しない」と言う立場の日本からすると、やぶへびな愚行を民主党政権がぶち上げ、中国側の権力闘争や、アメリカ、韓国の販売促進も複雑に絡みあって「反日」が演出されました。今から思うと、中国の市場が最も活況を呈したのがこの2年だったのかも知れません。自動車販売に限らず、政治的な駆け引きで途轍もないハンディを背負いながら、それでも日本企業は頑張ってきたわけです。
今回の首脳会談を日中関係の雪解けの始まりと解釈する向きもありますし、実際、「合意しないことに合意する」と言った高度な外交戦術は、経済界からも評価されるでしょう。ただ、だからと言って、日本企業がこれから中国市場で巻き返しができるかと聞かれると、困難はあまりにも多いのも事実。中国市場はすでに、欧米韓国資本のみならず中国国内の巨大企業が席巻し、まだまだ購買意欲が強いと言ってもピークは過ぎているわけで、尖閣による失われた2年間は想像以上にダメージが大きいと思います。
そして、何よりも危惧しなければいけないのは、今回の日中関係改善の演出の裏には、中国資本、企業による日本進出、買収が加速することが予想されることです。折しも円安は進み、輸出企業には朗報ではありますが、足元の日本国内では、大量に訪れる観光客だけではなく、資本力のある中国企業がM&Aを仕掛けるために大挙して押し寄せる恐れもあるわけです。外資系と聞くと、欧米資本をイメージしますが、あなたの会社のトップ、資本家が中国人! と言ったことにも拍車がかかる可能性大です。
打って出る中国対策も大事ですが、迎え撃つ中国対策が重要で、「グローバルとは次元を下げること」と常々言っていますが、海外に出かけなくても、次元の低いグローバルの波が国内に押し寄せてくる…企業体力を強化し、日本ならではの技術、こだわりを磨き守りながら、新たな黒船に備える時代がやってきたわけです。両首脳の握手、それはそれで好材料ではありますが、まずは足元を固めるべきですね。(執筆者:小川 善久 提供:中国ビジネスヘッドライン)
APECを機に実現した日中首脳会談。安倍総理の余裕の表情は、アメリカのお墨付きもあったのかも知れませんが、同盟国アメリカとの関係を重視しつつも、東南アジアはじめ、中国を取り巻く周辺諸国を歴訪し、久々に日本が世界の舞台で外交らしい外交をしているように見えます。
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2014-11-18 11:15