三菱UFJモルガン・スタンレー証券、ラップ型ファンド「スマラップ」が好発進

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券が販売しているラップ型ファンド「スマート・クオリティ・オープン(安定型)(安定成長型)(成長型)<愛称:スマラップ>」が人気を集めている。2014年11月14日(金)の設定日には合計180億円の設定金額となり好調な滑り出しとなった。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の投資顧問部長、江面幸浩氏(写真:左)に「スマラップ」の販売状況を、そして、「スマラップ」を設定・運用している国際投信投資顧問の商品開発部長、大久保隆氏(写真:右)に商品の特徴について聞いた。 ――「ラップ型ファンド」という「スマラップ」を企画した背景は? 大久保 「ラップ口座」とは、投資運用業の登録を受けて投資一任業務を行っている証券会社、信託銀行が、運用から口座管理までを行うサービスです。このサービスにかかる手数料は、運用資産残高に応じて一括して支払われるので「ラップ(wrap)=包む」という名前がついています。最低契約金額が概ね1000万円以上という大口の資金の預け先になっています。  一方、ラップ口座の一部で、投資信託だけをあらかじめ決まったコース(スタイル)を選択して投資一任するサービスを一般的に「ファンドラップ」と呼びます。一般のラップ口座より、最低契約金額が低く、300万円以上から設定されるサービスもあります。  さらに、ラップ口座の運用ノウハウを取り入れたバランス型投資信託のことを「ラップ型ファンド」と呼んでいます。通常の公募投信と同じように販売され、通常1万円程度から購入することが可能です。  近年、これらのラップサービスが伸びています。「ファンドラップ」も含む「ラップ口座」は、2013年から目立って伸び始め、13年3月末に約5万件だった契約件数が14年3月末には10万件を突破し、同6月末には約13万件(1兆6430億円)になりました。そして、14年9月末にはラップ口座残高は2兆円を超えた模様です。また、ラップ口座専用ファンドの純資産残高は同9月末に推計で1.8兆円を超え、過去1年間で2倍強に増加しています。  ラップが伸びてきた背景には、いわゆるアベノミクスによる日本株価の上昇、円安の進展(海外資産の価値の向上)などもあり、かつ、政府や日銀から発信される「デフレからの脱却」、すなわち、インフレによる物価上昇が意識し始められたことがあると思います。  これまでのように、「デフレの時代」であれば預貯金に資金を置いておくだけで、資産を保全できるメリットがありました。ところが、インフレになれば「お金の価値が目減りする」ということを意識せざるを得ません。「インフレ時代にお金の価値を守る」ことを考えた時に、プロの判断で資産運用・管理をしてもらえる「ラップ」の魅力が浮かび上がってきたのではないかと思います。 ――「スマラップ」とは、どのようなファンドなのですか? 大久保 まず、8資産(国内株式、国内債券、国内リート、先進国株式、先進国債券、先進国リート、新興国株式、新興国債券)に分散投資します。各資産への投資比率は、目標とするリスク水準によって決定します。スマラップでは、このリスク水準が異なる3つのファンドを用意しました。    ファンドの変動リスクのメドが、年率標準偏差で5.0%程度の水準で運用する「安定型」。同じく、8%程度の「安定成長型」、12%程度の「成長型」です。「ラップ型ファンド」の中で年率標準偏差が5.0%程度のリスク水準で運用するファンドは、相対的に低いリスク水準になっていて、安定した値動きが期待できるファンドになっています。  この8資産への基本資産配分比率の決定や、配分比率の見直しなどについて、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の投資顧問部からアドバイスを受けます。投資顧問部がラップサービスなどで提供しているアセット・アロケーションのノウハウを活用して運用を行うのです。ここに「ラップ型ファンド」としての特性があります。  さらに、「国内株式」、「先進国株式」、「新興国株式」に投資する際には、従来型の株価指数に対してプラスアルファの運用成果をめざす「スマートベータ指数」に連動することをめざすファンドも投資対象としています。たとえば、国内株式については、「TOPIX(東証株価指数)」に対して、「JPX日経インデックス400」という新しい指数が使われ始めていますが、この新指数は自己資本利益率(ROE)などによって銘柄選定を行うことで市場全体よりも高いリターンが期待できる指数といわれています。  このように自己資本利益率や配当利回り、価格変動率など特定の要素にも基づいて構成される指数が「スマートベータ指数」と呼ばれていますが、当ファンドでは「国内株式」において「JPX日経インデックス400」を、「先進国株式」および「新興国株式」では「ミニマム・ボラティリティ・インデックス」(リターンの変動が最も小さくなるように構成された指数)に連動するETFも投資対象としており、「スマートベータ指数」を活用しています。  加えて、購入時手数料、スイッチング手数料、信託財産留保額をいずれも無料としています。また、信託報酬も低い水準に抑えてあります。信託報酬は、ファンド・オブ・ファンズという形式のため、投資するファンドの信託(管理)報酬が必要になり、実質的な負担は、「安定型」で年率1.704%プラスマイナス0.10%程度(税込・概算)、「安定成長型」が同1.812%プラスマイナス0.10%程度、「成長型」が同1.920%プラスマイナス0.10%程度となります。 ――「バランス・ファンド」と、「ラップ型ファンド」の違いは、投資顧問部による運用アドバイスがあるということですが、それは、ファンドにとって具体的にどのような効果があるのですか? 江面 投資顧問部からのアドバイスは、8資産の基本資産配分比率の決定、この比率に基づく投資信託証券の選定、リバランスの指示などになります。一般のバランス・ファンドであれば、資産配分比率が株式に30%、債券に70%など、配分比率を固定的に考えて運用を行う事が一般的ですが、「スマラップ」の場合は、「安定型」、「成長型」などの目標リスク水準を、市況動向等を勘案しながら、定期的に見直しを行います。一方で、配分比率の見直しを頻繁に行うと、運用コストをいたずらに高めることにつながるので、全体の運用効率を考えながら、ファンドの投資アドバイスに努めていきます。  また、リーマンショックのような大幅な変動が見通せる場合には、思い切って配分比率を見直して、安全資産の比率を高めるよう指示を出し、資産の大幅な毀損を防ぐ運用をすることもあると思います。  投資顧問部では、年金基金、学校法人、一般事業法人まで幅広い顧客との投資一任契約に基づいた運用サービスを提供してきています。「スマラップ」のように目標リスク水準で基本ポートフォリオを組成した投資一任運用も行っており実績を重ねています。  また、「スマラップ」という1つの商品の中で、「安定型」、「安定成長型」、「成長型」という異なるリスク水準の3つのファンド間で、無料でスイッチングもできます。お客さまの年齢や家族構成の変化など、リスク許容度の変化に合わせて、その時々の状況に適した運用スタイルにフィッティングできるということも「ラップ型ファンド」のメリットといえます。 ――「スマラップ」は、どのような顧客層を対象に販売しているのですか? 江面 「スマラップ」を企画した当初は、主に投資リスクを抑えた運用を考えている高齢のお客さまや、インフレヘッジを考えている投資初心者の方に「スマラップ」の「安定型」をお使いいただくというイメージでした。  ところが、実際に募集を開始すると、高齢の方や投資初心者の方だけではなく、たとえば企業オーナーや会社役員の方など、投資経験はあるものの普段は仕事でお忙しく、なかなかお時間をいただけない方々が、「スマラップ」の案内パンフレットだけで興味を示していただき、結果的にまとまった資金で購入していただくという事例も目立ちます。また、「スマラップ簡易診断シート」を使って、リスク許容度に応じてファンドを選択するというスタイルを望まれるお客さまが、当社の予想以上に多くいらっしゃるというのも実感です。  今も「毎月分配型ファンド」の人気は根強いのですが、どうしても「分配金」の金額や短期的なリターンに注目してしまい、結果的にご自身のリスク許容度より高いリスクを取った運用をしていることがあります。ところが、「スマラップ」で実際にリスク基準でお客さまに投資判断をしていただくと、多くのお客さまが低リスクでの運用を望んでいることがわかり、実際の運用とのミスマッチが明確になります。「スマラップ」はリターンで運用を判断するのではなく、リスクで運用を判断する新しいタイプの運用商品と言えるでしょう。  「スマラップ」は、リスクをしっかり管理して運用する商品であることから、先ほどのようなお忙しくて、日頃は資産管理に時間がとりにくい方、また、投資について経験がなく初めて投資を考える方にも、ご提案したいファンドだと考えます。  また、ラップ口座を開設し運用を開始する前には、お客さまの投資意向やリスク許容度を聞き取るための面談の機会を設けることが一般的ですが、この「スマラップ」では、より簡単にリスク許容度を診断できる「スマラップ簡易診断シート」を用意しました。この診断の結果、ご自身が3タイプ(「安定型」「安定成長型」「成長型」)のうち、どのタイプが適しているかを見出していただき、ファンド選択のご参考にしていただきます。  まずは、「スマラップ簡易診断シート」で現状のリスク許容度をご診断の上、投資の第一歩を進めていただきたいと思います。その後、家族構成の変化など、状況の変化に合わせたポートフォリオの入れ替えなど、店頭で様々なご相談に応じてまいります。「スマラップ」をきっかけに、長期の資産運用について当社に、ご相談いただきたいと思います。(取材・編集担当:徳永浩)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券が販売しているラップ型ファンド「スマート・クオリティ・オープン<愛称:スマラップ>」が人気を集めている。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の投資顧問部長、江面幸浩氏(写真:左)に「スマラップ」の販売状況を、そして、「スマラップ」を設定・運用している国際投信投資顧問の商品開発部長、大久保隆氏(写真:右)に商品の特徴について聞いた。
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2014-11-21 15:30