中国で懸案の住宅市場に底入れの兆し=大和総研がレポート

 大和総研経済調査部シニアエコノミストの齋藤尚登氏は2014年11月21日に中国経済見通しレポート「懸案の住宅市場に底入れの兆し」(全8ページ)を発表した。中国人民銀行と中国銀行業監督管理委員会が2014年9月末に住宅市場のテコ入れ策を発表し、住宅市場のセンチメントが改善していると分析している。レポートの要旨は以下の通り。 ◆固定資産投資は一段と減速している。ただし、2014年に入り住宅販売が不振となるなか、不動産開発投資が大きく減速するのは自然である。鉄鋼やセメントなど重化学工業を中心に設備過剰感が高まっており、こうした分野の投資を厳選すること(さらには汚染物質排出量の多い老朽化設備の淘汰を行うこと)は好ましい。固定資産投資の減速は政策効果発現の面があり、投資全体を浮揚させる本格的な景気「刺激策」が実施される可能性は極めて低い。今後も想定されるのは、農業、インフラ、産業構造の高度化を促す戦略的新興産業など分野を絞った景気「下支え策」なものである。 ◆景気が大きく下振れするリスクが高まるとすれば、不動産(住宅)販売の低迷が続き、価格下落が大幅かつ長期化する場合である。中国人民銀行と中国銀行業監督管理委員会が2014年9月末に住宅市場のテコ入れ策を発表したのは、中央政府が住宅市場をサポートする姿勢を明確にすることで、急速な悪化を食い止め、景気が大きく下振れするリスクが高まるのを回避するのが目的である。 ◆70都市新築住宅価格の前年同月比は、2014年9月に-1.3%と下落に転じ、10月には-2.6%とマイナス幅を広げた。一方で、前月比は8月の-1.1%をボトムに10月は-0.8%とマイナス幅が若干縮小している。住宅販売金額の単月のデータを作成すると、7月の前年同月比-17.9%を底に10月は同-3.1%へとマイナス幅が縮小。在庫調整も進展し始めている。こうした動きを以て愁眉を開くのは尚早であろうが、9月末の住宅市場テコ入れ策の発表によってセンチメント改善には成功したのかもしれない。 ◆住宅市場が大崩れしなければ、景気が大きく下振れするリスクは限定的であり、緩やかな景気減速が続くとみている。大和総研では2014年の実質GDP成長率は7.3%、2015年は7.0%と想定している。(情報提供:大和総研、編集担当:徳永浩)
大和総研経済調査部シニアエコノミストの齋藤尚登氏は2014年11月21日に中国経済見通しレポート「懸案の住宅市場に底入れの兆し」(全8ページ)を発表した。
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2014-11-21 19:00