地方の食、業界と文化支える<伝道師>が大集合・・・47都道府県の地方新聞社厳選の「トクだね!グルメ祭」、東京で開催中
いわゆる、食をメーンとする地方物産展に時おり立ち寄ることがある。熱心なファンというわけではないが、自分にとって新たな味覚との出会いがあり、満ち足りた気持ちになる。今回は池袋の東武百貨店で開催中の「トクだね!グルメ祭」に足を運んだ。驚いた! 熱意と誇り。そして誠意に満ちた出展業者が、これほどまでに集合しているとは。全国各地の地方新聞社が選んだ47都道府県の業者だ。「日本には美味しいものがこんなにある」と満足すると同時に、彼らの心意気に感動した。
■地元を最もよく知る新聞社が47都道府県の「イチオシ」食品を選んだ
主催は47CLUB(よんななクラブ)と東京新聞だ。地元の情報を最もよく知る各地の新聞社が、「イチオシはこれ!」という食べ物を選んだ。すでに全国でもかなり知られ、評価が確立しているものもある。地元から外には、ほとんど出ることがなかった商品もある。しかしどれもが「見逃すわけにはいかない商品」であることに、変わりない。
有名なものとしては、「たぶん世界一濃厚なプリン」とされる「天国のぶた」(群馬県)、1度食べると「メンチカツの常識が変わる」とされる「黒毛和牛チョップカツ」(東京都)、ミネラル豊富な吉野川などの淡水、鳴門海峡と紀伊水道の黒潮が合わる海域の徳島県南の伊島近海で取れる鱧(はも)を使った「はも天ぷら弁当」、隣接する牧場で採れるミルクや新鮮はフルーツをぜいたくにつかった「ジェラートダブル」(岡山県)などを挙げることができる。
知名度が高い商品なのでご存知の方も多いと思うが、いずれも「すばらしい物はすばらしい。美味しい物は美味しい」としか言いようのない逸品だ。
■「一番おいしい食べ方をお伝えしたい」……会場にみなぎる生産者の熱意と誇り
会場で、何よりも驚いたのは、メーカー側の熱意と誇りだ。例えば、「国産・無添加 奈良漬うり」を出品した奈良県の「いせ弥」だ。試食には、奈良漬けに「茶がゆ」を添えた。地元では「茶がゆ」を売っているわけでない。主(あるじ)によると、「奈良漬けだけだったら、東京のデパートでも売っているでしょう。そうではなくて、奈良漬けの一番おいしい食べ方をしっかりとお伝えしたいと思ったんですよ」という。
ありがたく、試食させていただいた。「なるほど!」と思った。納得した。これは今まで、知らなかった。ほんとうに、しみじみとする美味しさだ。主は「奈良では当たり前なんですよ。本当に簡単な食べ方なんですけどね」と、ちょっと謙遜した。いや、それこそが伝統の重みなのではないか。長い歴史に培われた「文化」というものだ。
山中湖ハムでは「ソーセージ」を試食させていただいた。私にとっては「衝撃」の味だった。「とても美味しい豚肉を、とても美味しく加工した」としか表現のしようがない。心と技を込めた、実にくっきりとした味だった。店員さんに説明してもらった。豚の飼育から一環して行っているという。そして「お子さまに食べていただくことも考え、できるだけ安全な商品に仕上げています」という。保存料は使っていない。だから賞味期限は2週間だ。
まだ20代前半にしか見えない、若い男性職員だった。しかし表情は誇りに満ちていた。目が輝いている。自分の会社が世に送り出す商品に、完全なる自信を持っている。「これからの職業人生は、幸せに満ちているだろうな」と、そんなことまで思ってしまった。
■こだわり抜いた商品が勢ぞろい、売り方にも生産者それぞれの個性が光る
この「トクだね!グルメ祭」は、「無添加」などを謳った商品が多いことも特徴だ。一般的に言えば「無添加ならすべてよし」とは言い切れないが、このイベントに「作り手として、こだわり抜いた」商品が多いことを反映していると理解できる。
驚くほど大粒の梅干し。「ウチは農家ですから、この程度の価格でお売りできるんですよ」との説明だった。梅を栽培する土づくりからこだわっているという。こんにゃくでは、メーンに紹介されている商品だけでなく、「おかずとして、地元ではこういう風に食べるんですよ」と紹介。とにかく、手がける商品、そして故郷に対する自信と誇り、さらに愛情が強烈に伝わって来る。
「ウチの海ぶどうは、沖縄で一番おいしい海ぶどうの“ひとつ”だよ。本当は一番おいしいと言っちゃいたいんだけど、まあいろいろ、他の店とで差しさわりが出ちゃうからね」といって、集まった客を笑わせる売り手。たしかに美味しい。素晴らしい。
逆に、どちらかと言えば、寡黙な人もいる。例えば「いかしゅうまい」を売る萬坊のご主人だ。試食させていただいた。芳醇かつ上品な味と繊細な食感に驚いた。ただ、取材には「正確にお答えします」といった対応ぶりだ。雄弁では、決してない。しかし、「ウチの商品は、分かっていただけるはず」との自信ははっきりと伝わって来る。さまざまなタイプの売り手に出会えたことも、この「トクだね!グルメ祭」の収穫のひとつだった。
同「グルメ祭」では個別のブースとは別に、全国のご当地インスタントラーメンとレトルトカレーを販売するスペースがある。これも見逃せない。地元の食文化を、ラーメンとカレーという「全国区料理」にどう生かすかという「知恵比べ・センス比べ」であるからだ。普段は地元でなければ入手が難しい商品が、一堂に集まった。
■ 地元では評価が確立した人気店、他の地方に「食の文化をしっかりと伝えたい」との心意気
「トクだね!グルメ祭」の出展業者はいずれも、地元で評価を確立しており、ビジネスは順調という。出展に販路開拓という気持ちがあるのはもちろんだが、「食の文化をしっかりと伝えたい」という思いが極めて強いという。このようなイベント参加は初めてという業者もおり、主催の47CLUBは何回か、勉強会を開催したという。
会場となった東武百貨店 池袋店によると、地方物産展は通常「地域名がカンムリ」となっているが、やや低落傾向がある。そのため、新たな方法を模索している。47都道府県の食べ物を集めた「トクだね!グルメ祭」は初めての試みで、「可能であれば、今後も育てていきたい企画です」という。
主催の47CLUBは、日本の地方新聞社が各地域の商品を全国に届けることを目的に設立された会社組織だ。ウェブサイトにショッピング・モールを設け、全国各地でのイベントも続けている。年末には大阪の阪急うめだ本店でも、同様の催しが実施されるという。
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「トクだね!グルメ祭」はまさに、47都道府県から「食文化の伝道師」が大集合したイベントだ。「よいもの、美味しいもの」を作りつづける人が、全国いたるところにいる。「日本はやはり、あなどれない国なのだなあ」。そんな思いを強くして引き上げてきた。
なお、このような記事で通常ならば、「スペースの問題」などで一部の出店業者あるいは商品しか紹介できないことが多い。しかしこれだけ熱心で誠実な業者の皆さんが集まったということで、一部だけをご紹介するのはあまりにも残念だ。そこで出展業者すべてと代表的商品を記載することにする。毎日の販売量に限りのある商品もある。東武百貨店池袋店の「トクだね!グルメ祭」は25日まで開催。
本池澤「鰹の塩たたき丼」(高知県)/玉子屋やまたか「天国のぶた」(群馬県)/老舗和牛卸 小島商店「黒毛和牛チョップカツ」(東京都)/豊平館「道産牛と海の幸ステーキ弁当」(北海道)/あすなろ43「海なっとう」(同)/十勝清水コスモスファーム「無添加コンビーフ」/ラグノオ「パティシエのりんごスティック」(青森県)/ローズメイ「レモンジンジャースライス」(秋田県)/楢下宿丹野こんにゃく「玉こんにゃく煮」(山形県)/岩手 中村家「三陸海宝漬」(岩手県)/菓匠三全「萩の月」(宮城県)/ドライフルーツFIIR「ドライフルーツ各種」(福島県)/御菓子司 羽入「笹だんご」(新潟県)/山中湖ハム「ボンレスハム」(山梨県)/菊水食品「菊水ゴールド納豆」(茨城県)/斎武商店「房総さいぶのひじき」(千葉県)/本手焼 おおとり「手焼きせんべい」(埼玉県)/長谷川製茶「緑のきらめき深むし茶」(静岡県)/鎌倉ニュージャーマン「かまくらカスター」(神奈川県)/宇都宮餃子悟空「特製肉餃子」(栃木県)/本橋水産「釜揚げ桜えび・同しらす」(静岡県)/中野酢「江戸時代黒酒酢」(三重県)/味の笹義「特撰ますの寿し」(富山県)/名古屋なまずや「ひつまぶし弁当」(愛知県)/槌谷「柿羊羹」(岐阜県)/おやき総本家「おやき各種」(長野県)/越前三國湊屋「元祖焼き鯖寿司」(福井県)/金澤玉寿司「ずわいがに・白えびの日本海盛」(石川県)/いせ弥「国産・無添加 奈良漬うり」(奈良県)/箱木農園「紀州みなべ南高梅干白干」(和歌山県)/崔家の健美鍋「和牛プチもつ鍋」(大阪府)/ルメルシェ「ティラミル」(滋賀県)/マールブランシュ「お濃茶ラングドシャ 茶の菓」(京都府)/ビゴの店「パン・オ・ルヴァン」(兵庫県)/とっとりなしお商店「とっとりなしをどっとのむ」(鳥取県)/出雲日本海「のどぐろ寿し」(島根県)/ジェアテリア MISAO「ジェラートダブル」(岡山県)/丸徳「牡蠣オイル煮」(広島県)/山賀かぶやま「宝関 トラフグ焼き塩造り」(山口県)/バッケンモーツアルト「チーズオムレット」(広島県)/安岡蒲鉾「宇和島じゃこ天・えそちくわ」(愛媛県)/讃岐生うどんのこんぴらや「讃岐生うどん」(香川県)/はも専門 吟月「はも天ぷら弁当」(徳島県)/博多華味鳥「華味鳥水たき唐揚げ」(福岡県)/萬坊「いかしゅうまい大まる・白・黒」(佐賀県)/姫からの贈り物「幻の2日ひじき」(大分県)/味のくらや「からいも団子」(宮崎県)/ベルビーチ「佐世保バーガー」(長崎県)/Dining萬来「鹿児島黒豚角煮弁当」(鹿児島県)/菊陽食肉センター「厳選馬刺し」(熊本県)/もずキム「海ぶどう」(沖縄県)
写真は玉子屋やまたかによる「天国のぶた」の販売風景。サーチナ編集部が撮影。
(編集担当:如月隼人)
池袋の東武百貨店で開催中の「トクだね!グルメ祭」に足を運んだ。驚いた! 熱意と誇りを強烈に感じる出展業者が、これほどまでに集合しているとは。地方新聞社が選んだ47都道府県の業者だ。「日本には美味しいものがこんなにある」と満足すると同時に、彼らの心意気に感動してしまった。
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2014-11-22 21:45