中国の利下げは景気下支えが目的で中立的な金融政策は維持=大和総研が分析
中国人民銀行(中国の中央銀行)が2014年11月21日に実施した2年4カ月ぶりの利下げについて、大和総研経済調査部シニアエコノミストの齋藤尚登氏が11月25日にレポート(全4ページ)を発表した。今回の利下げについては「全面的な金融緩和の始まりではなく、あくまでも景気下支えを目的としている」と分析する一方、中国における金利自由化に向けた重要なステップとしての側面にも注目していきたいとした。レポートの要旨は以下の通り。
◆2014年11月21日、中国人民銀行は貸出基準金利と預金基準金利の引き下げを発表した。実施は11月22日から。1年物貸出基準金利は6.0%→5.6%へ0.4%ポイント、1年物預金基準金利は3.0%→2.75%へ0.25%ポイント引き下げられた。
◆中国人民銀行によれば、今回の貸出基準金利の引き下げは、特に小型・零細企業の「融資難、融資貴」(資金調達難、資金調達コスト高)問題の改善を図ることが目的である。その一方で、「利下げは、金融政策が(緩和に)変化したことを意味しない」と釘をさしている。恐らく、今回の利下げが、高めの成長率追求を目指した全面的な金融緩和の始まりではなく、あくまでも景気下支えを目的としていることを強調したいのであろう。
◆預金基準金利の引き下げ幅は小さく、上限が基準金利の1.1倍→1.2倍へ引き上げられたことで、上限金利を適用すれば、1年物預金金利は利下げの前後で変わらない。この場合、単純計算では預貸スプレッドは、従来の2.7%→2.3%へ縮小する。銀行が利息収入を維持しようとすれば、より高い貸出金利の設定が可能な中小企業・零細企業向けの貸出を増やすことも選択肢のひとつとなる。
◆さらに、今回の利下げは、不動産(住宅)市場のテコ入れにつながる可能性がある。既に、前月比でみた価格下落幅が縮小し、住宅在庫が圧縮され始めるなど、9月末の中国政府による住宅テコ入れ策の発表がセンチメントの改善に寄与している。こうした動きを住宅ローン金利の低下でさらにサポートしようとしているのであろう。
◆預金基準金利に対する上限金利の引き上げは、金利自由化に向けた重要なステップである。預金金利自由化の前提は、預金保険制度が確立され、金融機関破たん処理法が制定されることであり、今後の金融制度改革の行方にも注目したい。(情報提供:大和総研、編集担当:徳永浩)
中国人民銀行が実施した2年4カ月ぶりの利下げについて、大和総研経済調査部シニアエコノミストの齋藤尚登氏が11月25日にレポート(全4ページ)を発表した。今回の利下げについては「全面的な金融緩和の始まりではなく、あくまでも景気下支えを目的としている」と分析した。
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2014-11-25 12:00