「餃子の王将」の中国(大連)撤退に学ぶ

日本経営管理教育協会が見る中国 第334回--宮本邦夫(日本経営管理教育協会名誉会長) ● 「餃子の王将」が中国から撤退   「餃子の王将」は、2014年11月の初め、中国(大連)から撤退すると発表した。大連に進出したのが2005年であったから、約10年間頑張ったものの力尽きて撤退したということになる。一時は、大連だけで6店舗を持って営業したことがあり、経営はうまくいっていたと思われていた。だが、その後徐々に引き上げ、最後は三八広場店、二八広場店、風光街店の3店舗とも、一斉に撤退ということになった。赤字額は2億円という。日本では、全国各地に店舗を持ち、斯界でトップの座を維持している「餃子の王将」の中国(大連)からの撤退に、われわれは何を学ぶべきであろうか? ● 進出場所に商品が適合していたか?   第一に学ぶべきことは、進出場所の選定である。「餃子の王将」は大連という場所を選んだのだが、それが妥当であったかどうか? 大連といえば、餃子の本場である。一説には、戦後大連から引き上げてきた人が、焼き餃子を売り出し、それがヒット商品になり、日本的な焼き餃子として普及したという。この日本的な焼き餃子を売る店を大連に設置したこと自体にムリがあったのではないか?「餃子の王将」の撤退について、「中国人が日本で寿司屋を開くようなものだ」と評する向きもあるほどである。 ● 集中出店の是非   第二に、一箇所に複数の店舗を集中して出店することの是非についてである。   「餃子の王将」は、大連という都会だけで、多いときには6店舗を有し、一箇所集中出店という進出戦略を採った。「餃子の王将」としては、それなりの分析・検討を行って、そうした戦略を採ったのであろうが、結果として、その戦略は失敗だったということになる。一箇所集中出店を展開するに当たっては、そのメリット、デメリットについて、多角的・総合的に分析・検討して意思決定をすることが重要である。 ● 餃子は主食か副食かの違い   第三に学ばなければならないことは、現地の人たちの食習慣についてよく理解・認識するということである。中国における餃子は、そのほとんどが水餃子である。しかも、大多数の人びとは、自家製の餃子を食する習慣があり、外で餃子を食べるのは、その餃子がよほど美味しい場合である。   食習慣でもう1つ考えねばならないことは、中国では、餃子は主食であるということである。「餃子の王将」では、焼き餃子を副食という日本人の捉え方で、主食のご飯と一緒に出すというメニューであったという。こうした日中の食習慣の違いをよく考えてメニューを考えることが大切であることを理解せねばならない。 ● 人間の味覚は保守的と考えよう   第四は、現地の人たちの味覚について、十分に研究するということを学ぶことである。前述のように、中国の餃子は伝統的に水餃子である。ということは、中国人にとっては、水餃子の味に慣れ親しんでおり、焼き餃子には馴染めないという人も少なからずいるはずである。人間の味覚というものは、 きわめて保守的である。保守的な味覚を変えさせる食品を提供するのは容易なことではない。しかし、味覚は保守的ではあるが、異なる味覚を完全に拒否するわけではない。「中国人の味覚を変えさせる和食は何か」をよく考えて進出したいものである。(執筆者:宮本邦夫・日本経営管理教育協会名誉会長 編集担当:水野陽子)                
 「餃子の王将」は、2014年11月の初め、中国(大連)から撤退すると発表した。大連に進出したのが2005年であったから、約10年間頑張ったものの力尽きて撤退したということになる。一時は、大連だけで6店舗を持って営業したことがあり、経営はうまくいっていたと思われていた。
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2014-11-26 12:00