2年半ぶりの日中首脳会談も「政冷経冷」は継続か=大和総研

 日本の安倍晋三首相と中国の習近平国家主席が2014年11月10日、APEC首脳会議の場を利用して、2年半ぶりに直接対話の機会を持った。世界に発信された会談の模様を伝える写真で、仏頂面ともとれる習主席の表情が印象的だった。この日中首脳会談について、大和総研経済調査部シニアエコノミストの齋藤尚登氏が11月26日にコラムを発表し、「不正常な状態に終止符が打たれた」と一定の評価をするものの、日中の経済関係の好転には「事はそう簡単ではないだろう」と慎重な見方を示した。レポートの要旨は以下のとおり。  2014年11月10日、安倍晋三首相と習近平国家主席が北京の人民大会堂で会談した。経済規模で世界第2位と第3位の両国の首脳が、2年半にわたり直接対話ができないという不正常な状態に終止符が打たれた。  首脳会談に先立つ11月6日に、日中は関係改善に向けた4項目で合意した。日本の外務省が7日に発表した文書「日中関係の改善に向けた話合い」によれば、合意事項は以下の4点である。1.双方は、日中間の四つの基本文書の諸原則と精神を遵守し、日中の戦略的互恵関係を引き続き発展させていくことを確認した。2.双方は、歴史を直視し、未来に向かうという精神に従い、両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた。3.双方は、尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し、対話と協議を通じて、情勢の悪化を防ぐとともに、危機管理メカニズムを構築し、不測の事態の発生を回避することで意見の一致をみた。4.双方は、様々な多国間・二国間のチャンネルを活用して、政治・外交・安保対話を徐々に再開し、政治的相互信頼関係の構築に努めることにつき意見の一致をみた。  この2年あまりの間に、日中関係は「政冷経熱」(政治関係は冷え込んでいるが、経済関係は熱い)から「政冷経冷」(政治も経済も冷え込んでいる)に転じたとされる。その典型として持ち出されるのが、日本から中国への直接投資の急減である。確かに、日本から中国への直接投資は、2013年に前年比マイナス4.0%となった後、2014年1月-10月は同マイナス42.9%を記録するなど、急減している(中国商務部の統計)。それでは、日中間の政治関係改善で状況は大きく好転するのか? その気運が高まることは喜ばしいが、事はそう簡単ではないだろう。  国際協力銀行が2013年11月に発表した「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」によると、中国事業の中期的な懸念として掲げられたのは、(1)労働コスト上昇・労働力確保困難(全体の32.6%)、(2)他社との競争激化(25.3%)、(3)中国経済の減速(23.6%)、(4)日中間の政治的な関係の行方(17.4%)、の順であった。懸念の上位は経済的な問題なのである。今後も、中国に進出するか(中国事業を拡大するか)否かを経済的観点から冷静に判断しようという動きが続くのではないか。(情報提供:大和総研、編集担当:徳永浩)
日本の安倍晋三首相と中国の習近平国家主席が2014年11月10日、APEC首脳会議の場を利用して、2年半ぶりに直接対話の機会を持った。この日中首脳会談について、大和総研経済調査部シニアエコノミストの齋藤尚登氏が11月26日にコラムを発表し、日中の経済関係の好転には「事はそう簡単ではないだろう」と慎重な見方を示した。
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2014-11-27 08:45