12月後半は大きな変動幅に注意=外為オンライン佐藤正和氏

 日本銀行の追加緩和があって以降、一気に10円近くも円安が進んだ11月相場だったが、果たして12月はどんな相場になるのか。消費税増税延期、衆院解散、総選挙スタートという具合に、めまぐるしく変化する外部環境だが、為替相場はどんな展開になるのか。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和氏に、12月相場の行方を伺った。(写真は佐藤外為オンラインの佐藤正和氏、写真撮影サーチナ) ――日銀による追加の量的緩和が発表されて以降、急速に円安が進行しましたが、どこまで行くのでしょうか?  金融緩和が発表される直前の水準が、1ドル=109円20銭程度でした。それが一気に円安が進んで、11月27日現在で118円台にまで届いています。短期間で10円近く動いたわけですが、その背景は言うまでもなく、量的緩和、消費税増税延期、衆院解散という大きな変化があったからだと思います。  当初は、追加の量的緩和と消費税率アップがセットになって実施されたもの、という思いがありましたが、日銀の単独行動になってしまいました。消費税増税が延期されたことも円安要因のひとつになり、大義名分のない総選挙実施でさらに円が売られた、という構図です。  もっとも、一直線に120円台に入っていくと思われたドル円相場も、麻生財務大臣の発言によってストップしており、今後はしばらくもみ合いの状態が続くかもしれません。12月5日の米国雇用統計の発表や総選挙の結果によって相場が動くまでは、現在の膠着状態が続くかもしれません。 ――一方の米国経済は? 12月のドル円相場の見通しを教えてください。  米国経済はおおむね順調に推移しており、雇用統計も大きな波乱はないと思います。最近は、雇用統計発表直後に「LMCI(労働市場情勢指数)」が発表されるようになり、その数値に注目が集まっています。雇用に関わる19の指標をFRBが集計した総合指数で、非農業部門雇用者数や失業率といった雇用の一面しか見ていない指数に比べて、雇用市場全体を示すものとして注目されつつあります。 また、12月16日に実施されるFOMCではイエレンFRB議長の記者会見もあります。そこでの発言から、利上げのタイミングを計るコメントが出てくるのか注目したいところです。 12月のドル円相場のレンジは、1ドル=116円-122円というところでしょうか。米国の長期金利が依然として2.26%付近で低水準にあり、リスク資産である株などに流れているとみられます。一気に、1ドル=130円程度にまで円安が進むという見方をする人もいますが、現在の情勢では122円当たりがめどになるのではないかと考えています。 ――「ユーロ」が対ドルでは膠着状態のようですが?  ユーロは、1ユーロ=1.23ドルになると跳ね返されている状況ですが、その一方で円に対しては大きくユーロ高円安が進みました。12月4日に行われる「ECB」の理事会で、量的緩和が実施されるかどうかが注目されていますが、ドイツなどの強硬な反対で、なかなか前に進めそうもありません。  米ドルに対しては膠着状態が続いていますが、ユーロ円についてはドル円相場の円安の影響を受けており、円の下落とともにユーロでも大きく下げています。2年ぶりの円安というところですが、今後もドル円の影響を受けて円安が進むのではないでしょうか。  12月のレンジとしては、ユーロドルで1ユーロ=1.22ドル-1.26ドル、ユー円では1ユーロ=142円-147円、というところでしょうか。とりあえずは12月4日のECB理事会の結果待ちというところですが、ドイツの経済統計が上向きつつあるなど、新しい動きが出ていることにも注目しておきましよう。 ――100円の大台を超えた「豪ドル円」はどう見ればいいのでしょうか?  豪ドルは対円では大きく円安の方向に動いていますが、米ドルに対しては実はほとんど動いていないのが現実です。日銀による追加の量的緩和発表以降の動きを見てみると、対円では11.4%も円安方向に動きましたが、対米ドルについては1.4%しか動いていません。  ユーロ同様に、豪ドルもまたドル円相場の円安トレンドの影響を大きく受けているということでしょうか。12月16日に実施されるRBA(オーストラリア準備銀行)の金融政策委員会の動向には注目しておきたいものです。利下げはないでしょうが、伝統的に利上げに対しては早期に決断してくる可能性もあります。  12月のレンジとしては、1豪ドル=98円-103円と読んでいます。日本から直接購入される豪ドル債券などの直接投資の金額が、1兆4000億円に達したという報道もありましたが、高金利の豪ドルに対する人気は依然として高いようです。  ――12月相場のトレードの注意点、ポイントは何でしょうか?  12月は第2週目以降になると、欧米のトレーダーがクリスマス休暇に入っていくために、市場は閑散となるためボラティリティが大きくなる傾向があります。さらに、総選挙も12月14日に控えており、大きな変動幅があるかもしれません。  いまや、日本の個人投資家を示す「ミセスワタナベ」の資金量は250億ドルとも言われており、先物市場に投資するプロの投資家が投資する「シカゴ筋」の100億ドルを大きく上回っています。それだけ個人投資家の思惑が市場を左右するということですが、しばしばミセスワタナベは失敗します。  ここに来てさすがに円安に乗る投資家が主流になっていますが、大きなトレンドは円安でも、瞬間的に円高に振れることもあります。相場をきめ細かくウォッチすることが大切です。(取材・文責:サーチナ・メディア編集部)
日本銀行の追加緩和があって以降、一気に10円近くも円安が進んだ11月相場だったが、果たして12月はどんな相場になるのか。消費税増税延期、衆院解散、総選挙スタートという具合に、めまぐるしく変化する外部環境だが、為替相場はどんな展開になるのか。
gaitameonline,economic,fxExchange
2014-11-27 17:15