野村證券、「今年のNISA」の枠で今年中に投資する2商品を提案開始

2014年1月にスタートしたNISA(少額投資非課税制度)、2014年分の国内株式の買い付け最終日は12月25日。証券業協会の調べでは1口座当たりの投資実施額は71万円(8月末現在)。1年間の投資限度額100万円を使い切っていない方が相当数いることがわかる。「今年のNISAは、今年だけ」というキャンペーンを展開している野村證券から、「NISAの使い残し枠を消化するに相応しい商品」として「野村時間分散投資『日経225・国内債券』(限定追加型)」<愛称:地道にコツコツ>と「野村ターゲットプライス『日経225』(国内債券運用移行型)」<愛称:タッチ&スイッチ>の2ファンドが提供され、話題になっている。
野村證券では12月1日から店頭での取り扱いも開始する予定で、新たな投資家層の広がりが期待できるだろう。新商品の企画に携わった野村證券ネット&コール部商品制度企画課長の梅津乾三氏(写真:左)と、商品を設定・運用する野村アセットマネジメントの投資信託ビジネス戦略部企画チームシニア・マネージャー吉川龍也氏(写真:右)に、野村證券が提案している新商品の内容について聞いた。
――11月21日に野村證券のネット&コールで取扱いが始まった2つの新商品は、御社が「2014年のNISA枠の使い残しに対応して用意した商品」と話題になっていますが、どのような意図で企画されたのですか?
梅津 「今年のNISAは、今年だけ」というキャンペーンを展開していますが、非課税で投資が可能なNISA口座には、年間で100万円の投資枠が用意されているので、せっかくですので今年の枠は使い切っていただきたい。そのために相応しい商品は、どのような商品なのだろうと考えたのが企画のスタートです。
今年の夏くらいから、野村アセットマネジメントと協議を重ね、お客さまのニーズに適い、かつ、現在の投資環境にもマッチした商品について、様々な角度から検討してまいりました。
まず、NISAで口座を開いてくださった方々の傾向として、「投資が初めて」、または、「投資の経験が浅い」という方も多いということが分かっていました。そして、そのような投資経験の浅い方々にインタビューをすると、「NISA口座を開いてみたが、何に投資すればよいのかわからない」として投資ができない方、また、「買い時、売り時がわからない」など、投資のタイミングを探して投資に踏み切ることができないという方が多いことが分かりました。そこで、このようなお客さまの迷いに対して、私たちの方から提案できる商品を開発したいと考えました。
――運用会社として、年末に設定するNISA向けの商品という企画に対して、どのような考えで取り組んだのですか?
吉川 運用会社にとってもNISAは大きなチャンスですので、当社でも「NISA意識調査」などを実施し、お客さまのNISAのご利用実態を調査していました。その結果、英国のISA制度と同様に「年末が近づくと、100万円の枠を使い切ろうとするNISAシーズンがやってくる」という予測を立てることができました。
NISAで初めて投資をする方々に多いのが、毎月一定額を積み立て投資するという方法です。ドルコスト平均法による時間分散投資の効果もあって、投資リスクを相対的に小さくする効果があり、初めての投資の方に向いている投資方法といえます。ところが、年末に近付き「投資枠を使い切る」という発想では、ある程度まとまった資金を一度に投資することになります。その際に、不安感をあまり感じることなく投資できる仕組みはないかと考えました。
――具体的な商品の内容は?
吉川 「野村時間分散投資『日経225・国内債券』(限定追加型)」<愛称:地道にコツコツ>は、まさにNISAの投資枠を年内に使い切ろうと考える、投資家に向けた商品になっていると思います。
このファンドは、12月24日の今年のNISAの買い付け最終日まで購入ができる期間限定で募集するファンドです。購入していただいた資金は、当初は国内債券だけに投資します。そして、2015年1月から毎月、36回に分けて日経225に投資していきます。その結果、2017年12月には当初の投資金額は、債券への投資成果も含めて、全て日経225に投資された状態になります。
このようにファンドの内部で、毎月の積立投資を行うことができるようにしました。積立投資をされてきた方には、一度にまとまった資金を投資しても、毎月分散して日経225を買い付けていくことと同等の効果が得られるので、安心してまとまった資金を投資していただけると思います。
このファンドは信託期間を2020年12月18日までにしていますが、これは2020年に開催される東京五輪およびパラリンピックに向けて、国内経済が刺激され、株価上昇の期待が持てるので、その効果を狙っていただこうという意図があります。17年12月以降の3年間は、日経225の推移に連動した投資成果になります。
梅津 「日経225」と「国内債券」の組み合わせは、分かりやすさを重視した結果です。外国株に投資して、為替の円安効果を運用収益に取り込むという考え方もできたのですが、外国株価の値動きを確認する機会が少ないことと比較して、「日経225」であれば、日々のテレビのニュースでも、その日の値動きが確認できます。
また、このように最初は国内債券に100%投資して、分割しながら株価指数を買い増していくというタイプの運用をするファンドは、これまでになかった日本で初めての仕組みです。
吉川 「野村ターゲットプライス『日経225』(国内債券運用移行型)」<愛称:タッチ&スイッチ>は、当初は日経225で運用し、基準価額が12000円以上になった場合、その後は国内債券による運用に切り替えるというものです。こちらは、追加型で、いつでも購入・解約が可能です。信託期間は2020年12月18日までにしました。
さきほど、投資に慣れていない方の声では、「売り時が分からない」という話がありましたが、このファンドであれば、一定水準に達すれば、自動的に安定運用に切り替わるので、売り時のタイミングを考える必要がありません。
投資対象が一定水準に到達した場合は、安定運用に切り替えるというタイプのファンドは単位型で設定されることが一般的ですが、これを追加型で提供し、目標価格に到達後も運用を継続します。NISAという投資非課税のメリットを考えれば、国内債券の運用でも投資継続のメリットは活きると思います。
「地道にコツコツ」、「タッチ&スイッチ」ともに、販売手数料は1.08%(税抜1.0%)、信託報酬は純資産総額に年0.54%(税抜年0.50%)です。それぞれ、国内株式と国内債券に分散投資するバランス型ファンドとしては、手数料水準は低いクラスの商品にしました。
梅津 「タッチ&スイッチ」は、追加型なので、購入後に日経225が大きく下がった場合は、安い価額で買い足していただくこともできると思います。
――2本のファンドを用意した意図は?
梅津 「地道にコツコツ」は、“いつ買えばよいのか分からない”というお客さまに、いつ買ってもコツコツと毎月、小分けにして日経225を購入することと同様の効果が得られるファンドです。
一方、「タッチ&スイッチ」は、“売り時が分からない”というお客さまに対して、売却のタイミングをあらかじめセットしたファンドとして提供を考えました。
「買い時」、「売り時」について、それぞれ迷っておられるお客さまに提案しようと思って2つのファンドを用意したのですが、実際に販売を開始してみると、両方をセットで購入されるお客さまも少なくありません。また、決して投資初心者の方のみが購入されているのでもありません。株式、投資信託など保有資産の中でのバランスを考えたうえで、これらのファンドを購入いただいている面もあるかと思います。(取材・編集担当:徳永浩)
野村證券から、「NISAの使い残し枠を消化するに相応しい商品」として「野村時間分散投資『日経225・国内債券』(限定追加型)」<愛称:地道にコツコツ>と「野村ターゲットプライス『日経225』(国内債券運用移行型)」<愛称:タッチ&スイッチ>の2ファンドが提供され、話題になっている。(写真は、野村證券の梅津乾三氏<左>と、野村アセットマネジメントの吉川龍也氏。サーチナ撮影)
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2014-11-28 17:45