成長目標を下げた中国で日本企業が取るべきブランド戦略
日本経営管理教育協会が見る中国 第336回--大森啓司(日本経営管理教育協会会員)
● 中国経済と日本経済の動向
中国は年間の経済成長率の目標を2015年度は3年ぶりに引き下げる方向で調整に入っている、過去、そして本年は「7.5%前後」としていた目標を来年度は7%前後と下げる案が有力だ。成長速度を緩めていき、持続可能な水平飛行に徐々にかじ取りし、持続的な安定軌道を目指している。昨年(2013年)3月に習近平政権が発足して以降、高成長よりも、質の高い安定成長、市場重視の改革推進を確実に進めていると思われる。
一方、日本経済は最近の原油安により、運輸関連企業や家計には追い風となっており、年末商戦に拍車がかかると予想されている。自動車大手メーカーでつくる自動車総連では、来年度、6年ぶりの月6000円以上のベアが期待されている。
今回は、水平飛行に入った中国で今後どのようなブランド戦略が有効なのかを、実際に中国進出している日本企業を見ながら考えてみたい。
● 中国経済の推移の中で健闘する日本企業
第334回のコラム「「餃子の王将」の中国(大連)からの撤退に学ぶ」では、日本のビジネスモデル、もしくは食文化の差が中国でいかに難しいものであるかを論じた。これは、中国の安定期による副産物という見方もできると判断される。
もうひとつ、日本から中国に進出した小売業に「ユニクロ」がある。同社を展開するファーストリテイリングは、中国人消費者をうまく取り込んだ日本企業の典型である。同社は愛国心の強い内陸部にも進出しているが、ユニクロを日本のブランドだと知らない中国人は多い。内陸部は北京や上海と異なり、世界ブランドに触れる機会も少なく、どこの国のブランドかを意識している人は少ない。
同社の海外売上構成比は3割を占め、成長エンジンになっている。その海外売上の約半分を中国が占めており海外事業の要となっているのだが、中国国内でも地域によってジャパンブランドで推し進めたり、高品質で進めたり、その戦略は巧みだ。親日家の多い香港ではポスターに日本語を採用するなどの、中国では考えられない対応である。今後も各地域の反日感情やブランド力を見ながら、水平飛行に入った中国経済を物ともせず益々の発展が期待されている。
● 反日感情とこれからの中国経済
ファーストリテイリングは報道機関に対して、中国での売り上げは公表していないが、日中対立による影響は殆んど見られないという。2012年の反日デモの際には、自動車メーカーなど多くの日系企業が大きな打撃を受けた。この差は、国籍を感じさせないブランド力、品質力によるものが大きいと判断される。
政治の力もあり日本の景気は少し改善、中国は水平飛行。このような環境の中で、これからも同社が世界ブランドとして躍進していくことを期待したい。
写真は北京王府井にあるユニクロ1号店。(執筆者:大森啓司・日本経営管理教育協会会員 編集担当:水野陽子)
中国は年間の経済成長率の目標を2015年度は3年ぶりに引き下げる方向で調整に入っている、過去、そして本年は「7.5%前後」としていた目標を来年度は7%前後と下げる案が有力だ。成長速度を緩めていき、持続可能な水平飛行に徐々にかじ取りし、持続的な安定軌道を目指している。
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2014-12-10 12:00