梁長官、2回目の施政報告――低所得層支援に重点=香港ポスト

梁振英・行政長官は1月15日、就任後2回目となる2014年度施政報告(施政方針演説)を立法会で発表した。「恵まれない人々を支援し、若者の活躍を促して、香港の可能性を解き放つ」と題する施政報告は、経済、低所得層・高齢者・弱者支援、次世代育成、住宅・交通、環境保護、医療などに関する政策を柱としている。新たにワーキングプアーの家庭向けに生活手当を設けるなど、低所得層や弱者に対する支援に重点が置かれている。
● ワーキングプアーに手当支給
「施政綱領」では新たな措置として160項目余り、引き続き推進する措置として430項目余りが挙げられ、梁長官は「関連政策と措置を実施するには一般歳出を大幅に増やさなければならない。これは現政権が長期的に蓄積した問題を根本的に処理する決意を示している」と説明。特に低所得層・高齢者・弱者への支援、青少年育成、公共医療サービスの向上に力を入れることを強調した。14/15年度の一般歳出は前年度より200億ドルも増えるとみられている。
今回の施政報告では貧困対策の「低所得在職家庭手当」が目玉といえる。児童を持つワーキングプアーの家庭を優先的に支援するもので、就業を奨励し生活保護への依存を防ぐこと、さらに世代をまたぐ貧困の悪循環を断ち切ることを目的とする。このため手当は家庭を対象とし、就業と労働時間にリンク、児童がいる場合は割り増しとなる。世帯収入中位数の半分以下の家庭で在職・労働時間の条件を満たせば毎月の基本手当600ドル(労働時間144~208時間)または1000ドル(同208時間以上)を全額受給、児童がいる場合は1人につき800ドル加算される。12年のデータに基づくと、児童2人の4人家族で月収1万4400ドル以下の場合、月2200ドルまたは2600ドルを受給できる。同措置による年間支出は30億ドル、低所得家庭20万世帯余り、計71万人が恩恵を受けると見積もられている。
ほかにも低所得層・高齢者・弱者に対する支援が数多く講じられ、マイノリティー学生向けに中国語課程を設けたり、高齢者医療クーポンの倍額、昨年施行された高齢者向け生活保護の広東省での支給検討などが盛り込まれている。
経済対策としては金融業の発展や新興市場開拓などが盛り込まれた。昨年設置された金融発展局は人民元業務、資産運用、不動産投資信託(REIT)などに関する報告書を提出しており、これに基づき金融業の発展を促進する。新興市場開拓ではアジア地域での経済貿易弁事処の増設を検討。新興市場の開拓と連携を強化し、貿易を促進する。中央政府の支持を得た東南アジア諸国連合(ASEAN)との自由貿易協定も正式に協議を始める。経済貿易弁事処は中国本土でも増設する方針だ。また港珠澳大橋の開通に向けランタオ島開発を進めるための「ランタオ島発展諮問委員会」を設置するほか、梁政権発足時に頓挫した機構改革に含まれていた創新及科技局の設置をあらためて推進する。
● 10年で47万戸の住宅供給
市民が注目した住宅政策では、47万戸を今後10年の新たな住宅供給目標にすると発表。うち60%は公共住宅が占める。これは住宅政策を検討する長遠房屋策略督導委員会(長策会)の提案に基づく。政府はすでに供給を承諾した賃貸型公共住宅17万9000戸と分譲型公共住宅1万7000戸を建設する用地を確保し、賃貸型公共住宅約2万戸と分譲型公共住宅約8000戸を年間平均の供給目標とする。これにより今後10年の公共住宅供給量は昨年の政府の承諾より36%増える。
香港島西南部でのMTR整備に伴い、薄扶林南部の団地再開発などで約1万1900戸の公共住宅を供給。これに合わせMTR南港島線(西区間)建設を含めた2020年以降の鉄道建設計画をできるだけ早く発表するという。このほか新界東北部の開発で約6万戸(うち公共住宅60%)供給、新界西北部の洪水橋の開発で17万5000人を収容、ランタオ島東涌のニュータウン拡大で5万3000戸を供給するなどの計画が進められている。
香港大学民意研究計画は先に市民が施政報告に望むことに関する世論調査を行った。調査は昨年12月末から今年1月初めにかけて1000人余りを対象に行われた。重点的な処理が必要と考える問題としてトップに挙がったのは住宅の71%だが、13年の調査より6ポイント縮小した。2位以下は医療の58%、経済の56%、社会福祉の52%、政治体制の46%となっている。13年の調査より縮小したのは住宅、社会福祉、医療で、特に社会福祉は9ポイントも縮小。一方で政治体制は13ポイントの大幅な拡大、経済問題も1ポイント拡大した。
「セントラル占拠行動」が取りざたされていることや昨年12月に政治体制改革の公開諮問が始まったことを受け、普通選挙問題への関心が高まったことが背景にあるとみられる。だが施政報告では政治体制改革についてわずかな言及にとどまった。むしろ低所得層などへの支援に力を入れ、政府に対する市民の反感を抑えることが先決とにらんだのだろう。
《施政報告の主な内容》
①経済
・金融発展局の報告書に基づき金融業の発展を促進
・アジア地域で経済貿易弁事処を増設
・ASEANとの自由貿易協定の協議開始
・ランタオ島発展諮問委員会を設置
②低所得層・高齢者・弱者支援
・低所得在職家庭手当を導入
・関愛基金の7プログラムを恒常化
・高齢者向けコミュニティーケア・サービスクーポンの拡大検討
・広東計画で高齢者向け生活保護の適用検討
・高齢者医療クーポンを年間2000ドルに倍額
③次世代育成
・14/15年度と15/16年度の就学前教育助成金を年間2500ドルに増額
・内外での学位取得教育の助成金枠を2120人分追加。中国本土での進学には経済支援も提供
・青少年の職業教育を強化
④住宅・交通
・今後10年の住宅供給目標47万戸
・年間平均の公共住宅供給目標は賃貸型約2万戸、分譲型約8000戸
・薄扶林南部で約1万1900戸の公共住宅を供給
・MTR南港島線(西区間)建設を検討
⑤環境保護、医療など
・可持続発展委員会が社会の意見をまとめ廃棄物の処理費用徴収制度を政府に提案
・リサイクル基金設立に10億ドル拠出
・将軍澳に中医学病院を建設
・大腸がん検査に助成金
(執筆者:香港ポスト 編集部・江藤和輝 編集担当:水野陽子)
梁振英・行政長官は1月15日、就任後2回目となる2014年度施政報告(施政方針演説)を立法会で発表した。「恵まれない人々を支援し、若者の活躍を促して、香港の可能性を解き放つ」と題する施政報告は、経済、低所得層・高齢者・弱者支援、次世代育成、住宅・交通、環境保護、医療などに関する政策を柱としている。新たにワーキングプアーの家庭向けに生活手当を設けるなど、低所得層や弱者に対する支援に重点が置かれている。
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2014-01-20 10:30