中国環境ビジネスはうまくいくのか――APECブルーに想う
日本経営管理教育協会が見る中国 第337回--高橋孝治(日本経営管理教育協会会員)
● 「エイペック・ブルー」
去る11月10日から11日に北京でアジア太平洋経済協力(APEC)が行われたことは日本でも大きく報道された。同時に北京の大気汚染の話題も大きく報道されているが、APEC開催時は、「なぜか」この大気汚染が「なくなって」いた。
北京周辺にある工場を政策的に停止させ、大気汚染が起きないようにしたのだという。現地の中国人はAPEC時の青い空を見ながら、「エイペック・ブルー」だと笑い飛ばしていた。
そして、あまり報道はされていないようだが、APECが終わった後、北京周辺ではいつもより酷い汚染が始まった。恐らくはAPEC時に停滞した生産を追いつかせようとより大きく工場を稼働させたのだろう。
● 中国環境ビジネスの行方
さて、これをどう見るか。現在、中国の環境汚染に目を付けて、「中国の環境ビジネス」を行っている者が多くいる。しかし、このAPEC前後の汚染状態を見ると、そのビジネス自体を懐疑的に見てしまう。つまり、中国の環境汚染も「政府がやる気になれば、止められる」ということがハッキリとしたからである。APECで各国から来る首脳に対する「メンツ」のために青い空を見せたかったとも言われているが、何とも露骨な話である。
要するに、中国では政府が環境よりも経済発展などを優先させているということが、APECで明らかとなった。政府の目指す方向と逆向きで、ビジネスが本当にうまくいくのだろうか。もちろん、汚染状態がいいわけがないことは誰の目からも明らかで、環境ビジネスはある程度はうまくいくだろう。しかし、根本的な解決や中国での環境汚染の根治は起こらないということである。むしろ経済発展を阻害するような汚染対策、非常に高額な汚染対策を提示したら断わられる公算が高いのではないだろうか。
● 中国と日本の違いを理解しよう
よく中国の環境汚染について「日本も同じ道を通ってきた」と言われることがある。だから、中国だけが特別ではないという意味だ。しかし、中国と日本の環境汚染は根本から異なる。日本でなぜ環境汚染が減っていったのかと言えば、公害訴訟などで被害者側が勝訴して、世論を動かしたからである。もちろん、公害訴訟で勝訴するまでには、週刊誌に「工場を止めてどうする?」「大企業のせいにして賠償金をせびる寄生虫のような『公害被害者』」などと、公害被害者も大バッシングを受けていたという話は聞く。しかし、それでもあきらめない「被害者の意地」が世の中を動かしたのである。
しかし中国では司法の独立が確保されていないため、「経済発展を優先する政策」に逆らってまで勝訴できることはまずない。結局は、中国の環境汚染問題も、最終的には司法の独立やそれを支える民主主義の完備につながる問題なのである。
中国人もこれをわかっていて考えないようにしているか、諦めているのだろうか。冒頭で述べたように、「エイペック・ブルーだ」と笑い飛ばす中国人に対して、ある種の驚きを禁じ得ない。「政府がやる気になれば環境はよくなる」と政府への怒りを露にしないのである。
写真は環境対策をアピールする横断幕。(執筆者:高橋孝治・日本経営管理教育協会会員 編集担当:水野陽子)
去る11月10日から11日に北京でアジア太平洋経済協力(APEC)が行われたことは日本でも大きく報道された。同時に北京の大気汚染の話題も大きく報道されているが、APEC開催時は、「なぜか」この大気汚染が「なくなって」いた。
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2014-12-17 11:30