富士山マガジンが業界初の定期購読キャンペーン、雑誌の最新号から最大2冊無料に

雑誌の定期購読ECサイト「Fujisan.co.jp」を運営する富士山マガジンサービスは、小学館、講談社、集英社、マガジンハウスなど計77社、161の雑誌が参加する業界初の最大2冊無料とした定期購読キャンペーンを展開している。同社代表取締役社長の西野伸一朗氏は、今回のキャンペーンの狙いについて「雑誌から景気回復を応援する『マガノミクス』によって、質の高い有料情報から得られる“知識の蓄積”による豊かな暮らしへのきっかけづくりにしていただきたい」と語っている。西野氏に、同社が提唱する「マガノミクス」について聞いた。(写真は、富士山マガジンサービス代表取締役社長の西野伸一朗氏。サーチナ撮影)
――日本初の雑誌に特化したECサイトとして2002年にスタートした「Fujisan.co.jp」ですが、現状は?
富士山マガジンサービスのスタートは、そもそもアマゾンの日本進出にあたってオンラインブックストアの開設に参画したことがはじまりです。出版関係のECサイトの設立に取り組んでいた時に書籍の販売と、雑誌の販売は異なるノウハウが必要なことが分かりました。当時、米国のEC市場のリサーチも行い、雑誌はサブスクリプション(定期購読)モデルを機能させないとうまく行かないことが分かってきました。そこで、アマゾンとは違うECサイトを立ち上げることにしたのです。
現在では海外雑誌も含めて1万タイトル以上の雑誌を定期購読で提供している他、5000タイトル・9万号以上のバックナンバーを揃え、2000タイトル以上のデジタル雑誌の定期購読・バックナンバーを提供しています。これまでに累計で150万以上の定期購読者に利用していただいています。
――現在取り組んでいる「マガノミクス」とは?
「雑誌」などの有料情報を賢く継続的に取り入れることで、「自己の成長」につなげ、豊かな暮らしを実現しようという一連の活動を「マガノミクス」と命名しました。「雑誌」などによる質の高い有料情報から得られる知識は、自身の成長を促し、それが仕事や趣味に活かせる豊かな暮らしの源泉になります。
また、「雑誌」は、ひとつのメディアですが、それぞれの読者にフィットした商品を届けるツールにもなりえるのです。「雑誌」を購読するという強い興味・関心を持っている分野では、それに関連のある商品やサービスへの消費を促す効果があります。たとえば、旅行雑誌を定期購読している読者は、旅行に対する興味・関心がそれだけ強いのですから、旅行に関する商品を購入するニーズは、他よりも強いのです。
このような、定期購読者のデータをプラットフォームにして、より効果的な販促ツールとして活用していくことを「マガコマース」と名付けていますが、これらを含めて、「雑誌」によって人生を豊かにし、その豊かな暮らしに伴う消費を生み出していくことを「マガノミクス」と呼んでいます。「アベノミクス」をもじった命名ですが、有料情報を継続的に蓄積することによって、個人の知見や能力を一段とパワーアップすることによって、経済をさらに力強く押し上げる「第4の矢」になり得るとも考えています。
一方で、有料情報を継続的に、賢く出費を抑えて手に入れる節約術のひとつとして「定期購入」という方法を案内しています。同じ雑誌を毎週毎月購入している人には「定期購読」を使った方が、割引制度があって断然お得です。
一般に定価販売が守られる「再販制度」が存在する出版業界で、大型割引キャンペーンはありえません。それが、日本を代表する小学館、講談社、集英社という大手の出版社にも協力していただけるような、今回の「最大2冊無料」というキャンペーンが実現できたのも、「定期購読」をベースにしたビジネスを展開していることで可能になりました。
――「ちょっと待って! 今買おうとしているその雑誌、無料かもよ 最大2冊無料『定期購読』お試しキャンペーン」を展開されていますが、どのようなキャンペーンですか?
2014年12月25日までの期間限定で実施しているキャンペーンです。雑誌の定期購読をお申込みいただいた方に、最新号と次の号を無料で提供し、3号目以降に料金が発生する仕組みになっています。
たとえば、「With(ウィズ)」、「東京カレンダー」、「ミセス」などの月刊誌は、今月号と来月号が無料(送料無料)になります。月2回刊の「BRUTUS(ブルータス)」は1カ月分が無料ですし、「週刊朝日」、「SPA!」などの週刊誌は2週間分が無料になります。この無料期間で、定期購読を中止することもでき、その際は、お届けした雑誌は、無料でそのまま手元に残ります。無料で送付できる数量に限度はあり、また、雑誌によっては半額ということもありますが、数多くの有名誌を網羅した全161誌が対象です。
この企画は、日頃、書店やコンビニ等で雑誌を購読されている方のみならず、今まで雑誌に触れる機会がなかった方にも「雑誌」の魅力を十分に体験していただき、少しでも多くの方に「雑誌」に親しんでいただきたい。また、「定期購読」の魅力を知っていただきたいという思いから企画しました。
キャンペーンは12月5日にスタートしましたが、考えていた以上の反響をいただいています。
――今後の展望は?
今はインターネットが発達し、情報は無料で、ソーシャルで共有するのが当たり前という時代ですが、ネットでの情報のネタ元は、実は「雑誌」ということもあります。ネットで無料の情報があふれる中でも、出版社はわざわざ記者を雇い、取材して、手間暇かけたコンテンツを制作しているのです。ここには、それだけ労力をかけた付加価値があります。だからこそ、有料で販売されていますし、それを購読される読者の方々がいます。
そして、有料な情報を得ている方々は、差別化され、ライフスタイルがレベルアップするという恩恵があると思います。また、自身の趣味や教養を深め、成長する喜びを感じておられるのだと思います。今でこそ、情報は無料という風潮が強いのですが、いずれ、有料情報の価値が評価され、無料と有料の情報のバランスが取れてくると思います。
また、これまでのマス・マーケティングが通用しなくなって、より個々人の嗜好にフィットした商品をPRしていくように、細かくセグメント化されたマーケティングが注目されています。雑誌の定期購読の読者は、それぞれの雑誌に特徴付けられた特性のある方々です。たとえば、「月刊 住職」という雑誌の読者は、住職の方々か関係者でしょうし、「月刊 虫」は、昆虫に強い興味のある方々です。そのような雑誌が1万冊以上あり、過去のバックナンバーは9万号もあります。このような細分化された趣味・嗜好が反映された読者データと、その関連の商品・サービスの提供者とをつなぐプラットフォームの役割を担っていくことができると考えています。
「マガノミクス」の展開は、富士山マガジンサービスの新しいチャレンジでもあるのです。(取材・編集担当:徳永浩)
雑誌の定期購読ECサイト「Fujisan.co.jp」を運営する富士山マガジンサービスは、小学館、講談社、集英社、マガジンハウスなど計77社、161の雑誌が参加する業界初の最大2冊無料とした定期購読キャンペーンを展開している。(写真は、富士山マガジンサービス代表取締役社長の西野伸一朗氏。サーチナ撮影)
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2014-12-18 09:30