中国語学習者激減・・・隣国の巨大市場にもっと関心を持とう!

日本経営管理教育協会が見る中国 第338回--水野隆張(日本経営管理教育協会営業部長) ● 「世界の工場」と呼ばれた製造業中心から「世界の市場」に変身   中国政府系のシンクタンクの国務院発展研究センターが2013年にまとめた「中国経済成長の10年展望」によると、今後7~8%成長を続けた後、成長率を下げ、22年に5.8%となり、経済成長のパターンを「世界の工場」と呼ばれた製造業中心から、「世界の市場」に変身しつつ、小売業やサービス業、金融など国内需要を伸ばして拡大すると予測している。 ● 依然として高いレベルの成長は続く   今年になって、中国の成長の速度は鈍化傾向にあると言われているが、長い目でみれば、あるいは他の先進国の成長の度合いと比べてみれば、中国は依然として高いレベルの成長を続けていると言えるであろう。   反面、近年多発している反日デモや貧富の格差拡大問題、幹部の腐敗等、チャイナリスクと呼ばれるものが経済成長の懸念となることも挙げられている。   しかしながら、13億人以上という巨大マーケットを抱え、経済成長は内陸部へと拡大しており、また5000万人もの個人資産10万ドル以上の富裕層の存在によって中国の市場を益々巨大化させているとも言われている。このような中国の経済成長の背景には以下のような市場メカニズムの動きも存在しているようだ。 ● 中国における産業集積地においてグローバルな競争が繰り広げられている   中国の産業発展の大きな特徴は、海外からの直接投資による外資系企業の進出が、中国の地場産業も含めた産業集積地の形成につながっていったことである。外資系企業の進出が急増し、中国の製造業が急速に発展する中で、広東省の珠江デルタ周辺地域と上海及び蘇州を中心とする長江デルタ周辺地域等が産業集積地として大きく発展してきた。   そこには香港企業の進出に始まり、日系、台湾系、欧米系、韓国系等の企業が次々に大量進出し、また外資系をしのぐ力をつけた地場産業や厚みを増す部品企業などもあり、カメラ、テレビなどの家電、複写機、パソコン及び周辺機器等を中心とする世界有数の電子電機産業集積地が形成された。   このほか重慶といった地域などにおいても自動車産業等の製造業を中心とする産業集積地が次々と形成されている。これらの産業集積地を舞台に激しいグローバル競争が繰り広がれ、競争の激化を通じてさらに競争力のある産業集積地が形成されている。 ● 企業の競争力強化策「ワーストワン淘汰制」   中国の大手企業では、企業の競争力強化策として「ワーストワン淘汰制」を採用している。これは従業員業績評価制度で、6カ月ごとに「優秀」、「合格」、「要改善」という3等基準に基づき部門別に社員達の総合評価を行っている。「優秀」と評価される人に昇進・昇給のチャンスを与えるが、連続2回「要改善」と評価された人には辞めてもらうというものである。   確かにこの制度には冷酷な一面があるが、従業員に緊張感と危機感を持たせることで結果的には競争メカニズムが働き、企業の業績アップと効率化につながっている。このことは日本企業との国際競争力の消長にも影響を及ぼしかねないであろう。 ● 隣国の巨大市場にもっと関心を持って欲しい   中国には現在約2万5000社の日本企業が直接投資しており、そのうち約8000社が赤字経営に陥っていると言われている。またチャイナリスクを恐れて撤退している企業も増えているようだ。   一方、日本の私立大学で教えている中国人の中国語講師に聞いたところでは、最近日中関係の冷え込みから第二外国語としての中国語を選択する学生が激減しており、中国語講師の失業問題が起きているということである。   日本では少子高齢化によって国内市場は今後益々縮小するばかりであり、隣国の巨大市場へのアクセスには情報収集の面からも語学習得は必至であるはずで、長年中国との交流に励んできた者としては誠に遺憾に思う次第である。   写真は上海の街並み。(執筆者:水野隆張・日本経営管理教育協会営業部長 編集担当:水野陽子)        
中国政府系のシンクタンクの国務院発展研究センターが2013年にまとめた「中国経済成長の10年展望」によると、今後7~8%成長を続けた後、成長率を下げ、22年に5.8%となり、経済成長のパターンを「世界の工場」と呼ばれた製造業中心から、「世界の市場」に変身しつつ、小売業やサービス業、金融など国内需要を伸ばして拡大すると予測している。
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2014-12-24 11:00