2014年香港10大ニュース<2>=香港ポスト

❻高速鉄道の工事遅延・・・開通は17年にずれ込み   広深港高速鉄路(広州-深セン-香港間高速鉄道)香港区間は建設工事の遅れのため予定されていた2015年の開通には間に合わず、1年以上先送りとなることが分かった。香港鉄路公司(MTRC)が4月15日に記者会見を行い、工事完了は少なくとも9カ月遅れて16年となり、開通は早くとも17年にずれ込むと発表。主な遅延理由として ①3月30日の暴雨で元朗のトンネルが浸水し大型掘削機が故障 ②西九龍駅地下の地質と大量の公共パイプライン ③深セン河周辺の地質——の問題を挙げた。   立法会で5月5日、鉄路事宜小組委員会の会議が行われ、MTRC側から銭果豊・会長とジェイ・ウォルダー最高経営責任者(CEO)らが出席した。当初、政府は立法会で開通が遅れる可能性を示唆するつもりだったが、ウォルダーCEOが運輸及房屋局の張炳良・局長に電話で「15年末の開通は可能」と強調したため、MTRCを信用したことが明らかにされた。MTRCは5月8日の株主総会ではウォルダーCEOが来年8月で退任すると発表。ただし契約満了に伴うものと説明した。 ❼自由行を見直しへ・・・20%削減で経済への影響も   中国本土からの旅行者に対する香港市民の反感の高まりから自由行(観光目的の個人旅行)の見直しが取りざたされた。梁振英・行政長官は5月26日、策略発展委員会の会議で自由行による旅行者が20%減少した場合について意見を求めた。中央政府と香港特区政府は自由行問題について香港側の受け入れ能力などの調査研究を行っており、20%削減は1つの検討課題になっているもようだ。   立法会が5月に発表した研究報告によると、03年7月に自由行が始まって以来、04年には約270億ドルだった本土観光客による消費額は13年に6.3倍の約1700億ドルに達し、13年の小売総額4944億ドルの約3分の1を占めるまでになった。   だが社会には代償として日用品の供給、公共交通機関と地元施設の使用量への影響、そして繁華街の店舗の画一化などがもたらされた。感染症の影響などでひとたび自由行が停止されれば小売業界は一夜にして3分の1の収入源を失うというリスクも抱えている。 ❽不動産相場が過去最高・・・過熱抑制策はようやく可決   立法会で7月15日、前年2月に打ち出された不動産市場の過熱抑制策「2013年印花税(修訂)条例草案」が可決された。可決前には曽俊華(ジョン・ツァン)財政長官が5月に住宅価格が顕著な伸びを示したことを指摘し、同草案が通過しなければ「市場環境の変化に迅速に対応することは難しくなる」とバブル再燃を憂慮していた。   住宅市場の過熱は抑制策によって下火となったものの、再び上昇傾向に戻った。特区政府差餉物業估価署が発表した5月の住宅価格指数は246.8で、ピークに当たる前年8月の246.3を上回り過去最高となった。5月13日に発表された不動産抑制策の緩和が市場を刺激したとみられる。10月の住宅価格指数は270.1となり、さらに過去最高を更新。年初からの累計では10.2%の上昇となり、前年通年の5.4%の倍の伸び率となった。 ❾新聞界への襲撃相次ぐ・・・報道の自由めぐり抗議デモ   『明報』の劉進図・前編集局長が2月26日、暴漢に襲われ重体となり、香港社会を震かんさせた。3月12日までに9人が逮捕され、いずれも香港市民だった。劉氏は1月20日の人事異動で系列の世華網絡資源営運総監に転任。前年10月の無料テレビ放送免許をめぐる過度な報道が経営陣の不満を買ったとみられている。   続く3月19日には創刊準備中の中文紙『香港晨報』の利婉嫻・副総裁と新聞部幹部の林健明氏が襲われた。同紙は中国政府など本土からの資金で発行するとのうわさが流れていたが、『香港晨報』準備委員会はすべて地元資金と強調した。   香港報業公会など5大報道関連団体は3月2日、報道に対する暴力に抗議するデモを開催するなどで報道の自由をめぐる問題が注視された。 ❿フィリピンへの制裁発動・・・香港人ツアー人質事件で   フィリピンで発生した香港人ツアー人質事件をめぐる事件が3年8カ月を経て一段落した。2013年11月7日、3年前の人質事件をめぐるフィリピンに対する制裁議案が可決され、特区政府は14年2月5日、フィリピンに対する第1段階の制裁を実施。フィリピンの外交・公用旅券所持者に対する14日間のノービザ入境停止。年間700~800人が影響を受けることになる。   だがフィリピンのアキノ大統領は米紙『ニューヨーク・タイムズ』のインタビューで、法的責任を問われるのを避けるため、謝罪する意思のないことを表明した。   4月23日、梁振英・行政長官は来港したエストラダ・マニラ市長とアルメンドラス大統領府長官と会談。フィリピン側が特区政府の提示した謝罪や賠償など4つの要求に答えて合意した。(執筆者:香港ポスト 編集部・江藤和輝 編集担当:水野陽子)
2014年は行政長官の普通選挙問題をめぐり「セントラル占拠行動」が発生。それに先駆けて民主派への政治献金が暴露されるなど、背景の一端をのぞかせた。占拠行動の最中にスタートした上海・香港両証取の相互乗り入れや、広州と香港を結ぶ高速鉄道の工事遅延問題も注目された。昨年の主なニュースを振り返る。
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2014-12-29 01:45