トレンドは円安株高が続くものの変動幅は大!=外為オンライン・佐藤正和氏

 日銀による「黒田バズカー砲」第2弾以来、為替市場では急速な円安が進んだ。そのまま円安が進むかと思われたものの、1ドル=122円台で頭打ちとなった。その後、ロシアルーブル急落、原油価格の大幅安などが重なって、1時は115円台にまで円高に戻す場面も見られたが、再び円安に戻るなど円安トレンドは堅調に見える。安倍第3次内閣も発作し、いよいよアベノミクスの真価が問われる2015年を迎える。その最初の1月、いったいどんな相場になるのか。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和氏に、新年1月相場の行方を伺った。(写真は外為オンラインの佐藤正和氏、写真撮影サーチナ) ――ルーブル安、原油安で円高が進みましたが、一転して再び円安に戻っています。その背景には何があるのでしょうか?  やはり、米国FRBが出した絶妙な言い回しの声明文が市場に安心感を与えた、と考えていいと思います。フォワードガイダンスの一部が変更されて、利上げを開始するまでの期間を「忍耐(Patient)強く」できるとしました。さらに、過去の声明文を引用する形で「(ゼロ金利政策を)相当な期間継続する」という文言も残しています。  くわえて、イエレンFRB議長がインタビューで「現時点では、今後少なくとも向こう2回のFOMCで、正常化プロセスの開始決定をする条件は整わないだろう」と発言しました。年8回のFOMCのスケジュールから考えると、利上げは早くても来年4月以降になるわけで、市場関係者に安心感を与えたと言っていいでしょう。  ロシアルーブル下落や原油価格の下落など不安材料は残りますが、とりあえず安心感が戻り「リスクオン」に戻ったと考えていいのではないでしょうか。1月9日の雇用統計の発表なども、安心して迎えられると考えていいと思います。 ――日本は自民圧勝、安倍第3次内閣が発足しました。1月のドル円相場の見通しを教えてください。  原油安の影響は、むしろ日本経済のほうがその恩恵も含めて大きいかもしれません。とくに、日銀が目指す2%のインフレ率は原油安の影響で消費者物価指数(CPI)を押し下げる要因になります。11月のCPIも2.5%と予想されており、消費税率上昇分を引けば来年はマイナス圏に入ってしまう可能性もあります。  そうなると、黒田日銀総裁の「(インフレ率2%を達成するためには)なんでもする」という言葉に従うなら、さらなる金融緩和が必要になり、来年はその可能性が高いと考えていいと思います。  1月のドル円のレンジですが、1ドル=117円-122円というところでしょうか。ただし、問題はルーブル安、原油安の影響です。特に、ルーブル安は民間企業やヘッジファンドなどの経営破綻が原因でデフォルト(債務不履行)を起こす可能性もあります。当然ながら、金融マーケットにも影響が出てくことになり、ボラティリティの大きな相場になる可能性があります。 ――ギリシャの総選挙など、ユーロの動きが不安定ですが……?  1月22日に行われるECB理事会で、金利引き下げが実施されると予想されていますが、それ以外にも国債買い入れなどの追加の金融緩和策が発表される可能性も高いと思います。金利引き下げ、金融緩和が予想されている状況では、どうしてもユーロは売られる傾向が強くなります。  さらに、財政緊縮化を推進する現政権に逆風が吹いているギリシャでは、最悪の場合、現政権が倒れる危険性もあります。このまま総選挙まで行って財政緊縮反対派が勝利するようなことになると、またまたユーロ危機が表面化する可能性があります。実際に、ギリシャ国債の金利は上昇し、国債の保険料ともいえるCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)なども高止まりしています。  加えて、ドイツの景気が悪化し、フランス国債の格付けが引き下げられるなど、為替に影響は出ていないものの、じわじわとユーロ売りの圧力が増しています。それらを考えると、1月のユーロドル相場は1ユーロ=1.20ドル-1.25ドル。ユーロ円は1ユーロ=144円-150円というところでしょうか。1.20ドルの大台を守れるかがポイントになります。 ――資源価格の下落で「豪ドル」にはどんな影響がありますか?  原油安の大幅下落で、鉄鋼などの資源価格も下落していますが、オーストラリア経済にも影響が出ています。当初、予想されていた利上げは今やほとんど可能性がなくなり、逆に利下げ観測が出ています。  さらに、豪ドル相場に大きな影響を与える中国経済も、成長率が鈍化するのではないかという予測まで出ている状況で、なかなか豪ドル高とはいきそうもありません。そう考えると、豪ドル円相場の1月レンジは、1豪ドル=95円-99円というところでしょうか。原油安の推移に注目しておきたいところです。 ――FXは、元旦を除いて取引が行われますが、注意点は?  日本は年末年始で株式市場などもクローズになりますが、その間でもFXは取引が行われます。取引参加者が少ないマーケットでは、どうしても変動幅が大きくなりますから注意が必要です。特に、年初は円高傾向になることが多く、突発的な円高には注意したいものです。  日銀による異次元の金融緩和が推進役となって、2014年は一気に円安が進みました。言い換えると、分かりやすい相場だったと言えます。その反動で、一転して2015年は難しいマーケットになる可能性があります。新年以降も「円安株高」のトレンドは続くでしょうが、ある程度余裕をもって取引することをお勧めします。(取材・文責:サーチナ・メディア編集部)。
安倍第3次内閣も発作し、いよいよアベノミクスの真価が問われる2015年を迎える。その最初の1月、いったいどんな相場になるのか。外為オンライン・シニアアナリストの佐藤正和氏に、新年1月相場の行方を伺った。(写真は外為オンラインの佐藤正和氏、写真撮影サーチナ)
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2014-12-29 10:00