【投資戦略2015】内需株主導で2万1000円めざす=SBI証券・藤本氏

 SBI証券の投資調査部シニアマーケットアナリスト、藤本誠之氏(写真)は2015年の日本株式市場について、「夏ごろに日経平均株価で2万1000円をめざす相場になるだろう」と見通している。株価を押し上げる要因は、企業業績の好調さで、2020年の東京オリンピック開催に向けた投資や、地方創生に関する道路補修、災害対策などの土木工事などが活発に実施され、内需関連株が相場をけん引するとみている。また、「2015年は投資をすることの必要性に、多くの方々が気付く一年になりそうだ」と語った。 ――年末は、原油価格の下落を材料に資源国経済への懸念が台頭し、株式市場が動揺する場面もあったが、2015年の年初の株式市場の見通しは?  2014年の年末は、原油価格の下落によって資源国に対する信用不安が台頭し、金融市場全般にリスクオフの動きになった。しかし、原油価格の下落は、世界経済にとってプラスの効果が大きい。特に先進国にはプラスに働くので、早晩、市場は落ち着きを取り戻すだろう。  もちろん、ロシアルーブルの急落によるロシア危機や、ベネズエラやウクライナの経済危機などが表面化するようなことになれば、リスクオフとなって、市場が一段と冷え込むことはあるだろう。ただ、それが世界経済そのものに大きな打撃を与えるものではないという冷静な判断が、徐々に優位になってこよう。特に、日本は資源関連の企業が少ないので、市場の立ち直りは比較的早いと思っている。  また、リスクオフになると進む円高だが、例えば、ドル/円の決定要因である日米の金利差は、日本が金融緩和策を継続し、米国が金利の引き上げを考えるステージにあることから、金利差は拡大する方向にある。このため、基本的に円安圧力がかかっていることは変わらない。一時的な円高によって、円の下落スピードがやわらぐことは、むしろ日本経済にとってプラスの効果があるという評価もできるだろう。  今回の原油安による調整は、全体としてはプラスに考えられるということを、冷静に考えたい。 ――2015年の日本株の見通しは?  企業業績を考えると、2014年の4-6月、そして、7-9月はGDPがマイナス成長となってリセッションといわれたが、これは消費増税による駆け込み需要の反動が出た結果であり、2015年4-6月以降は、発射台が低いだけに、プラス方向への変化率は、大きくなると考えられる。反対に15年1-3月は、駆け込み需要が剥げ落ちるので、悪い数字が出ることは目に見えている。  したがって、15年3月期の企業業績が発表される5月後半から6月にかけて、16年3月期の業績を展望し始めるタイミングで、株価は企業業績を確認しながら、徐々に好調になっていくだろう。  日経225のEPSは、年末時点で1100円程度だが、14年度内に1150円になり、15年度は1250円程度まで拡大するとみている。PER16倍で2万円。17倍までオーバーシュートすれば2万1250円だ。これが、2015年の夏ごろにつける高値だとみている。その後、秋には一度調整が入り、年末に向かって再び上昇するというのが、大きな流れだと思う。 ――2015年に注目されるセクターや投資テーマは?  物色されるのは、2014年に活躍した自動車をはじめとした輸出関連株ではなく、内需関連株にシフトすると思う。引き続き自動車などの業績は堅調だと思うが、14年にかなり買い上げられたので、ここから一段高は厳しいだろう。変化率を考えると、内需関連株に魅力がある。  2020年の東京オリンピック開催を目指した投資が動き出すタイミングだ。また、2015年は、12年に一度やって来る統一地方選と、自民党の総裁選が両方とも実施される年になる。14年末の衆院選で、衆院の議席は、固まっているが、総裁選の投票権がある地方議員の選出はこれからだ。安倍総裁の続投を盤石なものとするために、地方への投資が活発化する可能性がある。地方再生、地方創生などの予算は手厚くなるのではないか。  具体的には、カジノ関連、建設土木、そして、不動産などのセクターが面白い。  ただ、カジノは人気化したところが、売り場になると思う。計画が具体化するほどに、その経済効果も明らかになってくるので、夢で買われたところが、現実で売るという局面を迎えそうだ。  一方で、道路の補修や、水害に苦しんだ地方での防災対策などは、息の長いテーマになるだろう。そして、不動産は相続税の引き上げに伴って、賃貸マンションなどの需要が拡大する見通しだ。賃貸物件に強いところが人気になると考えている。  さらに、これまでの日本の技術力を評価するという動きに加えて、日本のサービス力を見直すという動きが出始めていることにも注目したい。日本のサービス品質は、食の安全、犯罪の少なさなど、世界が注目する高いレベルにある。この点を評価する外国人投資家は少なくないので、日本のモノづくり以外の部分にも脚光が当たる可能性もある。  ただ、これからの日本経済を考えると、格差は一段と広がることは避けえないと思う。アベノミクスの批判で、儲かっているのは、大企業と投資家だけだということが言われるが、これは現実として、これからも変わらないと思う。今後、もう一段の消費増税が実施されれば、いわゆる庶民の生活は、一層苦しくなっていくだろう。ここは、投資家になることを考えるところではないだろうか。投資家には誰でもなれる。株式に直接投資することには抵抗があるのであれば、投資信託なら1万円から始められる。厳しい生活を支えるために、一生懸命に働くということに加えて、資産にも働いてもらうことを考えたい。  例えば、日経平均株価は8000円台から2年で1万7000円台に2倍になった。預金ではあり得ないほどに増えていて、その恩恵を感じている人は少なくない。株価は上がったが、現在の株式の益利回りは6-7%で、10年国債の利回り0.4%と比較して、まだまだ魅力のある水準だ。  まして、現在進んでいる円安では、円預金がもっとも弱い資産になっている。これまでのデフレでは、キャッシュ・イズ・キングで、預金は賢い選択と言えたが、時代は大きく動いた。そのことを考えさせられる一年になると思う。(取材・編集担当:徳永浩)
SBI証券の投資調査部シニアマーケットアナリスト、藤本誠之氏(写真)は2015年の日本株式市場について、「夏ごろに日経平均株価で2万1000円をめざす相場になるだろう」と見通している。また、「2015年は投資をすることの必要性に、多くの方々が気付く一年になりそうだ」と語った。
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2014-12-29 11:00