【投資戦略2015】2万円めざす日本株に国内要因での死角なし=大和証券・細井氏

大和証券投資戦略部情報課 シニアストラテジストの細井秀司氏(写真)は、2015年の日本株式市場について「夏から秋にかけて日経平均株価で2万円をめざすような上昇場面が期待できる。海外市場の変調によるリスクオフの円高などで、一時的な調整はありえるだろうが、企業業績の伸展を下支えとして堅調な相場が続くだろう」と見通している。
――2014年12月はロシアルーブルの急落などで一時的に値下がりする場面も経験したが、2015年の日本株式市場の展望は?
14年12月に市場が動揺したのは、原油価格の下落をきっかけとしたロシアルーブルの急落など、資源国の経済不安が要因だったが、12月の米FOMCでFRBが世界経済全般への気配りの姿勢を見せたことで、金融市場は落ち着きを取り戻した。FRBは米国の雇用と物価に責任を持っているので、世界経済全般についての舵取りを期待することはできないが、やはり原油価格の行方については、米国経済への影響があるため、原油価格の下落によるデフレプレッシャーに対する警戒の姿勢は、取らざるを得なかったのだろう。
15年の世界の経済環境を展望すると、中国は一段と減速する方向にある。14年の経済成長率が7.5%目標だったものが、15年は7.0%程度の成長を目標に置く見通し。減速しても7%程度の高い成長率なのだが、これまでとの比較では緩やかな成長にとどまる見通し。
米国は、量的緩和からの出口を探す局面として、経済成長率は上がる方向。日本は、CPI(消費者物価指数)を引上げるための金融緩和策が継続される見通しで、14年と同様に緩やかな経済成長が続くだろう。一方、新興国についてはバラバラだ。ロシアルーブルの急落にみられたように、原油価格の下落は産油国経済にとってはマイナスに響くが、反対に原油を輸入している多くの国々にとっては貿易赤字の縮小につながるプラス要因になる。原油安をきっかけとした株価下落が一時的なショックにとどまったのも、原油安が世界経済にとってマイナスばかりではないことを冷静に見たためだろう。
このように考えていくと、15年の日本株は、高い状態からスタートすると考える。例年1月には小型株中心に値上がりする傾向が強い。そして、年度末に利食い売りやポジション整理の動きで安い場面があるだろうが、夏から秋にかけて日経平均2万円をめざすような上昇場面が想定できる。
現在のドル高の動きは継続する見通しで、これによって輸出企業中心に企業のEPS(1株当たり純利益)を押し上げる効果が期待できる。今年度は最高益の更新には届かない見通しだが、現行為替レートを考慮すれば、来期は15%程度の増益が期待される。単純に現在の株価と同等のPER(株価収益率)で計算すると、1万8000円~1万8500円の15%増しで2万700円~2万1275円になる。この水準の高値が狙える状況にあると考えている。
――懸念材料になるような株価を押し下げる要素は?
リスクオフによる円高が市場のショックになるようなことはあり得る。テロなどの突発的な事件による金融市場の混乱、社会不安の増大などは、ちょうど14年12月のロシアルーブルの下落に伴う市場波乱のように、一時的な投げ売りをもたらすという懸念はある。
たとえば、原油価格については一段と下落する可能性がある。現在の原油安には米国シェールガスの開発を頓挫させるという思惑もあるようで、中東産油国の間では、WTIで40ドルの水準でも十分に採算が取れるという発言も聞こえてくる。また、価格の下落は需要の喚起にもつながるので、14年6月の107ドルが半年足らずで54ドルまで半値になるというような急激な下落スピードは緩むだろう。
今回の原油下落はスピードが速いために、たとえば、ECB(欧州中銀)が12月にも実施しようとしていた金融の一段の緩和策を1月に先送りするなど、金融政策の発動を抑える効果があった。そのスピードが緩んでくると、混乱が広がる恐れが小さくなる。
ただ、これらの懸念材料は、全て海外に震源地がある。日本の国内要因だけを考えると、15年の日本株相場には死角がない。増税は先送りされ、政府主導の成長戦略にまい進する一方だ。日本は金融緩和策によって市場に資金を供給し、円安傾向と原油安が続くことで、企業業績は上振れし、賃金の上昇や雇用の拡大、そして、個人消費の拡大につながる好循環が回り始めようとしている。
日本の状況だけを考えると、日米の株価の上昇率は、2015年は日本が米国を上回ることも期待できる。2014年は米国株価のパフォーマンスが好調だったが、これは米国の量的緩和によるFRBの資産拡大との相関が強かった。米国にリスクマネーが供給され続けたことによって、米国の株価が押し上げられ、米国ダウ工業株の値動きと、FRBの資産拡大の動きはリンクしていた。米国は14年秋に量的緩和をストップしたので、これからは、米国企業との連動性を強くするだろう。米国の企業のEPS成長率は1ケタ台の後半なので、米国株の上昇メドも10%前後の値上がりに留まるとみる。一方、日本株は、米国株と比較して依然としてPERは低く、金融緩和政策が継続していること、さらに、日本企業の成長率が高いことを考えると、米国株を上回る株価パフォーマンスになっても不思議ではない。
――そのような見通しの中で、15年に注目される投資テーマは?
大きな流れになりそうなのは、「水素関連」。自動車メーカーが本気で取り組んでいる他、石油精製会社も本腰を入れる動きになっている。“水素自動車(FCV:燃料電池自動車)”は、これまでのハイブリッド車が、カソリンとの併用だったこととは、まるで異なる社会インフラが必要。そこに、ガソリンの元売企業も含めた動きが本格化している。先行するトヨタ自動車は、FCVの年産700台体制を整えているが早晩、生産体制を3倍増に引上げる計画であり、日本のみならず、欧州や米国での展開も話題になってくるだろう。
また、「観光立国」という国策も脚光を浴びそうだ。円安の進行によって、海外から日本国内への旅行者がどんどん増えている状況だ。航空会社、鉄道会社、宿泊施設、小売業など関連する業種が広いのが特徴だが、これまでは、成田-東京-富士山-京都などの限られた“黄金ルート”が定番として利用されていたものが、他の地方都市へと波及していく効果が期待される。既に、羽田や成田の航空機の発着能力増強は限界といわれ、地方空港の整備も本格化していくだろう。このような、地方経済の振興につながる施策は、アベノミクスが推し進める地方創生にもかなっており、政策的な後押しも期待できる。
そして、「ロボット」、「iPSの再生医療を中核においたバイオ関連」、さらに、3月には北陸新幹線の開通があり、2020年の東京オリンピックに向けた都市開発も折に触れて刺激材料になるだろう。
一方、視点を変えると企業のROEを重視した経営姿勢は一段と高まることになろう。2014年には「JPX日経400」という新しい株価指数が注目されたが、加えて、ISS(Institutional Shareholder Services Inc.)という国際団体が、過去5年平均でROEが5%に達していない企業には、株主総会の原案に株主として反対の立場をとるという意思を表明している。このような動きに対して企業は、15年3月末の決算に向けて何らかの対策を取ってくる可能性がある。この対応策は15年に限ったことではないが、個別企業の経営戦略として徐々に強く意識されるようになるだろう。(取材・編集担当:徳永浩)
大和証券投資戦略部情報課 シニアストラテジストの細井秀司氏(写真)は、2015年の日本株式市場について「夏から秋にかけて日経平均株価で2万円をめざすような上昇場面が期待できる。海外市場の変調によるリスクオフの円高などで、一時的な調整はありえるだろうが、企業業績の伸展を下支えとして堅調な相場が続くだろう」と見通している。
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2014-12-29 13:15