【投資戦略2015】年前半に1万9500円を試すも春以降はFOMCにらみ=楽天証券・土信田氏

楽天証券経済研究所シニアマーケットアナリストの土信田雅之氏(写真)は、2014年の相場を年金改革や日銀緩和といった需給が相場を支えた「官製相場」だと評した。足元では東証1部の時価総額と名目GDP(国内総生産)の比率(バフェット指標)は100%に達しており、バブルに近い水準とされる。バブルによるさらなる上昇も想定されるが、上昇を継続させるにはGDPを引き上げていく必要があるとし、2015年は「3本の矢」と呼ばれる成長戦略をいかに進めていけるかがカギになるとの見方を示した。
――2014年はどんな相場だったか?
「つなぎの相場」だったのではないか。2013年の急伸は、アベノミクスへの期待による「日本買い」で、マクロが中心の相場だったが、今年は年初で急落し、消費税率引き上げの影響を見極めようと長い時間をかけて調整。年末にかけて持ち直しているものの、GDPは4-6月期が前期比年率7.3%減、7-9月期が同1.6%減と2四半期連続でマイナス成長と、実体経済がそれほど回復しているとも思えない。その中でも稼げる企業を見つけようとしたミクロが主体の相場だった。
――2014年末の動きで今後の相場に影響を与えそうな出来事はあったか?
12月14日の衆議院選挙と原油安だろう。衆院選で与党が過半数を制したことで、「アベノミクス」を継続していく基盤は出来上がった。今後は成長戦略が進展するか否かで相場も強い反応を示すとみられる。アベノミクスの進展を受けた株式市場の上昇がメインシナリオではあるが、その一方で、来年は地方統一選挙に自民党の総裁選を控えているなど、安倍政権にとって支持率に影響するだろうイベントが多い。
早いところでは賛否が分かれている原発の再稼働。春にも川内原発が再稼働する見通しだ。また、戦後70周年を迎えて発表される見通しの談話も注目だ。中国や韓国との関係が改善に向かうのかそれとも悪化するのかも支持率に響くだろう。こうしたイベントを通過し、総裁選を無事に乗り切れればよいが、そうでなければアベノミクスの進展にも支障をきたすことになる。
一方の原油安は下げ止まるとみるが、急な回復は想定していない。コモディティでいえば金価格も1600ドル台だったものが1200ドル台で推移しており、底打ちしたあとも横ばいとなっている。原油価格も同様の動きをたどるだろう。商品はほぼ同じタイミングで動くものだが、今年の原油については、ウクライナの問題や「イスラム国」の問題で原油が下げにくかった分が今になって下げているだけだ。逆を言えば、地政学的リスクの高まりで原油価格が急反発という展開も想定しておく必要がある。
――2015年はどのような流れを想定しているか?
年初は堅調な推移を見込む。引き続き円安を材料に輸出関連企業の業績期待中心の相場になると考えている。4月からの注目は米国のFOMC(米連邦公開市場委員会)に移るだろう。
今年12月のFOMC後の会見でイエレンFRB(米連邦準備理事会)は、今後2回の会合では利上げをしないとの方針を明らかにした。つまり最短で来年4月28-29日のFOMCで利上げということになる。原油価格の停滞に利上げ観測が加わり、米国に資金が集まりやすい環境が整っていく。特に新興国からの資金流出が警戒され、リスクオフのムードが広がり、日本の株式市場も調整を迎える可能性がある。
――調整はいつまで続くのか?
「アベノミクス」の進展具合によるだろう。総裁選のあとも調整が続くのか、それとも戻りを試すのかというところだ。アベノミクスでは規制緩和、構造改革、地方創生などがテーマで、やろうとしていることはそろっているのだが、現状で進展しているものは少ない。
TPPでも、農協改革でも、医療改革でも、何か一つ大きな案件をやり遂げられれば安倍政権への高い評価につながり、市場も好感するだろう。TPPなどは話題性も高く、成果を上げられれば安倍政権にとって追い風になり、相場にとっても好材料だ。ただ、これらが目に見えて進まないようだと期待外れという評価を受けることになり、日本株を買う大きな材料がひとつ減ることになる。
――日経平均株価の上値と下値は?
上値は1万9500円だ。時期はFRBの動きをにらみながらで、3-5月ごろとみている。下値は1万5300円で、夏以降を想定している。
安倍政権に対する評価と中国など新興国の景気に対する不透明感が重しになるだろう。ただ、企業業績がしっかりしていれば、再び戻りを試すことになる。年末にかけては1万7000円台まで回復できるとみている。2万円台を回復するにはもう少し時間が必要ではないだろうか。仮に2万円台を回復するとした場合、NYダウもそれ以上の上昇をみせると考えるのが妥当で、今のところ米国株も急伸するだけの材料が乏しい。
――日本株を支えている円安はどの水準まで進むのか
為替に関してはどこまで円安が進むと当局が警戒してくるかがポイントだ。企業にとっても、原材料価格と為替水準とでは、為替のほうが為替予約等で対処しやすい。そのため、原油安を最大限享受できる環境を整えることが重要だ。円安が進みすぎれば原油安メリットも相殺されてしまう。円安対策についても内閣の支持率を左右する材料になるだろう。
――来年の注目しておきたいセクターや業種は?
ROE(自己資本利益率)銘柄は引き続き注目だ。JPX日経400の先物も始まり、ROEに着目する投資家も多い。TOPIXとのパフォーマンスを比較してもJPX400が見劣りしていないというところも背景にあると思う。ここ数年でROEが改善している企業は投資対象として関心を集めそうだ。
このほかでは建設がよいだろう。人材などのコスト面が懸念されてきたが、ひと段落したところでもある。今後は東京五輪やリニア新幹線など需要も多い。
また、訪日外国人関連銘柄も注目だ。観光や小売りのほか、時計やカメラ、家電なども売れているため、一部の精密機器や化粧品関連と裾野が広い。米国の好景気に支えられて自動車関連も引き続き好調が予想される。特に自動車業界でも部品メーカーは投資対象となる銘柄数が多いだけでなく、国内初のジェット飛行機や欧米の航空会社で素材が採用されるなど、需要は自動車の分野にとどまらないため、材料も豊富だ。(取材・編集担当:宮川子平)
楽天証券経済研究所シニアマーケットアナリストの土信田雅之氏(写真)は、2014年の相場を年金改革や日銀緩和といった需給が相場を支えた「官製相場」だと評した。2015年は「3本の矢」と呼ばれる成長戦略をいかに進めていけるかがカギになるとの見方を示した。
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2014-12-29 15:00