【投資戦略2015】年内2度の金融緩和で2万2000円へ=マネックス証券・広木氏

マネックス証券のチーフ・ストラテジスト広木隆氏(写真)は、「15年は日経平均株価が2万円を突破し、年末には2万2000円をめざす力強い相場になるだろう」と見通す。その背景にあるのは、日銀による金融緩和が4月、10月の2回実施されることという。「16年の参院選前には“デフレ脱却”を宣言したいであろう政府の意向から逆算すると、あらゆる手だてが実行される1年になる」と語っている。
――2015年の日本株の展望は?
日経平均株価は年初1万8000円でスタートし、4月には2万円に進むと考える。その後、夏に1万8000円程度にまで下げ、10月に再び2万円を回復し、年末には2万2000円程度に達すると考えている。
この考えの背景になっているのは、参院選の前には “デフレ脱却宣言”を宣言したい政府の意向が見られる。その主な理由として、参院選で安部首相は是が非でも2/3の議席をとりたいと考えているのではないかとの背景がある。そのためには、インフレ率を高め、「アベノミクスを成功」させ、デフレ脱却宣言という旗を立てることが必要になるため、なりふり構わずあらゆる政策が打ち出される1年になると考えるためだ。具体的にインフレに対して即効性のある政策は、日銀による金融緩和の拡大であり、4月に1回、10月にもう1回の金融緩和を発表することになるとみている。参院選から逆算して考えると、そのようにならざるを得ない。
14年12月に行われた衆議院選挙で与党が圧勝し、第三次安倍内閣が成立したところだが、開票結果で明らかなように、自民党にとっては解散前議席を減らしていて手放しで喜べるような結果ではなかった。有権者は現在までの政策運営に対してシビアに見ていると思う。12年12月に始まったアベノミクスが14年12月で2年を経過した。2年間で成果を求めるのは厳しいだろうから、さらに政権を任せて、アベノミクスの遂行を見守ろうという判断が選挙結果に現れたのだと思う。
このような結果については、政権側もしっかり受け止めているはずであり、16年夏の参議院選挙こそが、本当の意味で「アベノミクスの成果」が問われる選挙になると考えているだろう。そうであれば、16年3月の段階で「安定的に2%台のインフレ率」といえるような状態に持っていく必要がある。
ところが、足元の状況は、原油安によるデフレプレッシャーがかかっている。今でこそ、実質1%程度のインフレになっているが、手をこまねいていては原油安による物価押し下げ効果が顕在化し、インフレ率0%という事態になりかねない。「このままほっておくわけにはいかない」という日銀の判断によって4月には一段の金融緩和策を発動することになる。日銀は「15年度を中心として2%の物価上昇」といっているので、15年度に物価が下落していくのを座視できないだろう。そして、インフレ率2%の目標を現実化するため、秋にもう一段の金融緩和を打ち出して、「デフレマインドの脱却」を図るだろう。これが、年後半に2万円を超えて、年末に向かって株価が一段高へ進むと考える背景だ。
――いわゆる「黒田バズーカ」といわれる金融緩和を年に2回も行えば、為替市場で急速な円安が進んで日本経済が混乱することにつながるのでは?
15年の金融緩和策は、これまでの緩和とは質的に異なる緩和策をとらざるを得ないと思う。実際に現在の緩和策によって日銀は日本国債を市場から大量に買い上げ、国債市場は日銀の一手買い。10年国債利回りは過去最低を更新し続け、ついに0.3%に達している。
ところが、日銀が国債を購入しても、その資金は金融機関に移り、そして、金融機関は日銀の当座預金に資金を積み増していくばかりというのが実態である。このため、マネタリーベース(日銀が供給する通貨)はどんどん積み上がっているのだが、肝心の市場には資金が回っていかない。本来であれば、金融機関は国債を売却して得た資金を企業向けの貸出しなどに回せば、日銀が意図しているマネーストック(世の中に出回っている通貨の総量)の増大に結びつくのだが、現実は、そのようになっていない。
日銀の金融緩和手段は、質的な大転換を行うタイミングにきている。新たな手段として考えられるのは、ETFの大量購入だ。14年の後半の株高は、日銀がETFを1兆円買っていたものを3兆円に引き上げたことによって支えられた。これが、5兆円、あるいは、7兆円に引き上げられることになれば、株式市場に与えるインパクトは大きい。
もともと日銀は、今回の金融緩和策を「量的・質的金融緩和(QQE)」と言っていた。国債を年間80兆円の国債を買い上げるという量的緩和策を実施しているが、結果としてマネーストックが増大しないのであるから、質的な変化を遂げ、国債の買いを止めてETFに軸足を移すべきだと思う。そして、日銀がETFを購入するということは、国債購入とは違って1石何鳥ものメリットがある。
たとえば、ETFの購入を開始することによって、国債の購入資金が日銀の当座預金に積み上がるという事態を避け、直接、マネーストックが増大することにつながる。
さらに、JPX日経400のETFを買っていくようにすれば、企業経営者のROE経営への姿勢を一段と高めさせる効果がある。14年にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が日本株への投資比率を高め、JPX日経400への投資姿勢を見せただけで、経営者の間にはROEへの関心が一段と高まった。ここに加えて日銀までもJPX日経400を買うというアナウンスがあれば、ROEを高めるために自社株買いや増配を検討するという企業の動きを後押しするだろう。企業にはデフレ時代に溜め込んだ手元資金が300兆円ほどもあり、これを吐き出させる効果が期待される。これはマネーストックを一段と拡大させる要因にもなる。
しかも、ETFを買い上げることによって、市場が金融緩和で加熱した時の“冷やし玉”を手に入れることにもつながる。中央銀行によるETFの購入は、「出口戦略」に問題があると指摘する向きもあるが、金融緩和策によって恐れるべきは、コントロールの効かない資産バブルの発生であり、それを鎮静化させる手段としてETFを日銀が保有しているメリットは小さくない。
加えて、国債の場合は年間80兆円という規模だったが、ETFであれば5兆円や7兆円という規模でも十分にインパクトがある。2013年の日本株について外国人投資家が15兆円買い越したことで株価が50%も値上がりした。日銀がETFを10兆円買うとしても、国債購入の80兆円に比べれば大幅に規模が小さい。したがって、為替市場に対するインパクトも14年の金融緩和ほどには大きくないものになるだろう。
――そのような全体感の中で、活躍が期待されるセクターは?
基本的には、15年は世界景気が拡大する方向にあると考えるので、グローバル景気敏感株といわれる日本株は、全般に好調だと考える。
その中で、株価のパフォーマンスが良くなるであろうという視点では、「不動産」が本命だと思う。14年はアンダーパフォームになったが、デフレ脱却に全力で取り組むという政策の追い風をもっとも受けやすい。そして、国債の買い上げによる異常な低金利が是正され金利上昇の芽が出てくるようであれば「銀行」にも妙味が増す。
また、消費増税の先送り、そして、15年は実質賃金がプラスになってきそうなことを背景に「小売り」も見直されよう。小売りセクターには、円安による訪日外国人の増加という業績押し上げ要因もある。訪日外国人を増やすことは国の政策にも一致しているので息の長いテーマになりそうだ。(取材・編集担当:徳永浩)
マネックス証券のチーフ・ストラテジスト広木隆氏(写真)は、「15年は日経平均株価が2万円を突破し、年末には2万2000円をめざす力強い相場になるだろう」と見通す。その背景にあるのは、日銀による金融緩和が4月、10月の2回実施されることという。
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2014-12-30 08:45