【投資戦略2015】「3つのR」で日経平均2万円=みずほ証券・倉持氏

みずほ証券投資情報部長の倉持靖彦氏(写真)は2015年を年央高とみている。その要因として「3つのR」をあげた。12月の衆院選挙で与党が勝利したことによるアベノミクス相場の「Restart(リスタート)」、消費税率引き上げの影響で落ち込んだ景気と企業業績の「Recovery(リカバリー)」、3つ目として株式市場にとって注目テーマのひとつ「ROE革命」。これらが上期の日本市場を支えるポイントになるという。
――上期の基本的な相場の流れと日経平均株価の上値はどの程度か
2015年の年前半は堅調展開を予想、日経平均株価は4-6月ごろにも2万円に到達するだろう。TOPIXのEPSを16年3月期で96.8円と想定し、通常は近年の平均であるPER15倍で計算するが、自民党勝利による政策への期待やタイトな株式需給などを勘案し、当面についてはPERを16倍とした。ややプレミアムを乗せてTOPIXはおよそ1650ポイントが上値。NT倍率は12.3倍としている。
まず年初だが、2月前半ごろに2014年度補正予算の可決が見込まれるほか、年度明けの4月には15年度本予算が成立するとみられ、経済政策が材料になる。これが1つ目のRの「リスタート」だ。今年の1-3月は消費税率が8%に引き上げられる前の駆け込み需要が発生しており、来年のはじめはこの反動が懸念されるものの、4月になると逆に前年同期よりも好調な数字が多くなると予想され、上期全体としては企業業績や景気の回復期待が株価を支えるだろう。消費税率の再引き上げを延期したことから景気対策の必要性も高まっている。人手不足の影響もくすぶるため、公共投資よりは家計向けや地方向けといったものが出てくるのではないだろうか。また、「第3の矢」である規制改革等をどれだけ進展させられるかもポイントだ。期待は決して大きくないが、相場の一定の支えになると思う。
2つ目のRである「リカバリー」は企業業績の回復期待だ。足元で設備投資は底堅く、加えて在庫調整が進展しつつあり、生産の上向きが予想される。輸出についても海外の景気は徐々に回復しているうえ、円安の効果もあって持ち直しが期待されよう。円安が進めば来期の企業業績上ブレ期待も高まってくる。景気対策の効果があれば消費の回復も期待されるだろう。
3つ目が「ROE革命」だ。成長戦略は解散・総選挙となったことから、岩盤規制改革など積み残し案件が散見されるが、進展がみられているものの一つにコーポレートガバナンスの強化がある。運用サイドでは2月には「日本版スチュワードシップ・コード」の導入が始まり、企業側にはコーポレートガバナンス・コードの基本的な考え方が12月に制定された。また、11月には米国の議決権行使助言大手のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)が過去5年間の自己資本比率(ROE)の平均が5%を下回り、改善傾向がみられない企業の経営トップの再任案に反対するよう、株主に助言する方針を明らかにしている。こうした流れから来年6月に集中する株主総会を控えて高いROEを標ぼうしたり、それに基づいて自社株買いを積極的に実施したりするような企業が増える可能性がある。
外国人投資家は日本企業の潜在的な力を認めているが、ROEの改善に努めることで、株価が円安で上昇しているのではなく、企業の収益力が評価されて上昇していく流れが築いていける。また、GPIFや日銀により株式需給が好転するなかで自社株買いが増えれば株式需給がさらに好転することになる。
加えてJPX日経インデックス400も注目される。毎年6月末を選定基準日にし、8月第5営業日に銘柄の入れ替えが発表されることから、来年の上期に自社株買い期待が高まるだろう。
――下期に調整する要因と下値はどの程度をみているか?
年央以降は調整する見通しだ。一つの要因としてはやはり米国の金融引き締めだ。また、成長戦略についても、今年も同様だったが年央までにはいったん出尽くしになる可能性があるとみている。ただ、過去にみられたような株価が半値になるような調整は見込んでいない。この理由としては、日本株のバリュエーション調整が進み割高感がないことや円高阻止に対する政府・日銀の強いコミットメントがあること、株主を意識した経営にシフトしてきていることなどが指摘できよう。日経平均でいえば1万6000円程度まで下押す可能性はあるが、長期上昇相場の中の踊り場といった位置づけ。年末までには戻り歩調となり、再度1万9000円台に乗せてきそうだ。
――足元で急速な動きをみせている為替だが、来年のドル・円はどう見るか?
基本的にはドル高の方向だ。ドル・円は年後半に125-130円のレンジに入っていくだろう。来年の米国は年央以降の利上げが考えられる一方、日本は原油安の影響で消費者物価指数の伸びが鈍化する恐れがある。原油安は長い目で見ればプラス材料で物価を押し上げる要因にもなり得るが、短期的にインフレ期待が腰折れするようであれば日銀も追加の金融緩和を実施することもあり得る。欧州でも年前半にECBが社債や国債の買い入れが見込まれており、日米欧の金融政策に大きな違いが出てくることになる。ドルは円やユーロに対して強い展開が予想される。
――来年の注目セクターやテーマは?
年前半は円安・株高基調が続くと考えており、自動車、機械といった輸出関連銘柄だ。米国の景気が好調なため、米国の比率の高い企業が特に注目される。また、自動車でいえば、燃料電池車(FCV)や自動運転技術関連(自動車電装化)への関心も高まろう。機械では国内の設備投資が改善しているほか、海外も増勢にあるとみており、自動化・省力化関連銘柄は引き続き好調となりそうだ。
このほかでは食品セクターやサービスに注目している。食品セクターでは、すでに株主還元や経営改革を強化している企業もあるが、キャッシュリッチ企業のコーポレートガバナンス改革に期待している。また、グローバル展開などで収益向上につなげている企業も期待される。サービスは訪日外国人観光客の増加や労働市場の回復や改革が追い風になる。旅行代理店やレジャー、割安となったインターネット株などが含まれる。小売はニュートラルであるが、3月の春闘や4月から前年比の売上高回復が見込まれ、1、2月の下落局面は押し目買いが有効であろう。
テーマは先に何度か述べている「ROE」や「円安メリット」、「次世代自動車(燃料電池車・自動車電装化)」のほか、ロボット、国土強靭化(PFI等)、リニア中央新幹線、観光立国、地方創生、社会保障改革の恩恵を受ける可能性のあるジェネリック関連などがあげられる。(取材・編集担当:宮川子平)
みずほ証券投資情報部長の倉持靖彦氏(写真)は2015年を年央高とみている。その要因として「3つのR」をあげた。
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2014-12-30 09:00